2 / 25
第2話
しおりを挟む
馬車の旅は半日ほど続き、二回うたた寝をして、目覚めた時、隣国――トラウゼンへと到着した。馬車の戸を開けた御者が、私に向かって恭しく礼をする。
「リーリエル様。トラウゼンに到着いたしました。ただいまから、国外追放の刑を開始します。……あなたはこれより60年間、ここで暮らし、決してイルスタンに戻ってはいけません」
つい先程までうたた寝をしていた私は、大きくあくびをしながら言う。
「ふぁ~あ、60年かぁ。イルスタンに戻る頃には、私はもうおばあちゃんね」
冗談で言ったのだが、御者は目頭を押さえ、泣き出してしまった。
「うっ、うぅっ、リーリエル様、おいたわしや……あなた様が大罪を犯したなど、わたくしめには、とても信じられませぬ……少々短絡的で、クソ生意気なところもございますが、あなた様は誰にでも分け隔てなく接する、心優しい方。わたくしは、此度のお裁き、冤罪であると思っております……!」
「そっか。私の無実を信じてくれる人がいて、嬉しいわ。……ねぇ、今、クソ生意気って言った?」
「気のせいでございましょう。ではリーリエル様、わたくしめはこれにて失礼いたします。お元気で! また60年後にお会いしましょう!」
そして御者は、風のような速さで馬車を走らせ、姿を消した。
あー、うん。冤罪だとは思ってるけど、だからと言って、別に何かしてくれるってわけでもないのね。いや、まあ、いいんだけどね。私を信じてくれる気持ちだけでも、嬉しいから。
さて、と。
国の入り口で立ち尽くしていても仕方ないし、これから暮らすことになるトラウゼンとやらを、ちょっと見て回るとしますか。
・
・
・
ここ、国?
本当に、国なの?
それが、私のトラウゼンに対する感想だった。
いや、そりゃ、大国であるイルスタンとは比べるべくもないのは分かっていたが、それにしたって、これはひどい。……何がひどいって、しっかりとした建物が、まったくないのだ。
見渡す限り、テント、テント、テントである。
それも、あちこち穴が開いている、みすぼらしいテントだ。
どうやら、民家も、商店も、酒場も、全部テントでできているらしい。
恐らくこの様子では、病院や役所でさえも、テントでできているんでしょうね。……どんな国よ。こう言っちゃなんだけど、まるで難民キャンプだわ。
国を取り囲む外壁だけはそこそこ立派だったので、中身のショボさに、正直かなりビックリである。まあ、よく考えたら、良く発展した住みやすい国に追放しても、たいした罰にならないもんね。うーむ、ここで60年暮らすのかぁ……こりゃきっついなぁ……
「リーリエル様。トラウゼンに到着いたしました。ただいまから、国外追放の刑を開始します。……あなたはこれより60年間、ここで暮らし、決してイルスタンに戻ってはいけません」
つい先程までうたた寝をしていた私は、大きくあくびをしながら言う。
「ふぁ~あ、60年かぁ。イルスタンに戻る頃には、私はもうおばあちゃんね」
冗談で言ったのだが、御者は目頭を押さえ、泣き出してしまった。
「うっ、うぅっ、リーリエル様、おいたわしや……あなた様が大罪を犯したなど、わたくしめには、とても信じられませぬ……少々短絡的で、クソ生意気なところもございますが、あなた様は誰にでも分け隔てなく接する、心優しい方。わたくしは、此度のお裁き、冤罪であると思っております……!」
「そっか。私の無実を信じてくれる人がいて、嬉しいわ。……ねぇ、今、クソ生意気って言った?」
「気のせいでございましょう。ではリーリエル様、わたくしめはこれにて失礼いたします。お元気で! また60年後にお会いしましょう!」
そして御者は、風のような速さで馬車を走らせ、姿を消した。
あー、うん。冤罪だとは思ってるけど、だからと言って、別に何かしてくれるってわけでもないのね。いや、まあ、いいんだけどね。私を信じてくれる気持ちだけでも、嬉しいから。
さて、と。
国の入り口で立ち尽くしていても仕方ないし、これから暮らすことになるトラウゼンとやらを、ちょっと見て回るとしますか。
・
・
・
ここ、国?
本当に、国なの?
それが、私のトラウゼンに対する感想だった。
いや、そりゃ、大国であるイルスタンとは比べるべくもないのは分かっていたが、それにしたって、これはひどい。……何がひどいって、しっかりとした建物が、まったくないのだ。
見渡す限り、テント、テント、テントである。
それも、あちこち穴が開いている、みすぼらしいテントだ。
どうやら、民家も、商店も、酒場も、全部テントでできているらしい。
恐らくこの様子では、病院や役所でさえも、テントでできているんでしょうね。……どんな国よ。こう言っちゃなんだけど、まるで難民キャンプだわ。
国を取り囲む外壁だけはそこそこ立派だったので、中身のショボさに、正直かなりビックリである。まあ、よく考えたら、良く発展した住みやすい国に追放しても、たいした罰にならないもんね。うーむ、ここで60年暮らすのかぁ……こりゃきっついなぁ……
71
あなたにおすすめの小説
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる