追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

文字の大きさ
62 / 70
1章

第62話:聖域防衛戦と、神域に響く意志

しおりを挟む
エラグリス――精霊たちの聖域。空はまだ晴れていた。けれど、大地の鼓動は確かに異変を告げていた。
地中の魔力線が震え、森の中心に向かって一点に集束している。赤黒い光の柱が、空の上からゆっくりと降りていた。

「これは……アルティナの“術式転送核”。あと少しで発動が完了する」

リリアは足を止め、神域の中心――《古き誓約の祭壇》を見据えた。そこにこそ、精霊界とこの世界の最深部が繋がる“接点”がある。

「先に核を破壊できれば、術式は中断できる。でも……守りの術式も展開されてるわ。突破するには時間がかかる」

エルフィアの分析に、ユリウスが即座に指示を飛ばす。

「二手に分かれる。リリアとエルフィアは術式核の無力化に。俺とセラ、カレンは防衛線を展開する。精霊たちは全域に散開、対・構造体に備えろ!」

精霊たちは応じるように光を発し、それぞれの巫女の周囲に配置されていく。水、風、火、土――
かつてはただの自然の象徴だったその力が、今、意思と共に戦場に立つ。

そしてついに、赤黒い光が空から地へと接続された。

「術式、発動開始!」

大地が揺れる。結界が破れ、構造体が出現する。以前のものより遥かに精密化され、速度も防御力も向上していた。

「こっちも“本気”ってことね!」

セラが風の刃を放ち、第一波を迎撃する。同時にカレンが土壁を張り、ユリウスが術式阻害フィールドを展開する。

「時間を稼ぐ。巫女たちが核に届くまで、絶対に通さない!」

一方、リリアとエルフィアはすでに祭壇内部に突入していた。構造がねじれた空間の中、中心部に浮かぶ術式核に向けて走る。

「この結界……精神干渉型。思考に作用して動きを鈍らせる……!」

「無理に突破するより、精霊たちとの共鳴で“中から破る”。リリア、同調して!」

「……うん、分かった!」

ふたりの巫女が手を取り合い、精霊たちの意志と魔力を重ねていく。祭壇の空間がきしみ、結界が揺らぎ――そして、裂けた。

「今だ!」

エルフィアが先行し、封印術式を重ねて術式核を押さえ込む。そこへ、リリアが最後の調停詠唱を放つ。

「――繋がるべきものよ、争うためでなく、守るために力を貸して!」

光が走った。核が封じられ、術式が崩れ始める。

同時に、構造体たちが一斉に動きを止めた。

「やった……!」

けれど――

そのとき、空に浮かぶ魔導投影体が起動した。そこにはアルティナの姿。

「……本体は、そこにはいないよ。これは“観測用分身”。でも、まあいい。あなたたちが守ったのは事実。今日は、それで引く」

「アルティナ……!」

リリアの呼びかけに、彼女はほんのわずかに目を伏せて言った。

「次の地は、もう決まってる。“神域”はもう使えない。ならば私は――“神の手の届かぬ場所”で、再び構築する」

そして、映像が消える。

リリアとエルフィアは、ようやく崩れた核の前で静かに息をついた。

「……守ったね」

「うん。でも……これで終わりじゃない」

ふたりの巫女の決意が、再び神域に響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...