【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

文字の大きさ
56 / 202
第6章:救世主

第5話:不遜な救世主

しおりを挟む
「あー、我輩、とんでもなく緊急でもないどうでも良い用事を思い出した。こんな面倒なことに巻き込まれたくねえ」

 さすがは『怠惰』の権現様であるベリアルだ。今のこの事態が非常に面倒くさいことに繋がるのは火を見るよりも明らかであった。最近、この聖地:エルハザムに誕生した救世主メシアは『原理主義者』であり、自分の考え以外は到底受け入れぬ『正義の使者』であることが、この串刺しの死体群の首にかけられた木製の札だけでわかってしまったのである。

 どこかへと去ろうとするベリアルの襟元をアンドレイ=ラプソティが右手で掴み、逃げれないようにする。ベリアルはトホホ……とため息をつきつつ、死なばもろともとばかりに同行を再開するのであった。

 アンドレイ=ラプソティたちが聖地:エルハザムの中心部にあるイニシエの救世主メシアが埋葬されている地へと向かう。その地には霊廟というよりかは大聖堂と呼ぶほうがふさわしい建物が建てられていた。しかし、その大聖堂の前広場には1000を超える串刺しされたニンゲンたちが設置されており、アンドレイ=ラプソティの眉間には不快感を示す深いシワが何本も浮き出ることになる。

「チュッチュッチュ。これはいささかやりすぎでッチュウね。数の過多がどうとかではなく、串刺しにした後、さらにその死体に鞭を打っているのでッチュウ」

「チッ! 悪魔の我輩でもこれは好かんな。死体を嬲るこの行為こそが異端だろ……」

 古今東西、戦争の敗者がその死体を辱められることはある。だが、このように兵士でも何でもない一般人であったはずの者たちが、ここまでされる言われなど無いはずであった。だが、これをさせているのはどう考えても最近、登場した救世主メシアである。聖地を血で汚す行為自体、許されざる行為であるのに、異端であるからといって、ここまでして良いわけがない。

「あのぅ……。お怒りのところ申し訳ないのデスガ……。異端とかいうのがよくわかりまセン」

 アリス=アンジェラのこの一言に、一同はがっくりと肩を落としてしまうことになる。ベリアルはアンドレイ=ラプソティに対して、ちゃんと教えておけよっ! とつい悪態をついてしまう。しかしながら、アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラの教師でもなんでもない。それゆえに彼女の補佐役であるコッシロー=ネヅにそのままベリアルの言葉を渡す。

「自分のせいなんでッチュウ? あまりにも基本的で常識的なことなので、アリスちゃんも知っているとばかり思っていたのでッチュウ」

「そういう教育だから、アリス嬢ちゃんは常識的なことが抜けているんだよ。しゃーねえ。異端について、道すがら、ちょっくら解説してやるか」

 大聖堂に続く大きな街道を進みながら、アリス=アンジェラに対して、勉強会を開く2人と1匹であった。アリス=アンジェラはふむふむなるほどなるほどと首級くびをこっくりこっくりと縦に振りまくる。アンドレイ=ラプソティとベリアルは本当にわかっているのか? と疑問を持つことになるが、救世主メシアとの邂逅が近いために、そこは余り気にしないことにした。

 この世界のTOPとして、創造主:Y.O.N.Nが君臨している。それは誰しもが認める事実である。しかしながら、創造主:Y.O.N.Nはたくさんの神や天使、そして、皮肉的なことに同時に悪魔をも生み出した。

 年月が過ぎるほどに、創造主:Y.O.N.Nを『主』としてとらえずに、神たちを信奉する者たちが現れ始める。創造主:Y.O.N.N以外に熱狂的に信者を獲得しているのが始祖神:S.N.O.Jである。始祖神とはその言葉通りに創造主:Y.O.N.Nが最初に創った『神』である。しかしながら、その始祖神:S.N.O.Jは地上界で信奉するのはご法度となっている。

 それもそうだろう。今や、始祖神:S.N.O.Jは『悪魔たちの主神』なのだから。『第1次天魔大戦』において、堕天したのは天使だけではない。創造主:Y.O.N.Nに創られた神々もまた、堕天したのである。その神々は悪魔界、ようは『冥界の神々』となっている。だからこそ、嫌な意味で均衡が取れてしまっていて、天界と悪魔界の戦いに決着がつかないのである。

 しかしながら、今、救世主メシアが『異端』としている者たちは『亜人』と呼ばれる者ばかりであった。串刺しとなっている者たちの中に、ヒューマノイド、エルフ、ドワーフと言った『純血種』は見受けられない。半猫半人ハーフ・ダ・ニャン半犬半人ハーフ・ダ・ワンといった『混ざり者』ばかりなのである。

 そして、亜人たちは亜人たちで信奉する神が居る。その神の名は『ゼクロス=マークス』である。彼は戦神であり、彼のいで立ちもまた半狼半人ハーフ・ダ・ウルフであった。その姿は亜人たちにとっては親しみやすく、かの戦神を信奉する亜人たちは多かった。

 しかしながら、それでも便宜上、TOPに君臨するのは創造主:Y.O.N.Nなのだ。その創造主:Y.O.N.Nの下位に存在する神を信奉することは、すなわち、創造主:Y.O.N.Nを信奉することと同じはずなのだ。

 だが、ここで問題になってくるのが『原理主義者』である。原理主義者たちは根本的に創造主:Y.O.N.Nしか認めないのである。創造主と神は別物であり、神を崇め奉るのは創造主をバカにしていると捉えているのである。だからこそ、亜人たちは排斥しなければならないというとんでも理論なのであった。

「というわけで、こんなことをする救世主メシアは要らないのデス! シャイニング・ビンタなのデス!」

「さっすが、アリス嬢ちゃん。そこに痺れる憧れるぜ……」

「ちょっと、コッシロー殿っ! アリス殿を止めてくださいっ!」

「うわあ……。普通、悪役の口上はきっちり最後まで聞くものでッチュウよね? 救世主メシアが大聖堂の壁をぶち破りながら、外に放り出されたでッチュウよ!?」

 大聖堂の中にある謁見の間の椅子に足を組みながら座っている人物が居た。その者は天界の十三司徒であるアンドレイ=ラプソティを見るなり、クックックッ……と物思わせぶりに微笑してみせる。ひじ掛けに右ひじをつけ、その右手で顔を支えていたのである。その不遜すぎる態度にアンドレイ=ラプソティも、こいつはぶん殴ってやらなければダメだという想いが強かった。

 だが、アンドレイ=ラプソティたちが何かの動きをする前に、椅子に座る救世主メシアが左手で静止しろという所作を取ってきた。アンドレイ=ラプソティたちはその不意打ちすぎる所作で足をその場で止めてしまう。救世主メシアは口の端を悪魔的に歪めながら、口上を語り出す。だが、自分の名前を言った辺りで、アンドレイ=ラプソティたちの中で唯一、足を止めていなかった人物が、その救世主メシアの横っ面をシャイニング・ビンタでぶっ叩くという大胆不敵すぎる行動に出たのであった。

「シュージュ様ァ! 貴様、あの御方が救世主メシア様だと知っての狼藉かぶべええええええ!?」

「ふう。シャイニング・ビンタ再びなのデス! 汚物は聖地から飛んでいけなのデス!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...