90 / 185
第十八章
1
しおりを挟むあの心臓が破れそうな程どきどきした日。
そして、僕が自分の本当の気持ちに、やっと気がついた日。
あの日から。
樹に少し変化が起きたような気がした。
何処が? と言われれば説明できない程の、気のせい? と言えばそうなのかも知れない程の。
周りから見ればいつも通りの二人。
授業で自由にグループを作る時は必ず一緒だし、クラスで樹から話し掛ける相手は僕くらいなものだし。
でも何かが違う。
前と同じようで、一瞬躊躇するような仕草が挟まるそんな感じがする。
★ ★
昼休み。
売店に寄る樹と別れて二階テラスに先に向かう。
廊下や教室は昼休みを過ごす生徒たちで賑やか。
女子の集団はかなり苦手。
横をささっと通り過ぎようとすると、
「えー! 樹くん彼女出来たの?!」
そんな声が耳に入る。
樹はもてる。通りすがりに樹の名を耳にすることも良くあることだ。
でも今日は立ち止まってしまった。
(え? いっくんに彼女?)
初耳だった。
中学の時は短期間で彼女が入れ替わっていたのを、明と大地に聞いていた。その後は──彼女ではないけど……そういう話も聞いた。
それはまだ僕ら四人の関係が始まる前で、その後はそんな話はまるでなかった。
「樹くんから聞いたわけじゃないけど。BITTER SWEETに来る女子大生が騒いでた。その彼女も女子大生だって」
見ると、その集団の中にBITTER SWEETで見掛けたことのある女子が数人混じっていた。
「あ!」
その中の一人が僕を見て声を上げた。
(わっ。見ててごめんなさいっ)
心の中で謝って、さっさとその場を去ろうとした。
「ちょっと待ってよ」
追いかけてくる。他の女子も一緒について来るのが怖い。取り敢えず言われるまま止まった。
「あんた、樹くんの友だちでしょ。たまにBITTER SWEETに来てるよね?」
「え……まぁ……」
「え~嘘でしょ。樹くんに全然合わない~」
「三組の友だちが言ってた。樹くんが唯一自分から話し掛ける男子がいるって」
一斉にわいわい言われて、『樹の彼女説』に立ち止まってしまったことを激しく後悔した。
「ねぇ、樹くんに彼女出来たってほんと?」
「え……し、知らない」
そう言うのがやっとだ。
「ほんとに?」
こくこくっと頷く。
「あんた、ほんとに友だち?」
「樹くんに纏わりついてるだけじゃないの?」
「ほんと、僕知らないから~」
たまらず逃げ出した。
後方でわいわい言ってるけど、追いかけて来る様子はなくほっとする。
(いっくんに彼女……)
その言葉をずっと反芻しながら二階のテラスに着くと、明と大地の姿が見えた。
57
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる