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第17章:ミハエル救出
第2話:喧嘩するほど仲が良い
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結局のところ、アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティとトモエ=アレクサンダー親子との間にある微妙すぎる確執に気づくことは出来なかった。だが、それでも、アンドレイ=ラプソティが旧マケドナルド王国に向かうつもりなのは確かである。アリス=アンジェラは2人の関係に何かあるのカナ? という軽い認識は持ちつつも、それ以上には深い興味も沸かず、この話は自然と霧散していくのであった。
そんなアンドレイ=ラプソティたちの眼下には、ようやく旧マケドナルド王国の領地が見え始めることになる。周囲を山に囲まれた大きな盆地となっているその地方は今は別の名が与えらえていた。
「旧マケドナルド王国。今の名はレオンハイマートオート。意味はそのまま『レオン=アレクサンダーの産まれ育った土地』です。ちなみにレオンは旧・神聖ローマニアン帝国をレオングラードと改名しようとしました」
「それは赤い悪魔が喜びそうな名前だな。なんで、止めたんだよ」
「悪魔が喜びそうだから、止めたんです」
ベリアルはやれやれと両腕を広げてみせる。神聖マケドナルドン帝国という名は、そのまま過ぎるのは否めないが、せっかく地上に大帝国を築いてやろうという気概を持つ男ならば、アンドレイ=ラプソティの言いを蹴っ飛ばせば良いと思ってしまう。
しかしながら、アンドレイ=ラプソティの続く解説で、ますます呆れてモノが言えないと言った感じになってしまう。
「とりあえず、神聖ってつけておけば、創造主:Y.O.N.N様が喜びそうですモノネ」
「そうでッチュウね。『善』の象徴である創造主:Y.O.N.N様は『神聖』とか『紳士淑女』とか、キレイモノ好きでッチュウから」
「ヒトの世は清濁混合してんだ。ちょっとくらいハメを外したところで、あの創造主ならば、案外、受け入れてくれるかもな」
「そう……かもしれませんね。でも、やっぱり、赤い悪魔が喜びそうなのは避けてしまいましたね」
新しい君主が旧・神聖ローマニアン帝国の跡地を手にいれた際に、新国名については色々と議論がなされたが、結局なところ、無難なところに落ち着く辺りがニンゲンらしいとも言える。しかしながら、旧マケドナルド王国を『レオンハイマートオート』と改名しているのだから、レオン=アレクサンダーは自分の名を冠した帝国名へと変えたかったはずである。
だが、レオン=アレクサンダーの不幸と言えば、クソ生真面目な天使の中でも、トップクラスに君臨する『天界の十三司徒』と呼ばれる人物を自分の右腕にしていたことであろう。ベリアルはレオン=アレクサンダーに対して、ざまあねえなあ……というけなしと同時に同情も含んだ感想を抱くことになる。
とにもかくにも、アンドレイ=ラプソティたちの眼下には北は険しい山々。西は海。そして南にはなだらかではあるが丘陵地帯が広がる旧マケドナルド王国の玄関口近くにまでやってきていた。神聖マケドナルド帝国の首都から北西に数百キュロミャートルほど飛んできたわけだが、ここで地上へ降りようと提案してきたのが、アンドレイ=ラプソティであった。
「ん? このまま火の玉特急が如くに、レオンハイマートオートだっけか? ってところの首都に向かうんじゃねえのか?」
「それこそ、悪魔皇:サタンが張り巡らした蜘蛛の巣に、自分から絡め取られに行くのと同義ですよ」
「ああ、そりゃそうだな。ウチの御大将はともかくとして、その傍らには悪魔将軍:ルシフェルが居たんだっけか。そりゃ御明察だわ」
ベリアルは七大悪魔のひとりである。悪魔は基本的には自由奔放であるが、その中においては、まだ生真面目な部類に入る悪魔将軍:ルシフェルの存在を思い出すに至る。3度に渡る天魔大戦において、悪魔側の作戦の基本部分を考えていたのは悪魔将軍:ルシフェルである。逆に、計画性という範疇からおおいにはみ出している悪魔たちにとって、指針を示す役割を担っていたのは、悪魔将軍:ルシフェルただひとりであったとも言える。
