【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第15章:ダン=クゥガー

第1話:運命の出会い

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 レオン=アレクサンダー帝は神聖マケドナルドの首都:ヴァルハラントの中心に建てられている宮殿はそのままにしていたが、後宮は拡張工事をおこなっていた。それは、レオン=アレクサンダー帝の性欲の強さもあることながら、その拡張工事を是として捉えたのが、彼の右腕であるアンドレイ=ラプソティであった。

 『英雄、色を好む』という言葉があるが、これは征服王ともなれば、誰しもが陥る生理的現象とも言えた。その潰えぬ野望は、股間のおちんこさんを暴虐なモノに変えるのだ。だからこそ、このエイコー大陸において、レオン=アレクサンダー帝だけが、後宮を拡張工事させたわけではない。

 しかしながら、それでもアンドレイ=ラプソティはレオン=アレクサンダー帝に帝位継承権を持つ者だけは、いたずらに変えるなと忠言を繰り返した。レオン=アレクサンダー自身は自分はまだまだ生きるつもりであったために、現在、3歳児に満たないミハエル=アレクサンダーに第1継承権を与えても問題無いと思っていた。

 だが、その根本を崩してしまったのが片翼の天使であるアリス=アンジェラである。アリス=アンジェラは創造主:Y.O.N.N様の命令に忠実に従っただけである。そして、神聖マケドナルド帝国それ自体の存亡に関わる、ミハエル=アレクサンダーの命を奪おうと後宮に侵入したダン=クゥガーは彼を真っ先に探したのは当然の帰結でもあった。

ちんはお前の命をいたずらに奪おうとは思わない。だから、正直に答えろ。ミハエル=アレクサンダーはどこにいる……?」

「ふんっ! いくら正妻の座を女狐に奪われたと言っても、恋敵の息子の居場所を吐くほど、わたくしは地に堕ちていませんことよっ!」

「クククッ! さすがはレオン=アレクサンダー帝が最初に寵愛した女なだけはある……。そういう女を組み伏せることがどれほどに、おとこを昂らせるかを知らぬのかっ!?」

 ダン=クゥガーは後宮に侵入するなり、手始めにレオン=アレクサンダーのめかけと、その彼女たちと一緒にいた皇子たちを十数人ほど斬り捨てた。レオン=アレクサンダー帝のめかけたちは後宮の中を蜘蛛の子を散らすように逃げ回ることになる。だが、ダン=クゥガーはその彼女たちを追いまわすことはせずに、まるで後宮のあるじが自分自身だと言わんばかりの気配を身体から発しながら、堂々と闊歩し続けたのである。

 そんな我が物顔のダン=クゥガーの歩を止めるべく、気丈に振る舞いながら、立ちふさがったのが、レオン=アレクサンダー帝の元・正妻であるフローラ=アレクサンダーであった。彼女は夫のレオン=アレクサンダー帝によって、正妻の座をはく奪されたゆえに夫を憎んでいたが、本気で死んでほしいとは願っていなかった。

 男が新しい畳と若い妻を喜ぶのは当然であるということは、フローラ=アレクサンダーも重々承知だったのだ。フローラ=アレクサンダーの父親はレオン=アレクサンダー帝の父王と個人的な交友を結んでいたマケドナルド王国の一貴族である。そして、父王は長男であるレオン=アレクサンダーに王位を継がせる気は無かったが、それでも王族のひとりとして、妻を与えるという最低限の仕事はしてみせた。

 レオン=アレクサンダー帝はフローラとの結婚を複雑な気持ちで捉えていた。確かに彼女とは幼馴染であり、良き相談役であり、さらには男女間における恋愛感情を超越した仲でもあった。しかしながら、そういう仲だからこそ、レオン=アレクサンダー帝は、心の底からフローラを愛することが出来なかったのだ。

 レオン=アレクサンダー帝とフローラ=アレクサンダーは夫婦になった後、彼らの間に息子がひとり出来ることになるが、レオン=アレクサンダー帝はその息子に皇位継承権を与えることを渋ったのである。真に心から愛する女性との間に産まれた子供にこそ、皇位継承権を与えたいと常々思っていたレオン=アレクサンダー帝であった。

 そして、悩めるレオン=アレクサンダー帝の前に現れたのが、どこの馬の骨ともわからぬ美少女であった。彼女は旅の一座に所属する舞姫であり、その名はトモエ=アポローネであった。レオン=アレクサンダーが神聖ローマニアン帝国を滅ぼし、神聖マケドナルド帝国と名を改めた時に、盛大なる祭りが、この帝国の首都であるヴァルハラントでおこなわれることになった。

 その時、たまたまタイミング良く、その旅の一座がヴァルハラントに到着していた。そして、その時点で16歳にしか満たないトモエ=アポローネは祭りの余興として、ちょっとした広場で舞いを披露したのである。

 レオン=アレクサンダー帝は身分を隠し、一貴族程度の服装で、新しい世の中が到来したと喜ぶ市民たちに混ざって、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎを市井しせいで繰り広げていたのである。しかしながら、彼と彼女の運命の歯車はがっちりと合わさる。旅の一座に所属するだけの下賤な出自を持つトモエ=アポローネと、神聖ローマニア帝国を滅ぼした征服王が顔を見合わせることなど、この一回きりになるはずであった。

 だが、イタズラなキューピッドがレオン=アレクサンダー帝とトモエ=アポローネの左胸に、愛の矢を命中させたことは間違いないであろう。トモエ=アポローネはレオン=アレクサンダー帝と眼が合うや否や、舞いを中断し、自分の舞いを恥だと感じた途端、その場から逃げ出すように人込みの中へと消えていく。

 レオン=アレクサンダー帝はトモエ=アポローネと眼が合ったと同時に、右手に持っていた麦酒ビールが注がれていた木製のジョッキを地面へと落としてしまう。そして、その空いた右手を恐る恐るトモエ=アポローネの方へと近づけていく。だが、そうされたトモエ=アポローネは舞姫衣装の右の袖で真っ赤に染まってしまった顔を覆い隠しつつ、どこかへと走り去っていく。

 トモエ=アポローネはボロボロと大粒の涙を零しながら、人混みをかき分けながら走り続けた。何故に自分は泣いているのかと自問自答しながらだ。生へそ、生にのうで、生ふとももがが見えるような舞姫衣装で、男たちのいやらしい視線を散々に受けてきていたトモエ=アポローネは、産まれて初めて、自分の恰好が破廉恥だと感じてしまったのだ。

 そして、それを彼女に自覚させた男が、彼女を逃してはいけないとばかりに、人混みの中へと飛び込んでくる。トモエ=アポローネはどうにかして、自分を追ってくる男から逃げきろうとした。しかし、彼のゴツゴツとした右手がついにトモエ=アポローネの肩を鷲掴みにする。そうされたことで、トモエ=アポローネはこれ以上ない大粒の涙を紫水晶アメジストのように輝く両目から溢れ出させるのであった。

「ねえ……。貴方は何故、ロミオなの?」

「ああ、俺のジュリエット……。俺はどうしてロミオなのだろうか?」
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