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008 手当
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二人は、右足を引きずりながら歩く男性に合わせてゆっくりと歩いていた。三人が歩く道は、木の葉の隙間から陽が差し込んでいる。昨夜の雨の雫がキラキラして綺麗だった。
肩を貸している男性は、背が高く細身に見えていた体はしっかり鍛えられているのか重い。リリーの体から汗が噴き出し、額から汗が流れて頬を伝う。
男性も、相当体に痛みが伴うのか表情は険しく顔からポタポタと汗が流れていた。
「大丈夫ですか? 少し休憩しますか?」
リリーは心配で声をかける。
「いや、一度座ったらもう立てないかもしれない。申し訳ないが、このまま行きたい」
足を止めることなく、男性は返答した。
「おじさん、あとちょっとだから頑張って!」
アレンは、辛そうな男性を心配して後ろを振り返る。
「ああ。ありがとう。優しい子だな」
男性は、無理やりにアレンに向かって微笑む。リリーはそんな光景を横目に見ながら、悪い人ではなさそうだと少し安心していた。
でも、どういう人なのかわからないうちは警戒を怠ってはいけない。こうやって歩いている今、本当だったら根掘り葉掘り質問したい。
だけど、痛みに堪えて一生懸命歩いている姿を見て話しかけるのを躊躇していた。
(このまま家に、この男性を連れて行ったらバーバラに叱られるだろうな……)
どうしよう? と考えているうちにリリーたちが暮らすログハウスが見えて来た。
「おじさん、あのお家だよ」
アレンが、家を指さして教えている。
「ああ、あと少しだな」
男性は、一瞬足を止めたがすぐに歩き出す。きっと、本当だったら歩くのなんて無理なのかだろう。強い人だとリリーは思った。
やっと家の玄関まで来ると、アレンが扉を開けてくれた。リリーと男性は、先に家の中に入る。とにかくすぐに横にさせなくてはと、リビングのソファーまで連れていった。
ソファーの上に、ドシンと腰を降ろすとそのまま横になる。腕を頭の上に乗せて辛そうだ。男性は、半袖シャツにズボンという軽装だったが、全身びしょびしょで気持ち悪そうだった。
音を聞きつけたバーバラが、台所からリビングに姿を現す。
「お嬢様、どうかなさいまし――。一体、誰ですか?」
バーバラは、リビングに入って来て男性を見とめると目を見開いて驚いている。
「森で、倒れているのを見つけたのよ。足と腕をケガしているみたいで……」
リリーは、状況を説明するしかない。バーバラがどう出るか、予想がつかなかった。
「そんな……。お嬢様! 危険な人だったらどうするんですか!」
バーバラは、大きな声を上げてリリーを叱責する。
「バーバラ、ケガをしているんだよ。手当してあげて」
アレンは、バーバラの足にしがみ付いて必死にお願いしている。そんなアレンに、バーバラは困惑していた。
「すまない。……絶対に危害を加えないと誓う……。少しだけ、滞在させてくれ……」
男性は、やっとというような調子で声を出している。
「もう、全く……。私は知りませんよ! お嬢様、まずは着替えさせます。お湯と体を拭くタオルと着替えを用意して下さい。あと何か飲むものも」
そうバーバラが言うので、リリーは急いで台所にかけて行く。バーバラも、手当するための救急セットを取りに行った。アレンは、男性の傍に付いていて様子を窺っていた。
手当の準備を整えると、バーバラが男性を起こしてTシャツを脱がせ体を拭いて、血を流していた腕も綺麗に洗い流す。
リリーは、バーバラが手当し始めたのを確認すると着替えを取りに二階に上がった。グレンが泊りに来た時用に、着替えが一式用意してあるのだ。
グレンが、袖を通したことはない軽装を選ぶ。グレンのティーシャツと紺のズボンを持って階下に降りた。
リリーが着替えを持って行くと、既にバーバラが腕に包帯を巻いている。さすがバーバラ仕事が早い。問題は足の方だが、どうするのだろうか? とリリーは、心配そうに見ていた。
「できれば一回立って欲しいのだけど……。無理かしら?」
バーバラは、男性に訊ねる。
「……はぁ……はぁ。すまない。もう足に力が入らない」
男性は、熱が出てきたのか息が上がっている。バーバラは少し考えて、リビングの棚からハサミを取り出す。
すると男性の元に戻ると躊躇なくズボンを切り裂いた。痛そうにしている足は、すねの部分が大きく腫れている。
多少は擦り傷があり、血が滲んでいるが外傷は大したことなさそうだ。多分、この腫れを見る限り折れている感じがする。
「多分、折れていますね……。添え木をして動かさないでいるしかないけれど……」
バーバラは、これ以上どうすることもできないと渋い顔をしている。
「ちょっと、丁度良さそうな枝を探して来ます」
バーバラはそう言うと、リビングを出て外に行ってしまった。
「お母様、足って折れても死なないの?」
アレンが、痛そうな顔をして聞いてくる。きっと想像してしまって、怖いのだろう。リリーだって想像してしまうと怖い。アレンをギュっと抱きしめて言った。
「だっ、大丈夫よ。バーバラが何とかしてくれるから」
リリーは、流石にこんな大怪我をした人を見たことがないし手当なんてしたことがない。でも家に引き入れてしまった以上、死んで欲しくない。
バーバラを頼るほか、何も思いつかない自分がもどかしい。
暫くするとバーバラが戻って来てくれて、拾ってきた枝に足をしっかり固定して包帯を巻いた。そして、男性にお水を飲ませて水分を取らせた後は、ソファーに横にならせて休ませた。
