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第3話「王子様って案外チョロくない?」
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王子とのお茶会から一夜明け――
「ふふふ……あの王子の動揺っぷり、なかなかのもんやったわね」
私は鏡の前でくるりと一回転。今日のドレスは深紅のリボンがアクセントになった白のアカデミードレス。上品ながらも主張が強く、つまり私にピッタリ。
「侍女マリアンヌ、どうかしら? 今日のわたくし、美しくキマっておりますでしょう?」
部屋の隅で紅茶を淹れていたマリアンヌが、ちらりと私に視線を向けた。
「ええ……完璧でございます。まるで“中身まで令嬢”のように」
「……え? 今なんか意味深なこと言わんかった?」
「気のせいではございませんか?」
あ、この侍女……できるわね。
気づいてるのか、気づいてないのか、どっちなのよ!
さて、今日からいよいよ“学園編”が始まる。
この乙女ゲームの舞台は、王族・貴族子弟が通うアカデミア。
ヒロインは“平民ながら特待生”として転入してくる設定。つまり、ここが彼女の“初登場イベント”の舞台ってわけ。
「ってことは……今日あたり、あの子が来るんちゃう?」
登場早々、主人公補正で周囲の視線を独り占め。
そして私と衝突する“運命の出会い”が――
「ごきげんよう、ヴィオレッタ様」
登校するなり、教室のドアを開けて入ってきた私に、クラスメイトたちは一斉に起立した。整った所作。気品ある態度。
――ここまでは完璧。
「ごきげんよう、皆様。今日も麗しい一日となりますように」
微笑み一つで全員がフッと息を呑む。
……そう、これが“悪役令嬢の威光”。
(いやぁ、気持ちええなあ……ナイトクラブでもこれくらい静まり返ってくれたら営業が楽やのに)
着席しようとしたところで、教室の扉がもう一度開いた。
――来た。
「お、おはようございます……えっと、今日から転入してきました……セシリア・ミレイユと申します」
その瞬間、空気が一変した。
どこか儚げな雰囲気。大きな瞳、胸元に花飾り、純白の制服――
これぞヒロイン、って感じの全方位好感度ビジュアル。まさに“運命の出会い”の始まり。
「わあ……」「綺麗……」「平民なのに品があるわ……」
周囲のざわめきが広がっていく。
当然のように、王子たちも注目。
(ふん……やっぱ来たか、恋愛脳ヒロインちゃん)
私の席のすぐ隣が空いていた。案の定、セシリアはそこへ案内され――
「あのっ、隣、失礼します……」
「――ごきげんよう、セシリアさん」
私はにっこりと笑いかけた。
ヒロインが戸惑うぐらいの“完璧な悪役スマイル”をお見舞いしてやる。
「グランシュタイン家のヴィオレッタと申します。以後、お見知りおきを。ふふ」
「あ、あの、よろしくお願いいたします……」
セシリア、明らかに硬直。
(はいはい、わかるわ。悪役令嬢ってテンプレ的に怖いもんね? でもウチはちょっと違うのよ)
授業が始まり、昼休みに入る頃――
私は中庭のベンチで紅茶を片手に、まったりと過ごしていた。
「ふう……学園生活、想像以上に楽しいわね。おほほほ」
「……楽しそうですね、ヴィオレッタ嬢」
声をかけてきたのは――王子様、再び登場。
「まあ、ルーク様。こんなところでお会いするなんて。まさか……私に会いに?」
「いや、それは……偶然だ」
――ふうん?
おかしいわね、この人、元のルートではヒロインに一直線のはずやったんやけど?
今のところ、ヒロインとの会話ゼロよ?
「……ルーク様。セシリアさんをご覧になって、どう思われました?」
「そうだな……控えめで礼儀正しい印象を受けたが……それ以上は、まだ」
(……は?)
いや、そこは“ビビッと来ました!”とか“あれが運命だ!”とかやないの?
ルーク王子、チョロくないどころか、意外とガード固いやん!
「そ、そうですわね。彼女は確かに、おとなしい印象でございますし……」
少し笑って返したけれど、内心では焦っていた。
(えええ、どうしよう!? これルートがズレてる!?)
つまり、王子がヒロインに落ちない。
→ ヒロインは焦る。
→ 本来のルートが崩壊。
→ 最終的に誰が悪者にされるかって?
