追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第14話:避難者たちと“彼女”の再来

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 結界の外に立っていた数人の影は、傷だらけの旅人たちだった。

 獣に襲われた跡。兵による略奪。荒れ果てた服と、焦燥に満ちた目。
 その中でも、一歩前に出たのは——黒髪に旅装のフードを被った、落ち着いた雰囲気の女性だった。

「……ここは、ユリウス=グレイ様のおられる村でしょうか」

「お前は……?」

 ユリウスがその姿を見て、わずかに目を細めた。

 女はフードを下ろし、静かに頭を下げる。

「名はリリア=フェンリース。元・王立魔導院の記録官です」

「フェンリース……?」

 セラが驚いたように声を上げる。

「この村の名前と同じ……まさか、関係あるの?」

「ええ。私の祖先がこの村を拓いたと聞いています。……十年前、壊滅したと聞き、私はここに来る理由を失っていました」

 彼女の目には、複雑な色が浮かんでいた。
 どこかで、ここが自分の“終点”だと感じていたのかもしれない。

 ユリウスはしばらく黙っていたが、やがてうなずく。

「……この村は、今は“無法”の地だ。だが、生きる意志のある者なら拒みはしない」

「ありがとうございます」

 そう言ってリリアは再び頭を下げた。
 その後ろには、彼女に導かれてきた数名の避難者たち。老若男女。魔力を持たぬ者もいる。

「村に入れるかどうかは、結界が判断する」

 ユリウスは結界の術式を軽く触れ、門を開いた。
 リリアと避難者たちが、一歩、村に足を踏み入れる。
 瞬間、セラがピクリと反応した。

「魔力の……揺らぎ?」

 リリアの身体から、微かにだが“魔力の波”が広がった。
 だがそれは攻撃性ではなく、まるで……精霊の囁きのような穏やかさだった。

 ユリウスはその気配を感じ取り、低く呟く。

「……精霊適性。しかも、かなり高い」

 夜。
 避難者たちに食事と寝床が与えられ、村に再び火が灯った。

 セラは疲れた顔をしながらも、焚き火の横に座っていた。

「……人が増えたね」

「いいことだ。火が増えれば、冷える夜も温まる」

「でも……そのぶん、守るのも増える」

「そうだな」

 セラは空を見上げ、ぽつりと呟いた。

「……あたし、ちゃんと守れるようになるかな」

「なるさ。まだ時間はある。……いや、あるうちに“なれ”」

 ユリウスの言葉に、セラは小さく笑った。

「うん。あたし、もっと強くなる」

 一方その頃。
 村の外れ、夜風に吹かれるリリアは、月を見上げて静かに呟いた。

「——やはり、ここだったのですね。“予言の地”は」
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