追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第60話:再構成の核心、アルティナの本心

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黒い霧が満ちる部屋の中。そこは、術式領域《コーデックス・ゼロ》の中枢――アルティナの意識空間に近い、閉ざされた思念領域だった。
彼女はひとり、術式核の前に座り、黙って構造体の演算結果を見つめていた。

「……やっぱり、完璧じゃない」

スクリーンに表示されたのは、再構成領域の浸食率、調停因子との干渉結果、そして――“犠牲者数”。
リリアたちが防ぎきれなかった“ひとつの命”。それはアルティナにとって、計画における想定外だった。

「合理性を突き詰めたはずなのに。排除されるはずの“不確定”が、あの子たちを動かした」

彼女は立ち上がり、薄暗い天井を見上げた。そこに映っているのは、かつての記憶。

瓦礫の中に立ち尽くす、幼い少女――アルティナ自身。
周囲は崩壊した町、横たわる精霊の亡骸、人々の泣き声、叫び、祈り。

「……昔、私も“信じてた”んだよ。人と精霊が理解し合えば、世界は良くなるって。そう教えられたから」

けれど、あの時――

「私の母は、精霊との共鳴に巻き込まれて、消えた。誰も救えなかった。誰も、助けられなかった」

震える手で、映像を消す。

「だから私は、“正解の世界”を作るって決めたの。誰かの感情や祈りに左右されない、完全に定義された社会。悲劇も争いもない、計算された“秩序”」

彼女は拳を握りしめた。

「でも、リリア。あなたはその“曖昧な感情”で、誰かの心を動かした。エルフィアまで味方につけた。そんなはず、なかったのに」

机の上にある小さなブローチに、指が触れる。
それは、かつてアルティナが母から譲り受けた“精霊共鳴器”。もう力は残っていない。けれど――それでも、今も捨てられずにいた。

「……私は、間違ってない。たとえ歪んでても、悲しみの上にしか、“本当の正しさ”は作れない」

外では、次なる構成陣が準備されていた。今度の舞台は、より大規模な都市、精霊たちの古き聖地《エラグリス》。
そこが、次の“世界の構造改変”の拠点となる。

「私が正しいことを、証明してみせる。今度こそ、誰も死なせない方法で」

けれど、その言葉には、どこか――震えるような迷いが、滲んでいた。
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