追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第37話:門の力と、対話を拒む声

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 その夜。
 フェンリース村の空に、異様な“圧”が広がった。

 風が逆流し、空気が震える。
 精霊たちの気配がざわめき、まるで何かを“拒絶”するように警告を送っていた。



「何だこれは……精霊の流れが乱れている」
 ユリウスが真っ先に異常を察知し、術式を展開する。

 だが、その流れは“外部の干渉”ではなかった。
 内側から、門が揺れている。



 その中心にいたのは――

 ヴィエラ=クロイス。

 彼女は、村の中心にある古井戸――精霊の門の上で、ひとり術式を展開していた。

 光を放つ術陣。【原初共鳴式:エルン=コード】

「お願いだから怒らないで、精霊たち。私は“奪い”に来たんじゃない。
 “知りたい”だけなの。……あなたたちが何を恐れ、何を守っているのか」



 その声に、風の精霊が呻く。
 門の奥から、低く、重い“声”が響いた。

『問う。そなたは、世界の境界を壊す者か』

『問う。そなたは、対話を望む者か、支配を望む者か』



 そのとき、リリアが駆けつける。
 風と光が彼女の存在を察知し、即座に乱れを鎮める。

「やめて、ヴィエラさん……! 門は、そんな力でこじ開けるものじゃない!」

「……けれど、あなたの中の“記憶”が反応している。
 見せてよリリア。あなたの中にいる“始まりの巫女”は、世界をどう見ていたの?」



 リリアは胸元に手を当て、深く息を吸う。

 目を閉じ、門と“対話”する。

(お願い……私の声を、聞いて。私は、ただ“理解したい”。でも、それは“壊す”ためじゃない)


 沈黙が流れる。

 そして、風が静かに流れた。

『……よかろう。今一度、対話の席を設けよう。
 だが、門は一度開けば二度と閉じられぬ。覚悟を問う』


「……私は、覚悟します。私がここにいる理由を、自分で知るために」

 リリアの声に、光が応える。

 門の上に、新たな“精霊の環”が浮かび上がる。


 その様子を見て、ヴィエラがぽつりと呟いた。

「……そう。あなたは、私の理解を超えている」

 彼女は術式を収め、一歩、門から身を引いた。

「でも、だからこそ……もっと見ていたくなったのよ。
 あなたという存在の行き着く先を」
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