ソファーから動かせそうになかったので、バーバラに頼む。静かにした方がいいだろうと、リリーはアレンを連れて台所に行った。
昼食がまだだったので、リリーはアレンと一緒にサンドイッチを作って食べる。アレンもリリーも、男性が気になって仕方がなかったが回復するのを待つしかないと我慢した。
肩を貸している男性は、背が高く細身に見えていた体はしっかり鍛えられているのか重い。リリーの体から汗が噴き出し、額から汗が流れて頬を伝う。
男性も、相当体に痛みが伴うのか表情は険しく顔からポタポタと汗が流れていた。
「大丈夫ですか? 少し休憩しますか?」
リリーは心配で声をかける。
「いや、一度座ったらもう立てないかもしれない。申し訳ないが、このまま行きたい」
足を止めることなく、男性は返答した。
「おじさん、あとちょっとだから頑張って!」
アレンは、辛そうな男性を心配して後ろを振り返る。
「ああ。ありがとう。優しい子だな」
男性は、無理やりにアレンに向かって微笑む。リリーはそんな光景を横目に見ながら、悪い人ではなさそうだと少し安心していた。
でも、どういう人なのかわからないうちは警戒を怠ってはいけない。こうやって歩いている今、本当だったら根掘り葉掘り質問したい。
だけど、痛みに堪えて一生懸命歩いている姿を見て話しかけるのを躊躇していた。
(このまま家に、この男性を連れて行ったらバーバラに叱られるだろうな……)
どうしよう? と考えているうちにリリーたちが暮らすログハウスが見えて来た。
「おじさん、あのお家だよ」
アレンが、家を指さして教えている。
「ああ、あと少しだな」
男性は、一瞬足を止めたがすぐに歩き出す。きっと、本当だったら歩くのなんて無理なのかだろう。強い人だとリリーは思った。
やっと家の玄関まで来ると、アレンが扉を開けてくれた。リリーと男性は、先に家の中に入る。とにかくすぐに横にさせなくてはと、リビングのソファーまで連れていった。
ソファーの上に、ドシンと腰を降ろすとそのまま横になる。腕を頭の上に乗せて辛そうだ。男性は、半袖シャツにズボンという軽装だったが、全身びしょびしょで気持ち悪そうだった。
音を聞きつけたバーバラが、台所からリビングに姿を現す。
「お嬢様、どうかなさいまし――。一体、誰ですか?」
バーバラは、リビングに入って来て男性を見とめると目を見開いて驚いている。
「森で、倒れているのを見つけたのよ。足と腕をケガしているみたいで……」
リリーは、状況を説明するしかない。バーバラがどう出るか、予想がつかなかった。
「そんな……。お嬢様! 危険な人だったらどうするんですか!」
バーバラは、大きな声を上げてリリーを叱責する。
「バーバラ、ケガをしているんだよ。手当してあげて」
アレンは、バーバラの足にしがみ付いて必死にお願いしている。そんなアレンに、バーバラは困惑していた。
「すまない。……絶対に危害を加えないと誓う……。少しだけ、滞在させてくれ……」
男性は、やっとというような調子で声を出している。
「もう、全く……。私は知りませんよ! お嬢様、まずは着替えさせます。お湯と体を拭くタオルと着替えを用意して下さい。あと何か飲むものも」
そうバーバラが言うので、リリーは急いで台所にかけて行く。バーバラも、手当するための救急セットを取りに行った。アレンは、男性の傍に付いていて様子を窺っていた。
手当の準備を整えると、バーバラが男性を起こしてTシャツを脱がせ体を拭いて、血を流していた腕も綺麗に洗い流す。
リリーは、バーバラが手当し始めたのを確認すると着替えを取りに二階に上がった。グレンが泊りに来た時用に、着替えが一式用意してあるのだ。
グレンが、袖を通したことはない軽装を選ぶ。グレンのティーシャツと紺のズボンを持って階下に降りた。
リリーが着替えを持って行くと、既にバーバラが腕に包帯を巻いている。さすがバーバラ仕事が早い。問題は足の方だが、どうするのだろうか? とリリーは、心配そうに見ていた。
「できれば一回立って欲しいのだけど……。無理かしら?」
バーバラは、男性に訊ねる。
「……はぁ……はぁ。すまない。もう足に力が入らない」
男性は、熱が出てきたのか息が上がっている。バーバラは少し考えて、リビングの棚からハサミを取り出す。
すると男性の元に戻ると躊躇なくズボンを切り裂いた。痛そうにしている足は、すねの部分が大きく腫れている。
多少は擦り傷があり、血が滲んでいるが外傷は大したことなさそうだ。多分、この腫れを見る限り折れている感じがする。
「多分、折れていますね……。添え木をして動かさないでいるしかないけれど……」
バーバラは、これ以上どうすることもできないと渋い顔をしている。
「ちょっと、丁度良さそうな枝を探して来ます」
バーバラはそう言うと、リビングを出て外に行ってしまった。
「お母様、足って折れても死なないの?」
アレンが、痛そうな顔をして聞いてくる。きっと想像してしまって、怖いのだろう。リリーだって想像してしまうと怖い。アレンをギュっと抱きしめて言った。
「だっ、大丈夫よ。バーバラが何とかしてくれるから」
リリーは、流石にこんな大怪我をした人を見たことがないし手当なんてしたことがない。でも家に引き入れてしまった以上、死んで欲しくない。
バーバラを頼るほか、何も思いつかない自分がもどかしい。
暫くするとバーバラが戻って来てくれて、拾ってきた枝に足をしっかり固定して包帯を巻いた。そして、男性にお水を飲ませて水分を取らせた後は、ソファーに横にならせて休ませた。
ソファーから動かせそうになかったので、バーバラに頼む。静かにした方がいいだろうと、リリーはアレンを連れて台所に行った。
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