(う~~~ん。今思い出しても、ルシフェルが『憤怒』の象徴になっちまった理由は、御大将も含めて、好き勝手やってたからなあ。あいつが堕天してくれなきゃ、3度も天界と引き分けなんか出来なかっただろうな)
ベリアルはあの当時のことを懐かしく思いながら、地上へと向かって降りていく。兎にも角にも、ルシフェルは苦労性である。ルシフェルが悪魔将軍らしく、大きな意味での戦略を考えるのだが、それに茶々を入れるまくるのが他の七大悪魔たちである。自分はこう戦いたいからこそ、ここに配置させろとか、あの大天使とサシで殺り合いたいから、舞台を準備しろとか無茶振りも良い所であった。
「何か嬉しそうな顔をしているのデス。やはり、仲間に会えるのは楽しみなのデスカ?」
「うん? そんな浮かない顔して。どうしたんだ? アリス嬢ちゃん」
「いえ。悪魔皇:サタンと悪魔将軍:ルシフェルという二大巨頭が、この先で待っているのデス。ベリアルはあちら側についてしまうのかと思うと……」
憂い顔になっているアリス=アンジェラの頭をわしわしと右手で撫でるベリアルであった。アリス=アンジェラはムッとした表情になるが、ベリアルは穏やかな表情で、これまた朗らかな声で、アリス=アンジェラにこう告げる。
「心配すんなって。アリス嬢ちゃんの敵に回ることは無い。なんたって、サタンは我輩に自由に振る舞えと言っていたんだからな」
「そうなんデス? でも、このままだと、ベリアルはサタンやルシフェルと戦うことになってしまうのデスヨ?」
「だから、そんなに困った顔してんじゃねえよっ。喧嘩するほど仲が良いって言葉を知らねえのか? ミサも何か言ってやれよ」
「いきなり、あちきに話を振りますかニャン!?」
コッシロー=ネヅの背中に乗りっぱなしであるミサ=ミケーンは驚きの表情となっていた。しかしながら、ベリアルが悪魔的笑みを浮かべて、ほら早く上手いこと言えよと催促してくるのであった。ミサ=ミケーンはムムム……と数秒悩んだ後
「ベリアルの言う通りですニャン。アリスちゃんは信じられないかもしれないですけど、あちきとアンドレイ様はしょっちゅう、喧嘩していましたのですニャン」
「それは意外なのデス。同じ布団の中でイチャイチャしている仲なので、まったくもって、喧嘩しないとばかり思っていまシタ」
「そ、それは……。喧嘩をした後はずっ魂ばっ魂で仲直りって言う約束があります……ニャン」
ミサ=ミケーンにとって、アリス=アンジェラは純心すぎた。これ以上、突っ込んだことを聞かれれば、自分たちの情事を、ここのメンバーにさらけ出さなければならなくなる。顔を段々と紅く染めつつあったミサ=ミケーンは、アンドレイ=ラプソティに助け舟を出してもらうことにする。
「ごほん……。アリス殿に大切なヒトが出来たら自然とわかることなのですが。とにかく、喧嘩するほど仲が良いと言うのは本当です。仲が良ければ良いほど、そのひとたちの距離感は近づくんです。だからこそ、自分のことをわかってほしいと喧嘩してしまうんですよ」
そんなアンドレイ=ラプソティたちの眼下には、ようやく旧マケドナルド王国の領地が見え始めることになる。周囲を山に囲まれた大きな盆地となっているその地方は今は別の名が与えらえていた。
「旧マケドナルド王国。今の名はレオンハイマートオート。意味はそのまま『レオン=アレクサンダーの産まれ育った土地』です。ちなみにレオンは旧・神聖ローマニアン帝国をレオングラードと改名しようとしました」
「それは赤い悪魔が喜びそうな名前だな。なんで、止めたんだよ」
「悪魔が喜びそうだから、止めたんです」
ベリアルはやれやれと両腕を広げてみせる。神聖マケドナルドン帝国という名は、そのまま過ぎるのは否めないが、せっかく地上に大帝国を築いてやろうという気概を持つ男ならば、アンドレイ=ラプソティの言いを蹴っ飛ばせば良いと思ってしまう。
しかしながら、アンドレイ=ラプソティの続く解説で、ますます呆れてモノが言えないと言った感じになってしまう。
「とりあえず、神聖ってつけておけば、創造主:Y.O.N.N様が喜びそうですモノネ」
「そうでッチュウね。『善』の象徴である創造主:Y.O.N.N様は『神聖』とか『紳士淑女』とか、キレイモノ好きでッチュウから」
「ヒトの世は清濁混合してんだ。ちょっとくらいハメを外したところで、あの創造主ならば、案外、受け入れてくれるかもな」
