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第三章 誰にでも秘密はある
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そして、キャスティナはこの半年の出来事を話し出した。
そもそもの始まりは、春に行われた王宮主宰の夜会で、ある一人の男性と出会った事だったと。王宮の庭園でほんのちょっと話しただけだったのに、キャスティナの事を気に入ってトントン拍子に婚約が決まってしまった。しかもその男性は、近衛騎士で侯爵家の次男だったと。
「あの、とっても優しくてカッコいいんです」
キャスティナは、顔を赤くして照れた。ジーンは、びっくりした。
「すごいな·····。侯爵家で近衛騎士って·····。ティナちゃんは、可愛いからいつかそれなりの人を見つけるだろうと思ってたけど、想像以上だよ。一応訊くけど、騙されたりしてないよね?」
「私も話が上手すぎると思ったんですが、本当でした。しかも、あの、エヴァン様って言うんですが·····エヴァン様を取り巻くみんなが好い人達だらけなんです。ご家族の方々も私を実の娘の様に可愛がってくれるんです」
キャスティナは、コーンフォレス家の人々を思い浮かべて目をキラキラさせる。それを見たジーンは、安心した。
「それで、何でこんな所に来る事になっちゃったの?」
ジーンが、不思議そうに訊ねた。
キャスティナは、魔法の事は言わないように話し出した。エヴァン経由で、近衛騎士団の隊長と知り合った事。誰にも話せないが、隊長にだけ話せる事柄がキャスティナにはあり、それを使わなければならない事態に陥った事。しかも、この国の第一王子も巻き込んでしまい、自分でもどうしたらいいかわからなくなり、ここに逃げて来てしまったと。
「なんだか、関わってる人物が大物過ぎて何て言っていいのか·····」
ジーンは、頭を抱えている。
「私もそうなんです。この半年間で、物凄く身分の高い人とばかり関わってて、自分でも何が正解なのかわからなくて。一人になって考えたかったんです。少しの間、ここに居させてもらえませんか?」
キャスティナは、ジーンの顔を窺い見る。ジーンは、難しい顔をしている。
「日中は、ここに居ても大丈夫だけど夜はどうするの?一人じゃ危ないよ」
「私は、別に大丈夫ですが?外にいる訳じゃないし」
「ティナちゃんは、危機意識が低すぎるよ!一人で夜通し貴族区域から歩いて来ちゃうし!無事にたどり着けたのが不思議なくらいだよ!」
ジーンは、キャスティナの行動があまりに危なっかし過ぎて全然自覚していない為、怒ってしまう。
「ごっ、ごめんなさい」
キャスティナは、ジーンに怒られシュンとしてしまう。その姿が可愛くて、ジーンはやれやれとばかりに頭を撫でた。
「本当に気を付けるんだよ。夜に住む所は、夕方までに考えておくよ」
*************
それからキャスティナは、少し休憩しなさいと言われ従業員の控室に行った。ジーンは、お店で開店準備を始めた。
キャスティナは、控室にあった長椅子に腰かける。はぁーっと大きな溜息をつく。衝動的に逃げて来てしまった。これからどうしたらいいのかさっぱり思い付かない。でも、どうしてもあのまま、コーンフォレス家に帰る気にならなかった。
あの時、サディアスに言われた一言が頭から離れない。「戦える」間違いなくそう言った。一体誰と?もしかしたら、何処かの国と?絶対にそんな事の為に、自分の力を使ってたまるかと心の底から怒りが沸き上がってくる。この怒りが抑え切れなくて、貴族社会からキャスティナは逃げ出した。
キャスティナは、一見温厚な性格だ。誰にでもニコニコ笑顔で、常に楽しそうにしている。大概の人に好意を持って接している。しかし実は、父親や継母の様な傲慢で理不尽な人間が大嫌いだ。キャスティナは、自分が悪くて責められたりする分には何とも思わない。むしろ、二度と同じことをしないように気を付けようと努力する。
キャスティナが、どうする事も出来ない事柄で責められたり疎まれたりする事が許せない。当たり前の事だが、そう言う人間は世の中に一定数存在する。
自分の悪い所を認めない、自分が頑張らなくてはいけないのに人のせいにする。貴族だとか位だとかプライドだとかを大切にして、それ以外を価値の無いものとして扱う人間。
キャスティナは、そんな人間が大嫌いだ。だから自分の好意をこれっぽっちも分け与えたいと思わない。そんな激しい一面も持っている。だからと言って、自分から進んで仕返しをしようという気持ちはない。
キャスティナの実の母キャサリンがよく言っていた。人にした事は良い事も悪い事も自分に返ってくるからと。
サディアスの記憶を抜き取った事は、後悔していない。むしろ、あまりの嫌悪感からキャスティナと言う記憶丸ごと抜き取ろうかと思ったぐらいだ。でも、流石にそれは後で辻褄が合わなくなると思い自粛した。
