追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第20話:魔導将軍と、魔王の牙

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 結界の軋みは収まった。
 しかし、フェンリース村を包む空気は、明らかに変わっていた。

 黒き雷を放った男、ラグナ=ベイル。
 その存在だけで、村の空気は重く、緊張を孕んでいた。

「ようやく姿を見せたか、ユリウス=グレイ」

 前線に立ったラグナが、口角を吊り上げて笑う。

「さすが、“帝国が捨てた最強”。面白いもんを作り上げてるじゃねぇか。結界、罠、迎撃術式……完璧だよ。
 だが——俺は“壊す”側でな」

 その言葉と同時に、ラグナの背から黒い魔力が放たれる。
 獣のような角。浮かび上がる魔紋。
 彼の身体は半魔化し、その魔力は明らかに人の域を超えていた。

「混血……か。人と、魔族の」

 ユリウスが低く呟く。
 ラグナは愉快そうにうなずいた。

「そうだよ。“魔王の血”とやらを処分するには、これくらいじゃねぇと釣り合わねぇからな!」

 ユリウスはゆっくりと前へ出る。
 風が吹き、地を這うような魔力が彼の身体を包む。

 その姿は、かつて帝国で誰もが恐れ、憧れ、敬った“最強魔導士”そのもの。

「お前が壊す側なら、俺は——守る側だ」

「は?」

「この村を、ここに生きる者たちを。
 誰にも奪わせはしない。“魔王の末裔”としてでも、“一人の男”としてでも、だ」

 魔力が炸裂する。

 ラグナが一歩踏み出し、地面を砕きながら突進する。
 その拳に宿るは、“雷の拳”と“破壊の魔紋”。

「うおおおおおおッッ!!」

 迎え撃つは、ユリウスの展開する【重力結界】と【空間制圧陣】。
 ラグナの拳が空を裂く刹那、ユリウスの掌から放たれる一撃がぶつかる。

衝突。

 空間が歪み、衝撃波が周囲の木々を吹き飛ばす。
 結界の外側で応戦していた兵士たちすら、立っていられず倒れ込む。

「……っははっ、やべぇな……! オイ、やっぱりあんた、魔王の末裔どころか、“魔王そのもの”だろ!」

「違うな。俺は、俺だ。名も、立場も、血も関係ない。
 俺はここを、守る。それだけだ」

 ラグナが再び雷を纏う。
 ユリウスが術式を重ねる。
 次の一撃は、ただの威嚇では終わらない。

 魔導将軍と魔王の牙が、本気で激突する瞬間が迫っていた。
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