120 / 185
第二十ニ章
6
しおりを挟む
僕は大地と別れ、ゆっくりと歩いた。
敷地内の木々は少しずつ色づいている。この葉が散り、また蕾をつけ花開く前には、もう僕らは卒業するんだ。
(その前にまた、いっくんと……。
叶うだろうか)
門を出て、BITTER SWEETへと向かう。
コンビニの前にさし掛かると、なんとなく駐車場が騷ついているのを感じる。前に絡まれたこと、それが切っ掛けで今の状態になったことが思い出される。
そちらのほうは見ずに通り過ぎようとした。
「いつきの奴──」
(え、いっくん)
単に同じ名前の違う人のことかも知れない。
しかし、反応して見てしまった。
見てから後悔した。
数台の大型バイク。この間の時と似た雰囲気の男たちが、やっぱり駐車場で座り込んでいた。
(うわぁ。
ここのコンビニの店員さん、可哀想だなぁ)
なんて、人の心配などしている場合ではなかった。
その中の一人と目が合ってしまった。
さっと目を反らし、足早に去ろうとしたが、時既に遅し。
目の合った男が他の男たちに何か耳打ちをしているのが、目の端に映った。
そして、皆立ち上がってこちらに向かってくる姿が。
(ええ~。
まさか、でしょ。
僕、何もしてませんよ~)
「待てよ」
肩を掴まれ引き留められ、あっという間に囲まれた。
見たことない顔の筈。それともあの時にいた人もいるのだろうか。
「あの……なんでひょうか……」
怯えて戦慄いた唇から変な言葉が飛び出す。
「なんでひょうか、だって」
彼らはいっせいにげらげら笑いだす。
「僕……急いでるんで……」
そう言って、通してくれる筈もない。
「あ、やっぱりそうか──あの店で樹と一緒にいた奴だ」
(やっぱり、いっくんのことだったのか)
「ふぅん、だいぶ樹とはタイプが違うな」
「なぁ、お前。樹の友だち?」
(そうです!)
胸を張って言いたいけど今はそういう場合ではないし、そうだと言ってたら樹に迷惑が掛かりそうだ。
「知りません」
「嘘だな」
即座にそう言われた。
「お前さ、俺らと遊ぼうぜ」
「遊びません──知らない人についてっちゃダメだって、お母さんが」
(僕、何言ってるだろー)
コミュ障の僕が怖い人たちに受け答えしてる! すごい! というわけではなく、怖すぎて頭が回らず、逆に変な言葉が飛び出してしまってるだけだ。
「お母さんって、あはは、子どもかー」
またげらげら嗤う。
「いいから、こっち来いよ」
両腕を掴まれ、背中を押され、駐車場内に連れて行かれる。
(誰か助けてっ!!)
肝心な言葉は出てこない。
周りに目をやっても、見て見ぬ振りをして通り過ぎる通行人ばかり。
それは、そうだろう。
僕もきっとそうする。
僕は駐車場内に停めてあった車に押し込められた。
(今日は車もあったかー)
「あとで樹も呼んでやるから」
車にはドライバー、僕の両側に一人ずつ。残りはバイクに股がった。
(いいっっ。呼ばなくていいからっっ)
僕は半泣き状態になった。
敷地内の木々は少しずつ色づいている。この葉が散り、また蕾をつけ花開く前には、もう僕らは卒業するんだ。
(その前にまた、いっくんと……。
叶うだろうか)
門を出て、BITTER SWEETへと向かう。
コンビニの前にさし掛かると、なんとなく駐車場が騷ついているのを感じる。前に絡まれたこと、それが切っ掛けで今の状態になったことが思い出される。
そちらのほうは見ずに通り過ぎようとした。
「いつきの奴──」
(え、いっくん)
単に同じ名前の違う人のことかも知れない。
しかし、反応して見てしまった。
見てから後悔した。
数台の大型バイク。この間の時と似た雰囲気の男たちが、やっぱり駐車場で座り込んでいた。
(うわぁ。
ここのコンビニの店員さん、可哀想だなぁ)
なんて、人の心配などしている場合ではなかった。
その中の一人と目が合ってしまった。
さっと目を反らし、足早に去ろうとしたが、時既に遅し。
目の合った男が他の男たちに何か耳打ちをしているのが、目の端に映った。
そして、皆立ち上がってこちらに向かってくる姿が。
(ええ~。
まさか、でしょ。
僕、何もしてませんよ~)
「待てよ」
肩を掴まれ引き留められ、あっという間に囲まれた。
見たことない顔の筈。それともあの時にいた人もいるのだろうか。
「あの……なんでひょうか……」
怯えて戦慄いた唇から変な言葉が飛び出す。
「なんでひょうか、だって」
彼らはいっせいにげらげら笑いだす。
「僕……急いでるんで……」
そう言って、通してくれる筈もない。
「あ、やっぱりそうか──あの店で樹と一緒にいた奴だ」
(やっぱり、いっくんのことだったのか)
「ふぅん、だいぶ樹とはタイプが違うな」
「なぁ、お前。樹の友だち?」
(そうです!)
胸を張って言いたいけど今はそういう場合ではないし、そうだと言ってたら樹に迷惑が掛かりそうだ。
「知りません」
「嘘だな」
即座にそう言われた。
「お前さ、俺らと遊ぼうぜ」
「遊びません──知らない人についてっちゃダメだって、お母さんが」
(僕、何言ってるだろー)
コミュ障の僕が怖い人たちに受け答えしてる! すごい! というわけではなく、怖すぎて頭が回らず、逆に変な言葉が飛び出してしまってるだけだ。
「お母さんって、あはは、子どもかー」
またげらげら嗤う。
「いいから、こっち来いよ」
両腕を掴まれ、背中を押され、駐車場内に連れて行かれる。
(誰か助けてっ!!)
肝心な言葉は出てこない。
周りに目をやっても、見て見ぬ振りをして通り過ぎる通行人ばかり。
それは、そうだろう。
僕もきっとそうする。
僕は駐車場内に停めてあった車に押し込められた。
(今日は車もあったかー)
「あとで樹も呼んでやるから」
車にはドライバー、僕の両側に一人ずつ。残りはバイクに股がった。
(いいっっ。呼ばなくていいからっっ)
僕は半泣き状態になった。
53
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる