追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第52話:三巫女、初めての邂逅

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夕刻、ルディア大環の中心――精霊たちの会議場に、重たい風が流れ込んだ。空の色がわずかに陰り、ひと筋の黒い靄が中央の祭壇に染み込むように現れる。

「……来た」

リリアは立ち上がり、光の柱の脇に身を寄せた。エルフィアも横に立ち、視線を前へと向ける。

祭壇の前に現れたのは、一人の少女。漆黒の衣に身を包み、赤銅色の瞳を持つその存在は、ただ立っているだけで空気の密度を変える。

「こんにちは、リリア。エルフィア。はじめまして。“もう一人の巫女”よ」

彼女の言葉には敵意も、親愛もなかった。ただ、事実だけを並べるように淡々とした口調。それがかえって、場の緊張を高めた。

「あなたが……第三の巫女?」

リリアの問いに、少女は小さく頷く。

「うん。私は“選ばれなかった巫女”――だから、自分で選ぶことにしたの。この世界をどう変えるかを」

エルフィアが目を細める。

「……名前は?」

「アルティナ。“再構築の巫女”とでも呼んでくれたらいいわ。私は、あなたたちの“調停”や“封印”の理念には、興味がない」

「なぜ現れたの? 私たちと話すため? それとも……争うため?」

「選択肢を提示するためよ。リリア、あなたは過去と向き合い、人と精霊の対話を目指してる。エルフィア、あなたは責任を背負って封印を選ぼうとした。……でも私は、“どちらも不完全”だと思ってる」

リリアとエルフィアの表情が強張る。

「精霊も人も、分かり合えるとは限らない。信じることは美しいけど、現実はいつだって“破綻”する。だったら私は――仕組みごと書き換える。“この世界そのもの”を、もっと合理的な形に」

「……それが、あなたの言う“再構築”?」

「ええ。精霊の自由も、人の自由も認めない。“定義された役割”の中で平等に管理された世界。悲劇も争いも起こらない、“固定された理想”の社会」

静かすぎる声が、冷たく空間を満たす。リリアは唇を引き結んだ。

「それは、私が目指す世界とは……決して交わらない」

「交わらないなら、どちらかが消えるしかない。……でも、すぐには争わない。私にはまだ準備がある。今日は“通告”に来ただけ」

アルティナは一歩だけ近づき、二人を交互に見た。

「三柱の均衡が揃ったことで、精霊の門が“最終形”を取ろうとしてる。それは、私にとっての“鍵”でもある。――いずれ、また会いましょう」

そう言い残し、黒い霧が空へと昇り、アルティナの姿は消えた。

リリアは、静かに拳を握る。

「彼女の思想は、私にとって……真の対極。でも、それでも……向き合わなきゃいけない」

エルフィアもまた、呟いた。

「本当の意味で世界が“試される”のは……これから、ね」
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