「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ

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第17話

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 しかし、彼らの覚悟に反して、魔物はいつまでたっても攻めてはこなかった。

 偵察を出し、周囲を探ると、そこには、おびただしい数の魔物の死骸があった。……死骸には、魔獣の爪や牙の痕が、深々と残されていた。……どうやら魔獣が、バグマルス王国周辺の魔物を、全て殺してしまったらしい。

 これは私の推測だが、魔獣は、自らの罪を受け入れ、悔い改めた民衆たちを助けるために、魔物を全滅させたのではないだろうか?

 もしも民衆たちが、『思いやりを持ち、正しく生きなさい』という魔獣の教えを無視し、自分だけ助かろうと弱いものを蹴落としたり、過去の身勝手さを反省せず、他国に逃亡しようとしたなら、こうはならなかった気がする。

 私は、今思った通りのことを、アンディに話した。

 アンディは、いつか酒場で語り合ったときのように、異論を挟んだりはせず、ただ静かに相槌を打ち、そして、最後に口を開く。

「悔い改めたものは助け、身勝手で欲深いものには罰を与える……か。まるで、神様の使いだね」

 私は頷き、言う。

「実際、生き残った民衆たちも、ハーディン隊長も、魔獣は神の使いだって言っているそうよ」

「そっか……でも、良かったね、ラスティーナ。バグマルス王国自体は滅んでしまったけど、少なくない数の人々が生き残ることができて」

「えっ? い、いや、わ、私、もう別に、あんな国に住んでる人たちのことなんて、どうなろうと、気にもしてないけど……」

「またまた。気になるから、バグマルス王国の記事を、ずっと読み込んでたんだろう?」

「そ、それは……」

 その通りだった。
 アンディにはいつも、心の中を見透かされてしまう。

 傲慢なバグマルス王家の人間はともかく、民衆たちに対しては、私は少しだけ罪悪感を抱いていた。私のことを顧みず、勝手な人たちばかりだったが、それでも、全員が全員、心の底からの悪人なわけではないだろうと思っていたからだ。

 その、悪人じゃない人たちを見捨てたと思うと、胸が痛み、やっぱり彼らを救いに戻るべきだったのではないかと、何度も自問自答していたのである。

 そんな私を慰めるように、アンディは静かに、そして、優しく言う。

「きみは優しい人だから、『国には二度と戻らない』って決めた後も、人々のことを心配して、色々と悩んでいたよね。でも結局、民衆たちは、魔獣の暴走をきっかけに、自分たちの意思で悔い改め、自分たちの力で生まれ育った場所を守る道を選んだ。誰にも頼らずに」

「…………」

「死んでしまった人たちは気の毒だけど、反省するチャンスがあったのにそうしなかったのだから、ある意味自業自得とも言える。だから、きっと、これで良かったんだよ」

 そう言って私の肩に手を置くアンディ。私はゆっくりと頷くと、もう何もしゃべらず、黙って彼の手に、自分の手を重ねるのだった。
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