27 / 185
第六章
2
しおりを挟む春も終わり、季節は夏へと向かっていく。
大地が危惧しているようなことも特に起こらず、明は相変わらず接触してくるが周囲もそれ程騒がしくはなくなった。
大地に訊ねたい様々なことは、一つも訊けていない。『有名人』についてもそうだ。
タイミングを計るのがなかなか難しい。
期末テストを間近に控えた、梅雨真っ只中。
久しぶりに晴れ間が出た日の昼休み、二階テラスの端に並んで座っていた。
「ご馳走様」
大地は礼儀正しく手を合わせると、弁当箱を袋の中に仕舞った。
「大くんいつも食べるの早いよね、僕の倍はありそうなのに」
「七星はお弁当小さいよな、いつも思うけど。それで足りてる?」
「うん」
その小さいお弁当を僕はまだ半分も食べてなかった。
昔から食が細く、食べるのもゆっくりだ。
今は似た背格好の二人だけど、スポーツもやっててしっかり食べてる大地は、きっとこれからもっと大きくなっていくんだろう。
(いっくんみたいに)
隣にある顔の位置が少しずつ変わっていったあの頃を思い出す。
「美味しそうだなぁ、唐揚げ」
大地が覗き込んでくる。
あれだけ食べたのにまだ足りなそうだ。
「食べる?」
「えっいいの」
大地の顔が輝く──訳はないんだけど、それくらい明るい顔になった。しかし、すぐに言い直す。
「いや、ダメだ。それは七星が食べないと。大きくなれない」
「そう?」
大きく頷くが、それでも視線は鶏の唐揚げにあった。
僕はなんだか可笑しくなって、
「はい、どうぞ。僕、一個食べたから」
唐揚げを一つ箸で挟んで大地の口許に持って行った。
「えっ」
固まった。
(ん?)
様子が可笑しいなと思って、はっとする。
何も考えずにしたことだけど、これってやっぱり可笑しいだろうか。
「あ、ごめん。同じ箸使うの嫌だった?」
「や、そうじゃないよっ。寧ろ、うれ……あわわ。全然、そうじゃないけどっ」
何だか一人であわあわして、真っ赤になっている。
(大くん、どうしたんだろう。一人で慌てちゃって)
そう思ってたら。
「頂きますっ」
ぱっと箸から唐揚げが消えた。
「美味しいっ」
「そう? 良かった」
口の中がなくなる頃にはもう普通に戻っていた。
「ご馳走様でした」
僕も大地と同じように手を合わせる。
隣では、大地が胡座をかいて「ん~」と両腕を上げて伸びをしている。
(今……聞いてみようかな)
弁当箱を片付けながら考える。
何度目かのトライ。
「ねぇ、大くん」
「ん? 今日暑いよな~」
「うん。そうだね──あのさ」
「まだ梅雨明けてないけど、晴れた日は夏って感じ!」
僕は全然大丈夫だけど、大地は汗っかきなのか額を拭っている。
(あー。
なんか、また言えない感じにー)
38
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる