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EP2 卵に潜む悪夢4 共鳴現象の謎
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「で、俺に教えたい情報って?」
屋上まではレイの先導と俺の五感のおかげで難なくたどり着くことが出来た。
青い月と黄色い月。遥か遠き故郷エデンを見ながら俺たちはひっそりと話している。
地上を見ればさっきよりも確実に捜索の人数が増えていた。中には俺を地下に連れていこうとした時にいた屈強そうな医者たちもいる。
道中の監視カメラはマナを送るとトロンが少しの間何とかしてくれた。流石電霊である。後で一緒に怒られてねとは言われたけれど。
一息ついたところで気になっていた話を切り出す。
「うん。まあ、確かな情報じゃないし噂程度に聞いただけなんだけどな。この病院で時々行方不明者が出てるんだって。地球人じゃなくてエデン人のね。何をしてるとかはさっぱりわからないけど、これが本当だったらきな臭いじゃん?こここの地下はやたらと階数多いし。普通のエレベーターからは地下には行けないのもおかしいだろ。霊安室とかだったらまだわかるけど、そんな階数いらないし。その噂を確かめにここに来たんだよ」
もし、あのまま我慢できていたら俺は今頃どうなっていたのだろうか。
レイの言葉が正しいとは限らない。しかし、今日起こったことのせいでそれが嘘だとも言い切れなかった。
なにより。
(……瑞雪は竜を捕獲しておかしくした奴がいるはずだって言ってたな。御絡流の会の奴らじゃない、資金があって大規模な組織。確かにここなら……でもここってそもそも御絡流の会と提携してるんだよな。瑞雪に報告しないと)
グリーゾス。哀れな竜だった。本当は自由に空を飛び、誰にも束縛されることなどない比類なき力を持っていたはずなのに。
わからない。断定はできない。しかし、可能性は大いにある。勅使河原の顔は大嫌いな研究者の顔だった。それだけはしっかりと覚えている。
「何か証拠とかは出たのか?」
「いんや。俺みたいな若い淫魔には限度があるし、下手こいて捕まったりしたらたまったもんじゃない。もっと案然なところで情報を集めるよ」
肩をすくめ、レイは大仰にため息をつく。
「捕まらないようにな。大体の羊飼いはろくでもねえよ」
俺はたまたま運が良かっただけだ。いや、もう十分不運に見舞われてやっと夏輝に拾われただけか。
俺の言葉にレイは目を細める。まるでロセみたいに。
「だろうな。肝に銘じておくよ」
ロセのようないやらしさはないが、未成熟な色気が目に毒かもしれない。
そのままレイは屋上の策の上に登る。
「それじゃ、そろそろお暇するぜ。お前の待ち人も来たみたいだし」
レイがそう言うのとほぼ同時に、屋上に誰かが着地する。
「ラテア!」
「んぇ!?」
その誰かはすさまじい勢いでこちらに走りこむと同時に思いっきり俺の身体を抱きしめる。
痛い。身体がみしみし言っている。こいつ、こんな馬鹿力だっけ?それでも嫌な気分ではなくて、その誰かー夏輝にされるがままになっている。
「あーあ。お熱いこと。んじゃ俺はずらかるぜ。地球人と好き好んで話す趣味もないし。じゃあな」
そのままレイは地上に向かって飛び降りる。淫魔は空を飛べるらしいし、大丈夫なんだろう。それより。
「……礼を言う前に行っちまった」
『嵐みたいな子だったわねえ。びっくりしたけど。エデン人だなんて』
俺の言葉にトロンもまた感想を述べる。そういえば電話番号も貰い損ねていた。
「えっと、彼は?」
「通りすがりのエデン人。らしい。俺のことをちょっと助けてくれたのと、情報くれた。正体は不明だけど、悪いやつじゃなさそう……?多分」
出会った状況が状況だけに、俺はあいつのことを怪しみはするけれど敵かもしれないとまでは認識できなかった。それに、淫魔だし。
まあ、それはいいんだ。それよりも俺は言わなきゃいけないこと、優先するべき人間がいる。
「それより、その……ごめん。後迎えに来てくれてありがと、な」
温かい。さっきまでの心細さが嘘みたいに今俺は安堵していた。少しだけ掠れた俺の声に夏輝はゆっくりと身体を離す。微笑みながら俺の頭を撫でた。
「ううん。大丈夫だよ。瑞雪さんにも連絡は入れてあるし。やせ我慢するくらいなら最初から無理って言っておけって怒られちゃったけど。さ、帰ろう」
「ん」
大人しくされるがままになり、俺は夏輝の言葉に頷く。喉奥からごろごろと唸り声ではないリラックスした音が漏れる。
もう何でもいいや。病院なんてやっぱり大嫌いだ。それほどまでに今幸せだったし、安心した。
『ラテアご飯も食べてないのよ!ちゃんと帰ったら食べないとね』
トロンもまたいつもの調子を取り戻す。
「ならカフェに寄って帰ろうか。八潮さんも心配してたしね」
二人して屋上から軽快に飛び降りる。地上階は五階しかなく、やっぱり地下がそれ以上にあるのはおかしいはずだった。
夜風が心地いい。やはり自由は最高だった。もう二度とあの頃には戻りたくない。
