夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第47話

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「悪いが、納得はできない」

「ヘザーさん……」

「だが、受け入れはする。あたしはさっき、そっちのお姉さんを殺して、自分の意見を通そうとした。そっちのお姉さんがあたしを殺して自分の意見を通すなら、それはそれで仕方ないとも思った。何かもめごとが起こった時、結局最後に意見を通せるのは、強い奴だからね」

 私はボソッと言う。

「蛮族的な異常者の考え方ね」

「戦闘狂の異常者にだけは言われたくねぇな」

「ふん」

「話を戻すぞ。さっきの魔法、あれは凄かった。あたしは魔法に詳しくないが、それでもまったくの無知ってわけでもない。魔法を使う悪党と戦った経験も一度や二度じゃないからね」

 あ、そうなんだ。さっきは勝手に、私と同じで魔法に対する深い知識なんてないだろうと思ってたけど、百戦錬磨の賞金稼ぎなら、そりゃ魔法使いと戦ったことくらいあるわよね。

 でも……

「それにしちゃ、簡単に動けなくなっちゃったじゃない」

「うるせぇな。それだけ、あの魔法が凄かったってことだよ。今さっき彼も言ってたが、魔法は精神力に大きく左右される。それは、かけられる方も同じで、精神力が強けりゃ、多少の魔法は効かねぇんだよ。火の魔法だろうが風の魔法だろうが、効かないと信じりゃ大して痛くない」

「ふーん」

「だからあたしは、今まで魔法使いを怖いと思ったことなんて一度もない。だが、さっきの魔法は正直ビビったぜ。あんたなら分かるだろう。あたしらみたいなスピード自慢の剣士は、動きが命だ。その動きを止められちまったら、もう何もできやしない。完全敗北だよ」

「まあね」

「だから、敗者は勝者の言うことを聞く。それだけさ。ただ、これだけは言っておく」

 ヘザーは、事の成り行きをじっと見守っていたカールに向き直る。

「あたしは悪の動向に常に目を光らせている。今から五年後か、あるいは十年後か。成長したあんたが悪の道に走ったなら、どこにいても必ず殺しに行くよ。それを覚えておくんだね」

 カールは頷いた。
 ヘザーも頷き、言葉を続ける。

「そしてあたしは、あんたの親父の仇だ。あたしを殺したいと思ったら、いつでも挑んできな。相手になってやるよ」





 こうして、ヘザーと共同でおこなった山賊退治の依頼は完了した。

 あの平和な村の実態を役人に告発したことで、村は阿鼻叫喚。ヘザーの予想通り、ほぼすべての村人が逮捕されるはこびとなった。連行をまぬがれたのは、まだ幼い子供たちだけである。

 シエルがこの地方の領主に直談判した結果、カールはその子供たちと一緒に福祉施設に預けられることになった。驚くべきことに、カールは少しも取り乱さず、自ら子供たちのまとめ役を務め、施設の代表者に『この子には人をまとめる才能がある』と言わせるくらいだった。
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