サディアス殿下にした事は、良い事だったのか悪い事だったのかわからないな·····。
そもそもの始まりは、春に行われた王宮主宰の夜会で、ある一人の男性と出会った事だったと。王宮の庭園でほんのちょっと話しただけだったのに、キャスティナの事を気に入ってトントン拍子に婚約が決まってしまった。しかもその男性は、近衛騎士で侯爵家の次男だったと。
「あの、とっても優しくてカッコいいんです」
キャスティナは、顔を赤くして照れた。ジーンは、びっくりした。
「すごいな·····。侯爵家で近衛騎士って·····。ティナちゃんは、可愛いからいつかそれなりの人を見つけるだろうと思ってたけど、想像以上だよ。一応訊くけど、騙されたりしてないよね?」
「私も話が上手すぎると思ったんですが、本当でした。しかも、あの、エヴァン様って言うんですが·····エヴァン様を取り巻くみんなが好い人達だらけなんです。ご家族の方々も私を実の娘の様に可愛がってくれるんです」
キャスティナは、コーンフォレス家の人々を思い浮かべて目をキラキラさせる。それを見たジーンは、安心した。
「それで、何でこんな所に来る事になっちゃったの?」
ジーンが、不思議そうに訊ねた。
キャスティナは、魔法の事は言わないように話し出した。エヴァン経由で、近衛騎士団の隊長と知り合った事。誰にも話せないが、隊長にだけ話せる事柄がキャスティナにはあり、それを使わなければならない事態に陥った事。しかも、この国の第一王子も巻き込んでしまい、自分でもどうしたらいいかわからなくなり、ここに逃げて来てしまったと。
「なんだか、関わってる人物が大物過ぎて何て言っていいのか·····」
ジーンは、頭を抱えている。
「私もそうなんです。この半年間で、物凄く身分の高い人とばかり関わってて、自分でも何が正解なのかわからなくて。一人になって考えたかったんです。少しの間、ここに居させてもらえませんか?」
キャスティナは、ジーンの顔を窺い見る。ジーンは、難しい顔をしている。
「日中は、ここに居ても大丈夫だけど夜はどうするの?一人じゃ危ないよ」
「私は、別に大丈夫ですが?外にいる訳じゃないし」
「ティナちゃんは、危機意識が低すぎるよ!一人で夜通し貴族区域から歩いて来ちゃうし!無事にたどり着けたのが不思議なくらいだよ!」
ジーンは、キャスティナの行動があまりに危なっかし過ぎて全然自覚していない為、怒ってしまう。
「ごっ、ごめんなさい」
キャスティナは、ジーンに怒られシュンとしてしまう。その姿が可愛くて、ジーンはやれやれとばかりに頭を撫でた。
「本当に気を付けるんだよ。夜に住む所は、夕方までに考えておくよ」
*************
それからキャスティナは、少し休憩しなさいと言われ従業員の控室に行った。ジーンは、お店で開店準備を始めた。
キャスティナは、控室にあった長椅子に腰かける。はぁーっと大きな溜息をつく。衝動的に逃げて来てしまった。これからどうしたらいいのかさっぱり思い付かない。でも、どうしてもあのまま、コーンフォレス家に帰る気にならなかった。
あの時、サディアスに言われた一言が頭から離れない。「戦える」間違いなくそう言った。一体誰と?もしかしたら、何処かの国と?絶対にそんな事の為に、自分の力を使ってたまるかと心の底から怒りが沸き上がってくる。この怒りが抑え切れなくて、貴族社会からキャスティナは逃げ出した。
キャスティナは、一見温厚な性格だ。誰にでもニコニコ笑顔で、常に楽しそうにしている。大概の人に好意を持って接している。しかし実は、父親や継母の様な傲慢で理不尽な人間が大嫌いだ。キャスティナは、自分が悪くて責められたりする分には何とも思わない。むしろ、二度と同じことをしないように気を付けようと努力する。
キャスティナが、どうする事も出来ない事柄で責められたり疎まれたりする事が許せない。当たり前の事だが、そう言う人間は世の中に一定数存在する。
自分の悪い所を認めない、自分が頑張らなくてはいけないのに人のせいにする。貴族だとか位だとかプライドだとかを大切にして、それ以外を価値の無いものとして扱う人間。
キャスティナは、そんな人間が大嫌いだ。だから自分の好意をこれっぽっちも分け与えたいと思わない。そんな激しい一面も持っている。だからと言って、自分から進んで仕返しをしようという気持ちはない。
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サディアスの記憶を抜き取った事は、後悔していない。むしろ、あまりの嫌悪感からキャスティナと言う記憶丸ごと抜き取ろうかと思ったぐらいだ。でも、流石にそれは後で辻褄が合わなくなると思い自粛した。
サディアス殿下にした事は、良い事だったのか悪い事だったのかわからないな·····。
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