追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第36話:門の記憶と、始まりの巫女

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 朝焼けの中、リリアは静かに広場を歩いていた。
 周囲にはまだ人の気配もなく、鳥のさえずりだけが響いている。

 けれど、彼女の胸の内には――数百年前の記憶が、今も熱く残っていた。



〈記憶の中〉

 風と火と水と土が、まだ人と隣り合って生きていた時代。

 そこに一人の女性がいた。白い衣を纏い、長く金の髪を風に揺らすその姿は、まさに“巫女”。

 彼女は名乗った。
 「私の名は、リセリア=フェンリース」
 ――リリアの“遠き祖先”、そして初代の“門の巫女”。



 リセリアの役目は、精霊と人の間に在り続けること。
 争いを避け、均衡を保ち、世界の境界を維持する“調停者”。

 だが、ある時その均衡は破られた。
 人の欲、精霊の怒り、大地の崩壊。
 それを止めるために、彼女は“門”を閉じ、自己の記憶を封印した。

 それが今――リリアに引き継がれた。



〈現在〉

「……私は、ただの記録官ではなかった。
 私の中には、リセリアの意志と記憶……そして、“門を守る使命”が受け継がれていた」

 リリアは、ユリウスとセラ、カレンの前でそう語った。

「精霊の門は、“力を得る場所”じゃない。
 本来は、“崩壊と対話の分岐点”。……世界そのものの境界なのです」



 ユリウスが重く頷く。

「……だから帝国は、門を手に入れたがっているのか。“軍事的価値”ではなく、もっと根源的なものとして」

「ヴィエラがそれを完全に理解しているかは分かりません。
 けれど彼女は、“知りたがっている”のです。あらゆる代償を払ってでも」



 その頃――

 ヴィエラは自室で、リリアの反応記録を見ながら楽しそうに笑っていた。

「やっぱり……あなたの中には“鍵”がある。精霊も、門も、時代さえも繋ぐ“核心”が」

 その掌には、新たな術式が展開されていた。

 名を【原初共鳴式:エルン=コード】

 それは、“門そのものに触れるための術”。
 使えば、精霊の意思すら敵に回す可能性を秘めた、危険な式だった。

「さて……そろそろ、次の段階に進みましょう。リリア=フェンリース。あなたを、もっと深く見せてもらうわ」
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