追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第16話:帝国の血と古の魔導王

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 村の記録庫にて。
 ユリウスは、古びた魔導書を静かにめくっていた。

 そこに記されていたのは、帝国建国以前――「統一戦争」の時代の記録。
 その中に、明らかに異質な名前があった。

“グレイ=イグナス”
 ――“銀の魔王”と称された、初代魔導王の名。

「……この名……」

 ページを繰るごとに、ユリウスの目が鋭さを増していく。
 そこには、帝国の王家や貴族には伝えられていない、“始祖”の正体が記されていた。

【記録:魔導王グレイ=イグナス】

かつて、大陸を統一に導いた最強の魔導士。
人と精霊の契約を初めて果たし、その力で戦乱を終結させた。
しかし、契約の代償として“血”を魔に染め、自ら王位を退き、歴史の表舞台から姿を消す。

——その血を継ぐ者が、再び世界に現れるとき、精霊の門は再び開かれる

「グレイ……まさか、俺の“家名”と同じとはな」

 ユリウス=グレイ。
 帝国では庶民出身とされ、養子として貴族家に迎えられた存在。

 だが、彼の中に流れる“銀の魔力”は、生まれながらのものだった。

(ならば……俺は)

 ユリウスが手を止めたとき、背後からリリアがそっと声をかける。

「……気づいていたのですね。自分の力が、“ただの魔力”ではないと」

「昔から、誰よりも魔力が濃く、制御に困った。属性の偏りもなければ、消耗すら少ない。……だが、それは“祝福”ではなかった」

 ユリウスはページを閉じ、立ち上がる。

「精霊契約者の末裔……魔王の血筋……なるほどな。
 ならば、俺が帝国から追われるのも、当然の話だ」

「けれど、だからこそ——この村に来られたのです」

 リリアの言葉に、ユリウスは小さく笑った。

「皮肉な話だ。すべてを捨てて逃げた先が、過去と向き合う場所だったとはな」

 一方、帝都・軍本部。

「ラグナ=ベイル将軍、出発準備完了しました」

 将軍の鎧に刻まれた紋章は、かつて“魔王討伐”に使われた〈神滅の紋〉。

「よかろう。では、“処分”に行こうか。
 かつての王の血を継ぐ、化け物に会いに」

 夜、フェンリース村の上空を、遠雷が走った。
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