追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第23話:精霊の加護と、雷を討つ牙

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 風が歌い、水が踊り、地が脈打ち、火が揺れる。
 精霊たちの力が、ユリウスの身体を中心に調和し始めていた。

 それはかつて帝国では“神話”と呼ばれ、今や忘れ去られた“精霊契約者”の姿だった。

 対峙するラグナ=ベイルは、身を包む雷の鎧をさらに高めていた。

「……それが、あんたの本気ってわけか」

「そうだ。“受け継がされた力”じゃない。
 俺自身が選んだ力だ。精霊と契り、この地を護る者として——」

 ユリウスの指先が、風を裂く。
 瞬間、【風刃陣《テンペスト・エッジ》】が展開され、無数の風の刃が空を駆けた。

 ラグナは咆哮とともに、雷の拳を振り抜く。

「こいよ、魔王の末裔! この“雷”で消し飛ばしてやるッ!」

 雷と風が空中でぶつかり、爆ぜるように拡散する。
 視界を焼く閃光の中、ユリウスはなおも詠唱を続けていた。

「火と水、交わりて霧を生み……霧、風を纏いて嵐となれ——」

【融合精霊術《アトモス・ヴェイル》】起動。

 村の周囲に濃密な霧が広がり、それが風を巻き込み、瞬く間に“精霊の嵐”となってラグナに襲いかかる。

 ラグナはその力に驚愕していた。

「なんだこの術……っ! 雷が通らねぇ……!? 幻術じゃねぇ、精霊が空間を拒んでやがる……!」

 身体の感覚が鈍る。視界が揺れる。
 その隙を逃さず、ユリウスが突き出した掌から放たれたのは、圧縮された風の矢。

【精霊矢《エアリア・ランス》】

 その一撃は、ラグナの雷の盾を穿ち、肩口を貫いた。

「がッ……!」

 ラグナは膝をつき、血を吐く。
 だが、その顔に浮かんでいたのは、苦痛でも怒りでもなく——笑み。

「……やっぱ、あんた……本物だよ。あの帝国にゃ、もったいねぇ……」

「……なら、今すぐこの場を退け。
 お前を斃すことはたやすいが、それは俺の本意じゃない」

 ラグナはしばし黙し、立ち上がる。

「……命令には従うさ。でもな、次は命を賭けて戦うぜ、ユリウス=グレイ。
 その時は俺も、“枷”を外す」

 そう言い残し、ラグナは背を向けた。
 雷の衣が解け、帝国軍は撤退の準備を始める。

 戦は終わった。
 フェンリース村は、また一つ“守られた”。

 しかし、それは同時に帝国にとっての“宣戦布告”でもあった。
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