半歩先を行く夏輝の背中を見ながら俺はひっそりとそう感じていた。
屋上まではレイの先導と俺の五感のおかげで難なくたどり着くことが出来た。
青い月と黄色い月。遥か遠き故郷エデンを見ながら俺たちはひっそりと話している。
地上を見ればさっきよりも確実に捜索の人数が増えていた。中には俺を地下に連れていこうとした時にいた屈強そうな医者たちもいる。
道中の監視カメラはマナを送るとトロンが少しの間何とかしてくれた。流石電霊である。後で一緒に怒られてねとは言われたけれど。
一息ついたところで気になっていた話を切り出す。
「うん。まあ、確かな情報じゃないし噂程度に聞いただけなんだけどな。この病院で時々行方不明者が出てるんだって。地球人じゃなくてエデン人のね。何をしてるとかはさっぱりわからないけど、これが本当だったらきな臭いじゃん?こここの地下はやたらと階数多いし。普通のエレベーターからは地下には行けないのもおかしいだろ。霊安室とかだったらまだわかるけど、そんな階数いらないし。その噂を確かめにここに来たんだよ」
もし、あのまま我慢できていたら俺は今頃どうなっていたのだろうか。
レイの言葉が正しいとは限らない。しかし、今日起こったことのせいでそれが嘘だとも言い切れなかった。
なにより。
(……瑞雪は竜を捕獲しておかしくした奴がいるはずだって言ってたな。御絡流の会の奴らじゃない、資金があって大規模な組織。確かにここなら……でもここってそもそも御絡流の会と提携してるんだよな。瑞雪に報告しないと)
グリーゾス。哀れな竜だった。本当は自由に空を飛び、誰にも束縛されることなどない比類なき力を持っていたはずなのに。
わからない。断定はできない。しかし、可能性は大いにある。勅使河原の顔は大嫌いな研究者の顔だった。それだけはしっかりと覚えている。
「何か証拠とかは出たのか?」
「いんや。俺みたいな若い淫魔には限度があるし、下手こいて捕まったりしたらたまったもんじゃない。もっと案然なところで情報を集めるよ」
肩をすくめ、レイは大仰にため息をつく。
「捕まらないようにな。大体の羊飼いはろくでもねえよ」
俺はたまたま運が良かっただけだ。いや、もう十分不運に見舞われてやっと夏輝に拾われただけか。
俺の言葉にレイは目を細める。まるでロセみたいに。
「だろうな。肝に銘じておくよ」
ロセのようないやらしさはないが、未成熟な色気が目に毒かもしれない。
そのままレイは屋上の策の上に登る。
「それじゃ、そろそろお暇するぜ。お前の待ち人も来たみたいだし」
レイがそう言うのとほぼ同時に、屋上に誰かが着地する。
「ラテア!」
「んぇ!?」
その誰かはすさまじい勢いでこちらに走りこむと同時に思いっきり俺の身体を抱きしめる。
痛い。身体がみしみし言っている。こいつ、こんな馬鹿力だっけ?それでも嫌な気分ではなくて、その誰かー夏輝にされるがままになっている。
「あーあ。お熱いこと。んじゃ俺はずらかるぜ。地球人と好き好んで話す趣味もないし。じゃあな」
そのままレイは地上に向かって飛び降りる。淫魔は空を飛べるらしいし、大丈夫なんだろう。それより。
「……礼を言う前に行っちまった」
『嵐みたいな子だったわねえ。びっくりしたけど。エデン人だなんて』
俺の言葉にトロンもまた感想を述べる。そういえば電話番号も貰い損ねていた。
「えっと、彼は?」
「通りすがりのエデン人。らしい。俺のことをちょっと助けてくれたのと、情報くれた。正体は不明だけど、悪いやつじゃなさそう……?多分」
出会った状況が状況だけに、俺はあいつのことを怪しみはするけれど敵かもしれないとまでは認識できなかった。それに、淫魔だし。
まあ、それはいいんだ。それよりも俺は言わなきゃいけないこと、優先するべき人間がいる。
「それより、その……ごめん。後迎えに来てくれてありがと、な」
温かい。さっきまでの心細さが嘘みたいに今俺は安堵していた。少しだけ掠れた俺の声に夏輝はゆっくりと身体を離す。微笑みながら俺の頭を撫でた。
「ううん。大丈夫だよ。瑞雪さんにも連絡は入れてあるし。やせ我慢するくらいなら最初から無理って言っておけって怒られちゃったけど。さ、帰ろう」
「ん」
大人しくされるがままになり、俺は夏輝の言葉に頷く。喉奥からごろごろと唸り声ではないリラックスした音が漏れる。
もう何でもいいや。病院なんてやっぱり大嫌いだ。それほどまでに今幸せだったし、安心した。
『ラテアご飯も食べてないのよ!ちゃんと帰ったら食べないとね』
トロンもまたいつもの調子を取り戻す。
「ならカフェに寄って帰ろうか。八潮さんも心配してたしね」
二人して屋上から軽快に飛び降りる。地上階は五階しかなく、やっぱり地下がそれ以上にあるのはおかしいはずだった。
夜風が心地いい。やはり自由は最高だった。もう二度とあの頃には戻りたくない。
半歩先を行く夏輝の背中を見ながら俺はひっそりとそう感じていた。
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