追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第44話:守護者の証と、エルフィアの影

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 フェンリース村。
 リリアが“守護者の証”を得てから数日。
 村の精霊たちは明らかにリリアへの反応を変えていた。

 風は常に彼女の周囲を巡り、
 水は彼女の歩みに沿って流れを整え、
 地はその足元を優しく支える。

 リリアはその変化に、少しだけ戸惑いながらも――受け止めていた。

「私はもう、“ただの記録官”じゃない。
 この地に立つ“守る者”なんだって……ようやく、実感しています」

 セラがにやりと笑って言う。

「背中が“指導者っぽく”なってきたよ、リリア。ちょっとかっこいい」

 カレンは腕を組みながら少し目を細める。

「変わったのはあんたじゃない。周囲の目のほうよ。
 あんたはずっと、守ろうとしてた。ただ……ようやく、皆がそれを“信じられるようになった”だけ」

 ユリウスは何も言わず、そっとリリアの肩に手を置いた。

 それだけで、リリアの表情は少しだけ柔らかくなった。

 一方――東の渓谷、エルフィアのもと。

 彼女は静かに森を歩いていた。
 だがその背後には、数人の影がついてくる。

 彼らは“封印派”の精霊――
 だがその中には、精霊の皮をかぶった“人の意志”も混じっていた。

「エルフィア様。門が開かれた今、我々は早急な再封印を提言します」

 エルフィアは足を止めず、答えた。

「力で押さえつける封印に、意味はない。
 私は“崩壊を防ぐ”ために生まれた。でも、それは世界を止めることではない」

「……ならば、あなたは“リリア=フェンリース”と共に歩むおつもりですか?」

 エルフィアは立ち止まり、振り返った。

「彼女の信じる道を、私はまだ信じられない。
 けれど――“私自身の道”は、私が選ぶ」

 その言葉に、精霊たちは一瞬沈黙し、やがて散っていく。
 だがその場に、ひとつの影が残っていた。

 フードを被った人物。
 エルフィアが目を細める。

「……あなたは、“人間”ね。誰?」

 フードの奥から、低い声が返る。

「私はただの“観測者”……だが、あの門の光を見て目を覚ました。
 君の中にある“閉じられた力”……それが開かれれば、全てがひっくり返る」

「……何の話?」

「いずれ分かるさ、“封じられた側”が目覚めたときにね」

 風が吹き抜け、影は霧のように消えた。

 エルフィアは目を閉じ、胸元に手を当てる。

「……私の中にも、まだ“私が知らない何か”が眠ってる……?」
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