ウチやがな!!!!!!
「ふふふ……あの王子の動揺っぷり、なかなかのもんやったわね」
私は鏡の前でくるりと一回転。今日のドレスは深紅のリボンがアクセントになった白のアカデミードレス。上品ながらも主張が強く、つまり私にピッタリ。
「侍女マリアンヌ、どうかしら? 今日のわたくし、美しくキマっておりますでしょう?」
部屋の隅で紅茶を淹れていたマリアンヌが、ちらりと私に視線を向けた。
「ええ……完璧でございます。まるで“中身まで令嬢”のように」
「……え? 今なんか意味深なこと言わんかった?」
「気のせいではございませんか?」
あ、この侍女……できるわね。
気づいてるのか、気づいてないのか、どっちなのよ!
さて、今日からいよいよ“学園編”が始まる。
この乙女ゲームの舞台は、王族・貴族子弟が通うアカデミア。
ヒロインは“平民ながら特待生”として転入してくる設定。つまり、ここが彼女の“初登場イベント”の舞台ってわけ。
「ってことは……今日あたり、あの子が来るんちゃう?」
登場早々、主人公補正で周囲の視線を独り占め。
そして私と衝突する“運命の出会い”が――
「ごきげんよう、ヴィオレッタ様」
登校するなり、教室のドアを開けて入ってきた私に、クラスメイトたちは一斉に起立した。整った所作。気品ある態度。
――ここまでは完璧。
「ごきげんよう、皆様。今日も麗しい一日となりますように」
微笑み一つで全員がフッと息を呑む。
……そう、これが“悪役令嬢の威光”。
(いやぁ、気持ちええなあ……ナイトクラブでもこれくらい静まり返ってくれたら営業が楽やのに)
着席しようとしたところで、教室の扉がもう一度開いた。
――来た。
「お、おはようございます……えっと、今日から転入してきました……セシリア・ミレイユと申します」
その瞬間、空気が一変した。
どこか儚げな雰囲気。大きな瞳、胸元に花飾り、純白の制服――
これぞヒロイン、って感じの全方位好感度ビジュアル。まさに“運命の出会い”の始まり。
「わあ……」「綺麗……」「平民なのに品があるわ……」
周囲のざわめきが広がっていく。
当然のように、王子たちも注目。
(ふん……やっぱ来たか、恋愛脳ヒロインちゃん)
私の席のすぐ隣が空いていた。案の定、セシリアはそこへ案内され――
「あのっ、隣、失礼します……」
「――ごきげんよう、セシリアさん」
私はにっこりと笑いかけた。
ヒロインが戸惑うぐらいの“完璧な悪役スマイル”をお見舞いしてやる。
「グランシュタイン家のヴィオレッタと申します。以後、お見知りおきを。ふふ」
「あ、あの、よろしくお願いいたします……」
セシリア、明らかに硬直。
(はいはい、わかるわ。悪役令嬢ってテンプレ的に怖いもんね? でもウチはちょっと違うのよ)
授業が始まり、昼休みに入る頃――
私は中庭のベンチで紅茶を片手に、まったりと過ごしていた。
「ふう……学園生活、想像以上に楽しいわね。おほほほ」
「……楽しそうですね、ヴィオレッタ嬢」
声をかけてきたのは――王子様、再び登場。
「まあ、ルーク様。こんなところでお会いするなんて。まさか……私に会いに?」
「いや、それは……偶然だ」
――ふうん?
おかしいわね、この人、元のルートではヒロインに一直線のはずやったんやけど?
今のところ、ヒロインとの会話ゼロよ?
「……ルーク様。セシリアさんをご覧になって、どう思われました?」
「そうだな……控えめで礼儀正しい印象を受けたが……それ以上は、まだ」
(……は?)
いや、そこは“ビビッと来ました!”とか“あれが運命だ!”とかやないの?
ルーク王子、チョロくないどころか、意外とガード固いやん!
「そ、そうですわね。彼女は確かに、おとなしい印象でございますし……」
少し笑って返したけれど、内心では焦っていた。
(えええ、どうしよう!? これルートがズレてる!?)
つまり、王子がヒロインに落ちない。
→ ヒロインは焦る。
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→ 最終的に誰が悪者にされるかって?
ウチやがな!!!!!!
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