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精霊に愛された素晴らしき村の終焉 第9話
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だいたい、こんなのおかしいのよ。悲劇の渦中にいるべきなのは、いつだって無価値でくだらない存在のはずだ。あの惨めったらしいカレンのように。
私は違う。私には価値がある。そんな私が悲劇的に死ぬなんて、許されるはずがない。私自身が当然許さないし、天も、神も、運命も許さないに決まっている。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
だが、カレンの姉が何をどう思おうと、現実は変わらない。地響きはすでに強い地震のような縦揺れになっており、馬が不安げに「ヒヒィン……」と鳴く。その瞬間、雷鳴のごときアイディアが脳裏に閃いた。
そうだ!
このアホ馬をおとりにすればいい!
その隙に、どこかに逃げるのよ!
私だけは、絶対に生き残るのよ!
唯一の道が土砂に埋まっているのに、どこに逃げるというのか? その当然の疑問について考える理知的な思考は、彼女にはなかった。とにかく、今は一秒でも長く生き永らえたい。それがすべてだった。
「ほら、行けっ! あの化け物どもに向かって突っ込めっ!」
カレンの姉は馬の尻を叩き、悪鬼たちに向かわせようとする。しかし、怯えきっている馬は、決して前進しない。
「おい、ふざけんなっ! 早く行けよっ! ほら、ほらぁっ!」
完全に冷静さを失い、馬の背後から蹴りを入れようとするカレンの姉。それは、あまりにも愚かな行動だった。怯えた馬は、自分を守るために反射的に背後に立ったものを後ろ足で蹴ることがある。しかも今回は、事前に尻まで叩かれているのだ。これで何もしない方がおかしい。
「げぼぉっ!?」
醜い呻き声とともに、腹を蹴られて吹っ飛ぶカレンの姉。馬の力で後ろ蹴りを食らえば、普通なら内臓破裂だろうが、そこまでに至っていないのは、この馬の気性がとても優しいからに違いない。
「ぐほっ! ぐぇっ! うえぇぇぇぇぇぇっ……!」
地面を七転八倒し、泥にまみれながら嘔吐するカレンの姉。馬は、もう付き合いきれないという感じで藪の中の獣道に入っていく。とても細い道だ。きっとこの馬だけは、悪鬼たちから逃げおおせることができるだろう。
吐くものを全て吐ききったカレンの姉は、気がつく。あの『どっどっど』という悪鬼たちの行進する音が、もう聞こえないことに。
代わりに漂って来るのは、腐臭。
それと、血の匂い。
周りを大きな壁で囲まれたかのように、わずかな風も感じない。
カレンの姉は、四つん這いの姿勢から、恐る恐る顔を上げる。
「ひいいぃぃぃぃぃっ!」
もはや薄々分かっていたことだが、悪鬼の大軍がカレンの姉を囲み、見下ろしていた。
私は違う。私には価値がある。そんな私が悲劇的に死ぬなんて、許されるはずがない。私自身が当然許さないし、天も、神も、運命も許さないに決まっている。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
どっどっど。
だが、カレンの姉が何をどう思おうと、現実は変わらない。地響きはすでに強い地震のような縦揺れになっており、馬が不安げに「ヒヒィン……」と鳴く。その瞬間、雷鳴のごときアイディアが脳裏に閃いた。
そうだ!
このアホ馬をおとりにすればいい!
その隙に、どこかに逃げるのよ!
私だけは、絶対に生き残るのよ!
唯一の道が土砂に埋まっているのに、どこに逃げるというのか? その当然の疑問について考える理知的な思考は、彼女にはなかった。とにかく、今は一秒でも長く生き永らえたい。それがすべてだった。
「ほら、行けっ! あの化け物どもに向かって突っ込めっ!」
カレンの姉は馬の尻を叩き、悪鬼たちに向かわせようとする。しかし、怯えきっている馬は、決して前進しない。
「おい、ふざけんなっ! 早く行けよっ! ほら、ほらぁっ!」
完全に冷静さを失い、馬の背後から蹴りを入れようとするカレンの姉。それは、あまりにも愚かな行動だった。怯えた馬は、自分を守るために反射的に背後に立ったものを後ろ足で蹴ることがある。しかも今回は、事前に尻まで叩かれているのだ。これで何もしない方がおかしい。
「げぼぉっ!?」
醜い呻き声とともに、腹を蹴られて吹っ飛ぶカレンの姉。馬の力で後ろ蹴りを食らえば、普通なら内臓破裂だろうが、そこまでに至っていないのは、この馬の気性がとても優しいからに違いない。
「ぐほっ! ぐぇっ! うえぇぇぇぇぇぇっ……!」
地面を七転八倒し、泥にまみれながら嘔吐するカレンの姉。馬は、もう付き合いきれないという感じで藪の中の獣道に入っていく。とても細い道だ。きっとこの馬だけは、悪鬼たちから逃げおおせることができるだろう。
吐くものを全て吐ききったカレンの姉は、気がつく。あの『どっどっど』という悪鬼たちの行進する音が、もう聞こえないことに。
代わりに漂って来るのは、腐臭。
それと、血の匂い。
周りを大きな壁で囲まれたかのように、わずかな風も感じない。
カレンの姉は、四つん這いの姿勢から、恐る恐る顔を上げる。
「ひいいぃぃぃぃぃっ!」
もはや薄々分かっていたことだが、悪鬼の大軍がカレンの姉を囲み、見下ろしていた。
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