はじまりの朝

さくら乃

文字の大きさ
144 / 185
第二十六章

 4

しおりを挟む
 大地と明とのラインを終えてスマホを閉じる。
 

(……いっくんからは……来ないかな)


 こんな夜中だから仕方ない。
 来ない事実を突きつけられるより先に自分で完結した。


(もしかしたら……明日の朝とかにくるかも)


 そう思いながら、部屋の電気を消した。


 
 朝起きて一番にどきどきしながらスマホを見る。
 しかし、なんの通知も来ていなかった。
「まだ、寝てるのかもね」
 ベッドの隅に寝ているティラミスに向かって言い、ふうと小さく息を吐く。
「今日は夏期講習あるのかな」
 高校では夏期講習が何教科か行われている。今までは一度も出たことはなかったはずだが、今年は申し込んでいるようだ。
 そういう僕はバイトをするわけでもなく、夏休みの課題をしながらほとんど家で過ごしていた。
 大学に入学して、幾つか同じ教科を履修している何人かと話すようになったが、まだ友人と呼べるほどではない。サークルにも入っていなかった。


(バイトでも……しようかな。でも、僕に出来ることってなに?)


 未だに人見知りな僕はそんなとこでも尻込みしてしまう。


 あれこれ考えていたら、七時近くになっていた。母と姉は仕事だ。何処に行く予定はなくても朝食だけは早めに食べなければ迷惑になる。
 急いで着替えていると、ベッドの上でピコンと通知音が鳴った。
 もしかしてと期待して慌ててラインを開く。


『ナナ、お誕生日おめでとう』
『あとで玄関の前見て』
『俺、今日学校だから』


 閉じるのもそこそこに階段を駆け下りる。
 姉はもう朝食を終え出掛けようとしているところだった。
「おはよー、どうしたの? 慌てて」
「おはよう。うん、ちょっと」 
 バタバタと外に出ると、玄関の前に。

「それは?」
 外に置いてあったものを両手で抱えて中に入る。
 姉がちょうど靴を履こうとしているところだった。
「あ、うん」
 何故か答えるのに躊躇してたら、さっさと靴を履いて「行ってきまーす」と出て行ってしまった。
「可愛いお花ねぇ、どうしたの?」
 僕が抱えていたのは。
 丸いフォルムの白い鉢に植えられた、白い小さな花をたくさんつけた植物だった。
『ユーフォルビア・ダイアモンドフロスト』
 そう書かれた紙が鉢に刺さっている。
 初めて聞く名前。初めて見る花だった。
「うん。いっくんから誕生日プレゼント」
「へぇ」
 と母が感心したような声を漏らす。
「さすが、イケメンはやることが違う」
「だねぇ~」
 と笑って同意したけど。


(僕にお花って似合わなくない?)


 朝食を済ませ母を見送ると、スマホを開いた。


『可愛いお花をありがとう』
『大事にするね』


「僕にお花って……」そう送ろうとして止めた。


(こんな、お花知ってるなんて。女の子にもあげたことあるのかな……)


 言葉だけでも良かったのにプレゼントを用意してくれたのは勿論すごく嬉しい。それなのに、そのプレゼントを見て溜息をいてしまう自分が嫌だった。



 僕の誕生日の翌日が樹の誕生日。
 本当は零時を過ぎて一番に『おめでとう』を言いたかった。
 でも。


(彼女じゃあるまいし。こんな時間迷惑だよね)


 樹がそうしたように、僕も朝になってからメッセージを送った。
 


『いっくん、お誕生日おめでとう』
『玄関の前見てね』

『サンキュー、ナナ』

 
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

処理中です...