『ごきげんよう、私が悪役令嬢でございます。でも中身はオカマですの』

黒川ねこ

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第18話「ハーレムエンドは許さない」

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場所は王宮、特別謁見室。
 ふたりの少女が向かい合って立つ。片や“元・王子の婚約者”、片や“平民出身の奇跡の乙女”。

 ――そう、これはまさに乙女ゲーム終盤の**“決戦イベント”**。

 司会進行役を務めるのは、まさかのリシャール王子。

「それでは、これより“王家相談役選定会談”を開始します! プレゼン形式です!」

「ちょ、プレゼンて……」

「テーマは“王子にふさわしい伴侶とは何か”。持ち時間は10分! どっちが推しとして尊いかを審議する場です!」

(なんでこの人だけ“実況席”みたいなテンションなん!?)

 セシリアが最初に手を挙げた。

「……私は、王子様の隣に立つということは、“癒し”であるべきだと思います」

 彼女の声は静かで、でも真剣だった。

「どんなときも心を和らげ、寄り添い、傷を癒す……そんな存在が、王子様に必要だと考えます」

 周囲から「なるほど」という声。
 ルーク王子も少し目を細める。

(……くっ、さすが正統派ヒロイン。王子の“心”をつく攻め方してきたか)

 だが、私も引かない。

「……素敵なご意見ですわ。ですが、癒しだけでは王子様は導けません」

「え……?」

「王の隣に立つ者は、時に“厳しさ”を、時に“道しるべ”を与えなければなりません。
 ただ寄り添うだけでは、王子様が“正しき王”になる道を見失いますわ」

 その瞬間、謁見室の空気がぴりっと張り詰めた。
 セシリアの表情が、わずかに揺れる。

(“甘やかし型ヒロイン”VS“導き型オカマ”……これが思想のぶつかり合いってやつよ!)

 リシャール王子が、わざとらしくペンを走らせる。

「はい、“癒し”一票、“鬼教官”一票、どっちも刺さりますねー。激戦です」

(誰かこの男を黙らせて)

 王妃様が口を開いた。

「では、次に“未来像”を語ってもらいましょう。王子と共に歩む未来を、どのように描いているのか」

 ――来た。これはもはや、恋愛告白タイムや。

 セシリアは手を胸に当て、まっすぐルークを見た。

「……私は、王子様と手を取り合いながら、小さくてもあたたかな家庭を築きたいです。
 どんな困難も、ふたりで笑って乗り越えられる、そんな未来を……」

 王妃がうなずく。周囲の女子も涙ぐむ。
 正直、めっちゃ良いセリフだった。

 ……けど、私も引かへんよ?

 私は椅子を下り、ゆっくりと歩み出た。

「ルーク様。私はあなたに、ただ“選ばれる”存在ではありたくありません」

 その言葉に、ルークの目が動く。

「私は、あなたと対等に立ち、共に戦い、共に悩み、
 共に“国を創る”存在になりたい。
 ……あなたが進もうとする道が、どれほど困難でも」

 静寂のあと、王様がわずかに口角を上げた。

「……力強いな」

 そしてリシャールがニコッと笑ってこう言った。

「つまり、ハーレムエンドはナシってことだね?」

「ええ。選ばせますわよ――“どちらか”をね」

 ヴィオレッタ・グランシュタイン(中身オカマ)、ここに堂々宣言。

「王子様、あなたには“覚悟”が必要ですわ。
 どちらかを選ばなければ――“未来”など築けませんもの」
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