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番外編〜はじまりの裏側で〜
エピソード12 おまけ〜茶屋のひとりごと
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正月三日。
『BITTER SWEET』は立地も良く正月から大繁盛。昼下がりにやっとピークが過ぎ、空いたテーブルのセッティングに回っていた。
「ただいま帰りました」
買い出しに行って貰っていたアルバイトの城河樹が何故か表のドアから入って来る。いつもなら裏口から入って来るのに。素早く目を走らせると彼の後ろに何やら小さくて可愛い子がついていた。
樹がでか過ぎて小さく見えるけど、たぶん同級生だろう。
「お帰り。けっこうゆっくりだったな」
なんとなく理由は把握しながらも揶揄ってみる。予想通り理由はその子にあって、謝ろうとしているところを樹が遮った。
「お客様連れてきたから、それで許して貰えませんか」
(おおっ思わぬ反応)
僕は面白がって更に揶揄う。
「お客様? 何? 同伴か」
僕はにやにやした。一緒に来た子は僕の言った意味がわからないらしい。
(もしかして、超お坊ちゃまとか?)
代わりに樹がめっちゃ怖い顔をしているかと思ったら、
「高校生に言う言葉か」
吐き捨てるように言った。
(これはこれは……)
すごく珍しいものを見たような気がする。
樹は僕の甥金森明の友人で長身で酷くクールなイケメンだ。クールというか常に無表情? お客様商売でこれはどうかと思うがそのクールさが受けて、夏休みからのバイトだけどあっという間にファンが出来てしまった。女子高生、女子大生のお客様が急に増えたという訳だ。
最近ではなんとなく軽く笑ってるかなーって感じの表情はするが、僕らスタッフには相変わらずの無表情振りだった。
その子をとりあえずカウンターに座らせて樹は一旦姿を消した。両隣に誰もいない場所に座らせたのだろう。
(わはは。わかりやすっ。でも僕ちゃんが目の前にいることこをお忘れなく)
とりあえず注文のオレンジジュースを出す。その子の顔をまじまじ見ると。
(あ、そうだ。クリスマスの時に来ていた子だな。そう言えば、あの時も樹くん、いつもと違う感じだったな……しかし、あの時は避けてたフシがあったけど……)
不躾に見過ぎたろうか。彼は不安げにこちらをちらちらと見ていた。
「きみ、クリスマスの時に来ていた、明の友だちでしょ」
安心させるように声を掛ける。そうすると思った通り少しほっとした顔になった。
(この子なんだかいい子そうだな)
「もう一人のコもそうだけど、きみみたいに普通の子があいつの友だちってのは珍しいよ」
ちょっと語りたくなった。
明は小さな頃から見目も良く頭も良く、器用でなんでも出来てしまう子どもだった。KANAMORIフーズの跡取りとして期待を一心に背負っていた。
しかしある日何故だか――彼にもいろいろと思うところがあったのだろう――突然何もかも放りだした。
それが小六の頃。中学に上がってからは髪を染め悪い仲間とつるみ始めた。早々に親は彼を見捨て弟のほうに気をかけるようになった。
僕が明を擁護することを言えば、
「メイさんはいい人ですよ」
と言ってくれた。心底そう思ってくれているのがわかる。
(やっぱいい子だな。明が気に入ってるのもわかるよ。まぁアイツの本命はもう一人の子みたいだけど)
明が樹の『熱さ』に憧れて振り向いて貰うまで粘ったという話をすると少し表情が曇った。
(あり? これは?)
