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第12話
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一分ほどして、地震はやっと収まった。
あまりに激しい揺れだったので、まだ、体が揺すられている感じがする。
私はホッとして、ルフレンスに言う。
「もの凄い地震だったわね」
そんな私に、ルフレンスは小さなため息を漏らした。
「いえ、この程度の地震なら、トラウゼンでは驚くようなものではありません。三日に一度くらいの割合で、今の地震など比べ物にもならないほどの大地震が起こりますから」
「三日に一度ってそんな……雨じゃないんだから……」
「言い得て妙ですね。トラウゼンにとって、大地震は雨のように日常的なものと言えます。だから私たちは、まともな建物に住むことができないのです。災害級の大きな地震が頻発する環境では、基礎工事をすることすら不可能ですし、なんとか家を建てることができたとしても、いつ倒壊するかと怯えて暮らさなければなりませんからね」
「なるほどね……皆がテントに住んでるのには、そんな理由があったのね。簡素なテントなら、たとえ倒れても被害はないし、すぐ元に戻せるものね。合理的だわ」
「ええ。今私たちがいるこのテントも、さっきよりも大きな地震が来た場合は、支柱を残して外側に自壊するようにできています。そして、地震が終わったら、魔法を使って元に戻すんです」
「ふうん。よく見ると、調度品も床にガッチリ固定されてるわね。……それにしても、このトラウゼン、聞けば聞くほど、人間が住むところじゃないって感じね」
「そうですね。なんといってもここは、イルスタンの大罪人に罰を与えるための流刑地ですから」
「でも、こんな酷いところ、皆すぐに逃げ出しちゃうんじゃないの? 別に、誰かに見張られてるわけでもないんだし。そりゃ、イルスタンに戻ることは不可能だろうけど、他の国に行くことはできるわよね? なんでみんな、そうしないの?」
そんな私の問いに、ルフレンスは首を傾げた。まるで、『なんでそんな馬鹿なことを聞くんだ?』とでも言いたげな表情だった。
「リーリエル様もご存じでしょう。私たち、追放された大罪人には、トラウゼンを出ることのできない『呪いの刻印』が施されています。私たちは、どんなに過酷な環境であろうと、ここで生きていくしかないのです」
「呪いの刻印? 何それ?」
「これですよ。リーリエル様もイルスタンを追放される際、右手に、この刻印を押されたでしょう?」
ルフレンスはそう言って、右手の甲を見せてきた。
そこには、奇妙な模様の刻印があった。
私は、自分の右手の甲を見る。
……そこには、何もない。
その、何もない右手の甲をルフレンスの方に向け、言う。
「御覧の通り、私の手には、そんなのないわ」
あまりに激しい揺れだったので、まだ、体が揺すられている感じがする。
私はホッとして、ルフレンスに言う。
「もの凄い地震だったわね」
そんな私に、ルフレンスは小さなため息を漏らした。
「いえ、この程度の地震なら、トラウゼンでは驚くようなものではありません。三日に一度くらいの割合で、今の地震など比べ物にもならないほどの大地震が起こりますから」
「三日に一度ってそんな……雨じゃないんだから……」
「言い得て妙ですね。トラウゼンにとって、大地震は雨のように日常的なものと言えます。だから私たちは、まともな建物に住むことができないのです。災害級の大きな地震が頻発する環境では、基礎工事をすることすら不可能ですし、なんとか家を建てることができたとしても、いつ倒壊するかと怯えて暮らさなければなりませんからね」
「なるほどね……皆がテントに住んでるのには、そんな理由があったのね。簡素なテントなら、たとえ倒れても被害はないし、すぐ元に戻せるものね。合理的だわ」
「ええ。今私たちがいるこのテントも、さっきよりも大きな地震が来た場合は、支柱を残して外側に自壊するようにできています。そして、地震が終わったら、魔法を使って元に戻すんです」
「ふうん。よく見ると、調度品も床にガッチリ固定されてるわね。……それにしても、このトラウゼン、聞けば聞くほど、人間が住むところじゃないって感じね」
「そうですね。なんといってもここは、イルスタンの大罪人に罰を与えるための流刑地ですから」
「でも、こんな酷いところ、皆すぐに逃げ出しちゃうんじゃないの? 別に、誰かに見張られてるわけでもないんだし。そりゃ、イルスタンに戻ることは不可能だろうけど、他の国に行くことはできるわよね? なんでみんな、そうしないの?」
そんな私の問いに、ルフレンスは首を傾げた。まるで、『なんでそんな馬鹿なことを聞くんだ?』とでも言いたげな表情だった。
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「御覧の通り、私の手には、そんなのないわ」
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