追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第39話:調停者の目覚めと、次なる火種

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 リリアが“調停者”としての使命を継いだ朝。
 フェンリース村の空は、どこまでも澄み切っていた。
 けれど、それは束の間の静けさに過ぎなかった。

「……風の精霊が伝えてきました。各地で、精霊との共鳴障害が起きているようです」
 リリアの言葉に、ユリウスは地図を広げながらうなずいた。

「北の精霊域、東の大河地帯……どちらも、帝国の“干渉線”と重なる」

「つまり……帝国が門に触れようとした影響が、もう各地に波及してるってこと?」

 セラが目を丸くする。

「いや、それだけじゃない」
 ユリウスは地図の一角に指を置いた。

「ここ。帝国の管轄外――西方の砂海地帯。“第三勢力”の動きが報告されている」

「第三勢力……?」

「精霊と共存していたとされる古の部族。“セレファの末裔”たちだ。
 彼らはかつて、巫女の民と共に門を護っていた者たちだが……今はどう動くか分からない」

 リリアは目を伏せ、小さく呟く。

「もしかすると、彼らは……私の存在に“怒って”いるかもしれません。
 封じられた血を、いま再び呼び覚ましたことに対して」

 一方その頃、帝国南部・神殿都市の廃墟。

 黒い外套の集団が、朽ちた祭壇に手をかざしていた。
 彼らは無言のまま、“門の共鳴波”を観測し続けていた。

「座す者が、継承された」
 低く響く声。

「では次の段階に進む。“あの方”に伝えろ。“時が満ちた”とな」

 その場に現れたのは、仮面の司祭と、黒銀の刺青を持つ男。
 帝国でもない、精霊の民でもない、第三の旗を掲げる“古き教団”の残党。

「世界の門が開く時、真の力が流れ込む。
 我らが王を――“外界より戻す”時が来た」

 そして、その場にいたひとりの少女が、リリアの名を呟いた。

「……リリア。あなたがその“鍵”になるのなら――
 私は、あなたを止めるために動く」

 その言葉は、確かにフェンリースの風に乗り、リリアの胸をわずかに震わせた。

 嵐の予感は、静かに、だが確かに迫っていた。
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