そうこうしているうちに樹が戻って来て、僕はめちゃ睨まれた。
「何やってんすか。ナナ、相手にしなくていいから」
思い切り牽制された。
(あーうんうん、なるほどね)
僕はいろいろと納得した。
僕は明を年の離れた弟のように思っているし、樹のことも今では同じように思っている。
素直に自分を出せない不器用な二人が、素直になれる相手ができればいい。
(それが男の子だったとしても、僕は全然構わないよ。二人が幸せになれればね)
『BITTER SWEET』は立地も良く正月から大繁盛。昼下がりにやっとピークが過ぎ、空いたテーブルのセッティングに回っていた。
「ただいま帰りました」
買い出しに行って貰っていたアルバイトの城河樹が何故か表のドアから入って来る。いつもなら裏口から入って来るのに。素早く目を走らせると彼の後ろに何やら小さくて可愛い子がついていた。
樹がでか過ぎて小さく見えるけど、たぶん同級生だろう。
「お帰り。けっこうゆっくりだったな」
なんとなく理由は把握しながらも揶揄ってみる。予想通り理由はその子にあって、謝ろうとしているところを樹が遮った。
「お客様連れてきたから、それで許して貰えませんか」
(おおっ思わぬ反応)
僕は面白がって更に揶揄う。
「お客様? 何? 同伴か」
僕はにやにやした。一緒に来た子は僕の言った意味がわからないらしい。
(もしかして、超お坊ちゃまとか?)
代わりに樹がめっちゃ怖い顔をしているかと思ったら、
「高校生に言う言葉か」
吐き捨てるように言った。
(これはこれは……)
すごく珍しいものを見たような気がする。
樹は僕の甥金森明の友人で長身で酷くクールなイケメンだ。クールというか常に無表情? お客様商売でこれはどうかと思うがそのクールさが受けて、夏休みからのバイトだけどあっという間にファンが出来てしまった。女子高生、女子大生のお客様が急に増えたという訳だ。
最近ではなんとなく軽く笑ってるかなーって感じの表情はするが、僕らスタッフには相変わらずの無表情振りだった。
その子をとりあえずカウンターに座らせて樹は一旦姿を消した。両隣に誰もいない場所に座らせたのだろう。
(わはは。わかりやすっ。でも僕ちゃんが目の前にいることこをお忘れなく)
とりあえず注文のオレンジジュースを出す。その子の顔をまじまじ見ると。
(あ、そうだ。クリスマスの時に来ていた子だな。そう言えば、あの時も樹くん、いつもと違う感じだったな……しかし、あの時は避けてたフシがあったけど……)
不躾に見過ぎたろうか。彼は不安げにこちらをちらちらと見ていた。
「きみ、クリスマスの時に来ていた、明の友だちでしょ」
安心させるように声を掛ける。そうすると思った通り少しほっとした顔になった。
(この子なんだかいい子そうだな)
「もう一人のコもそうだけど、きみみたいに普通の子があいつの友だちってのは珍しいよ」
ちょっと語りたくなった。
明は小さな頃から見目も良く頭も良く、器用でなんでも出来てしまう子どもだった。KANAMORIフーズの跡取りとして期待を一心に背負っていた。
しかしある日何故だか――彼にもいろいろと思うところがあったのだろう――突然何もかも放りだした。
それが小六の頃。中学に上がってからは髪を染め悪い仲間とつるみ始めた。早々に親は彼を見捨て弟のほうに気をかけるようになった。
僕が明を擁護することを言えば、
「メイさんはいい人ですよ」
と言ってくれた。心底そう思ってくれているのがわかる。
(やっぱいい子だな。明が気に入ってるのもわかるよ。まぁアイツの本命はもう一人の子みたいだけど)
明が樹の『熱さ』に憧れて振り向いて貰うまで粘ったという話をすると少し表情が曇った。
(あり? これは?)
そうこうしているうちに樹が戻って来て、僕はめちゃ睨まれた。
「何やってんすか。ナナ、相手にしなくていいから」
思い切り牽制された。
(あーうんうん、なるほどね)
僕はいろいろと納得した。
僕は明を年の離れた弟のように思っているし、樹のことも今では同じように思っている。
素直に自分を出せない不器用な二人が、素直になれる相手ができればいい。
(それが男の子だったとしても、僕は全然構わないよ。二人が幸せになれればね)
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