追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第22話:封印の記憶と精霊契約

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 古井戸から溢れ出した蒼白の光は、村全体を包み込み、まるで空間そのものを穏やかに浄化するようだった。

 ラグナでさえも、その力に気圧され、一歩だけ後退した。

「……これは、ただの結界じゃねぇ。……“何か”が目覚めやがったな」

 井戸の前に立ったリリアが、手をかざすと、古の術式が空中に浮かび上がる。
 彼女の精霊適性が、封印の鍵と反応し、そこに“記録”が呼び出された。

 光の中に、かつての風景が再生される。
 それは、千年前のこの地——精霊と人が共に暮らしていた時代の記憶。

 映像の中、白銀の髪の青年が、精霊たちに囲まれて立っていた。
 その胸元には、今のユリウスと同じ紋章。

「名を返そう。我が名は、グレイ=イグナス。
 汝らと契り、この地に“精霊の門”を残す」

「……やはり、先祖か……」

 ユリウスの声は低く震えていた。
 それは、過去との接続だった。血と魔力と、記憶を繋ぐ者としての覚醒。

 そのとき、井戸から溢れた光がユリウスの身体に触れる。
 その瞬間、意識が深淵に引き込まれた。

〈内なる空間〉

 そこには一人の“存在”がいた。
 全身を光と風に包まれた、曖昧な輪郭の女性。彼女は穏やかに語る。

「……ようやく目覚めたのですね、“契約者”」

「お前は……精霊?」

「はい。私は風の上位精霊。かつてあなたの祖先が契約した、記録と導きの守護者です」

「なぜ今になって……俺を選ぶ?」

「あなたは“捨てた”つもりだったのでしょう。力も、血も、過去も。
 けれど、それでも守ろうとした。だからこそ、“門”が応えたのです」

「……チャンスをくれる、というのか」

「いいえ、“あなたが開いた”のです」

 その言葉とともに、ユリウスの意識に精霊術の記憶が流れ込んでくる。
 風、水、火、土。四大精霊との“再契約”の鍵が彼の中で目覚め始める。

〈現実〉

 光が収まり、ユリウスの周囲の空気が一変した。

 その姿は変わらぬまま。
 だが、彼の背に浮かぶ精霊の紋が、四属性の輝きを放っていた。

 風が舞い、水が流れ、地が脈動し、火が灯る。

 それは——“魔導士”ではない。
 “精霊契約者”としての、本来の彼の姿だった。

「……さて、ラグナ=ベイル」

 ユリウスが静かに一歩を踏み出す。
 地が応じ、風が護り、魔力が集う。

「ここからは、俺の領域だ」
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