「ちょ、今日のアタシのネイル見て~!“婚約破棄記念ネイル”ってやつ?ウケるでしょ?」

黒川ねこ

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第零話「プロローグ:ギャル、異世界に降臨する」

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この世界に、ギャルはいなかった。

ネイルも、プリクラも、盛れるカメラアプリも存在しない。
ドレスは全て手縫いで、礼儀作法は厳格、メイクといえば香水と白粉くらい。
そんな中世的な魔法貴族社会に――ひとり、あまりにも浮いた存在がいた。

金髪巻き髪、ピンクグロスにキラキラネイル、
礼儀? 知らん。
自由? 正義。
――その名は、ミレイア・エレノア・ド・ルシア。

だが彼女の正体は、誰も知らない。

かつて、前世で“渋谷を制した最強ギャル”として、フォロワー12万、ネイルグランプリ3連覇、週7でプリクラ通いという伝説を打ち立てた、ただの女子高生――だった。

そんな彼女が、ある日信号無視の馬車(自動車)に轢かれて死亡。

気づけば、異世界の貴族令嬢として――

「うぎゃああああ~ん!!」

――産声を上げていた。



貴族家系ルシア公爵家の長女、ミレイア・エレノア。

周囲からは「生まれながらにして目力が強すぎる」「泣き声が『ぴぇんぴぇん』」と異様な事もあるが順調にお嬢様として育つ。

そして、10歳のある日。
食事中に見たスープの反射で――

「……あれ? これ、あたしじゃなくない???」

ギャルだった前世の記憶が、蘇った。

かつての“渋谷ギャル伝説”の全てが脳内を駆け巡る。

タピオカ、カチ盛り
前髪、ルーズソックス、プリ帳、写メ日記――
その全てが、突如として脳内にフルカラーHDで降臨。

「やっっっば……アタシ、転生してんじゃん」

ミレイアの本当の人生は、そこから始まった。



とはいえ、この世界にネイルサロンもマツエクもない。

だが、ミレイアは諦めなかった。

「ないなら、作る。ギャルはね、DIY精神が命なの☆」

まず、自家製ラメの研究。
光る鉱石を砕き、魔力のゼリーで固めた“ラメジェル”を開発。
ハケは孔雀の羽根、トップコートにはスライムの粘液を利用。

チークやグロスも、野草の染料と粘草エキスで自作。
肌荒れしない配合を調整し、ついに“魔法系コスメ”を完成させた。

さらに――

「この貴族家、錬金研究所あるじゃん。だったら、やるっきゃないっしょ」

父親の権力と資金を使い、
“魔動写影機”(通称:異世界プリクラ)を開発。
圧縮魔法と光精霊の術式を応用し、“盛れる写影システム”を作り上げた。

その結果――

「できた……! これがアタシの、異世界ギャルセット……!」

完成したのは、世界初の異世界ギャルセット:
• 魔動ラメジェル
• 錬金グロス(3種の魔法香料つき)
• 魅了強化フィルター付き“盛れプリ”機
• 魔導ミラー(表情分析機能つき)

異世界で、誰にも頼らず、たったひとりで“ギャル文化”を爆誕させたのだった。



そして彼女は、貴族子女が集う名門魔法学園に入学する。

「ま~じで、あたしがこの世界の常識、ぶっ壊すから。よろしくぅ~!」

ギャルは今、異世界で再び伝説になる。

彼女の名は――
ミレイア・エレノア・ド・ルシア。

ギャルであり、悪役令嬢であり、世界最先端の“異物”である。
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