『ごきげんよう、私が悪役令嬢でございます。でも中身はオカマですの』

黒川ねこ

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『ごきげんよう、王妃になりましたけど、中身オカマなのは変わりませんわ』 〜結婚生活と宮廷陰謀と恋愛バトル、ぜんぶ乗せの王宮ライフ編〜

第12話「前王妃様、なにゆえご登場ですの?」

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その日、マリアンヌの顔は妙に硬かった。

「お嬢様……いえ、“王妃様”。
 本日、お迎えすべき方がいらっしゃいます」

「ふん、また貴族の“自称・教養女”でも来るん?」

「……いえ。“本物”です」

 そして、扉が開いた。

 しんと静まり返る中、ゆっくりと現れたその人物は――

「ごきげんよう、若き王妃様。ようやくお会いできましたわね」

 漆黒のドレスに白銀のヴェール、優雅な所作と圧倒的な存在感。

 ――この人こそ、ルーク王子の実母にして、かつての王妃。
 そして現在、王家最高顧問のひとり――

**“前王妃、アマーリエ・アルバレスト”**である。

(……ちょ、ビジュアルつよっ!?
 これもう中ボス通り越してラスボスやん!?)

「お呼び立てしてしまって申し訳ございませんわ、アマーリエ様。
 わたくし、まだまだ未熟なもので……」

「いいえ。あなたが“未熟”などとは思っておりません」

 アマーリエはふっと微笑む。

「むしろ――あまりに“強すぎる”と、感じておりますのよ」

(……こわっ!! 褒めてんの!? 牽制なん!?)

 サロンに通されたふたりきりの空間。

 空気は重くなく、むしろ静かで穏やか。
 だけど――**全身の神経が研ぎ澄まされるような“静かな圧”**があった。

「あなたの噂、あらゆる場所から届いております」

「“前王妃の時代にはなかった風”が吹いている、そうも申されておりますわ」

「……ええ、風通しよくしてみましたの。ちょっとオカマくさい風ですけれど」

 くす、とアマーリエが笑う。

「それが、とても良いと感じておりますの」

「……えっ?」

「時代は変わるもの。わたくしの役目は、あなたのような新しい王妃が“生きやすい王宮”を築くために、“古いもの”を静かに消していくこと」

 ――やだ、強すぎる。大奥の“真の裏ボス”やん。

「あなたには、期待しておりますのよ。“女”という枠も、“王妃”という枠も超えて――
 本当にこの国を“守る存在”に、なられてくださいな」

 そう言って、静かに立ち上がる。

「……あ、それと」

 去り際にアマーリエが振り向いた。

「息子があなたを選んだこと。わたくし、とても誇らしく思っております」

 ――やめて!! そのセリフで泣くの反則!!
 中身オカマ、涙腺ゆるいのよォォ!!

 後日、マリアンヌは言った。

「“王妃の資質”を見極めるために、前王妃様はわざと“あえて静かに”訪れたそうです」

「……なるほど。
 大人の女って、ほんまに怖くて美しいわ……」
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