「そう……かもしれませんね。でも、やっぱり、赤い悪魔が喜びそうなのは避けてしまいましたね」
新しい君主が旧・神聖ローマニアン帝国の跡地を手にいれた際に、新国名については色々と議論がなされたが、結局なところ、無難なところに落ち着く辺りがニンゲンらしいとも言える。しかしながら、旧マケドナルド王国を『レオンハイマートオート』と改名しているのだから、レオン=アレクサンダーは自分の名を冠した帝国名へと変えたかったはずである。
だが、レオン=アレクサンダーの不幸と言えば、クソ生真面目な天使の中でも、トップクラスに君臨する『天界の十三司徒』と呼ばれる人物を自分の右腕にしていたことであろう。ベリアルはレオン=アレクサンダーに対して、ざまあねえなあ……というけなしと同時に同情も含んだ感想を抱くことになる。
とにもかくにも、アンドレイ=ラプソティたちの眼下には北は険しい山々。西は海。そして南にはなだらかではあるが丘陵地帯が広がる旧マケドナルド王国の玄関口近くにまでやってきていた。神聖マケドナルド帝国の首都から北西に数百キュロミャートルほど飛んできたわけだが、ここで地上へ降りようと提案してきたのが、アンドレイ=ラプソティであった。
「ん? このまま火の玉特急が如くに、レオンハイマートオートだっけか? ってところの首都に向かうんじゃねえのか?」
「それこそ、悪魔皇:サタンが張り巡らした蜘蛛の巣に、自分から絡め取られに行くのと同義ですよ」
「ああ、そりゃそうだな。ウチの御大将はともかくとして、その傍らには悪魔将軍:ルシフェルが居たんだっけか。そりゃ御明察だわ」
ベリアルは七大悪魔のひとりである。悪魔は基本的には自由奔放であるが、その中においては、まだ生真面目な部類に入る悪魔将軍:ルシフェルの存在を思い出すに至る。3度に渡る天魔大戦において、悪魔側の作戦の基本部分を考えていたのは悪魔将軍:ルシフェルである。逆に、計画性という範疇からおおいにはみ出している悪魔たちにとって、指針を示す役割を担っていたのは、悪魔将軍:ルシフェルただひとりであったとも言える。
(う~~~ん。今思い出しても、ルシフェルが『憤怒』の象徴になっちまった理由は、御大将も含めて、好き勝手やってたからなあ。あいつが堕天してくれなきゃ、3度も天界と引き分けなんか出来なかっただろうな)
ベリアルはあの当時のことを懐かしく思いながら、地上へと向かって降りていく。兎にも角にも、ルシフェルは苦労性である。ルシフェルが悪魔将軍らしく、大きな意味での戦略を考えるのだが、それに茶々を入れるまくるのが他の七大悪魔たちである。自分はこう戦いたいからこそ、ここに配置させろとか、あの大天使とサシで殺り合いたいから、舞台を準備しろとか無茶振りも良い所であった。
「何か嬉しそうな顔をしているのデス。やはり、仲間に会えるのは楽しみなのデスカ?」
「うん? そんな浮かない顔して。どうしたんだ? アリス嬢ちゃん」
「いえ。悪魔皇:サタンと悪魔将軍:ルシフェルという二大巨頭が、この先で待っているのデス。ベリアルはあちら側についてしまうのかと思うと……」
憂い顔になっているアリス=アンジェラの頭をわしわしと右手で撫でるベリアルであった。アリス=アンジェラはムッとした表情になるが、ベリアルは穏やかな表情で、これまた朗らかな声で、アリス=アンジェラにこう告げる。
「心配すんなって。アリス嬢ちゃんの敵に回ることは無い。なんたって、サタンは我輩に自由に振る舞えと言っていたんだからな」
「そうなんデス? でも、このままだと、ベリアルはサタンやルシフェルと戦うことになってしまうのデスヨ?」
「だから、そんなに困った顔してんじゃねえよっ。喧嘩するほど仲が良いって言葉を知らねえのか? ミサも何か言ってやれよ」
「いきなり、あちきに話を振りますかニャン!?」
コッシロー=ネヅの背中に乗りっぱなしであるミサ=ミケーンは驚きの表情となっていた。しかしながら、ベリアルが悪魔的笑みを浮かべて、ほら早く上手いこと言えよと催促してくるのであった。ミサ=ミケーンはムムム……と数秒悩んだ後
「ベリアルの言う通りですニャン。アリスちゃんは信じられないかもしれないですけど、あちきとアンドレイ様はしょっちゅう、喧嘩していましたのですニャン」
「それは意外なのデス。同じ布団の中でイチャイチャしている仲なので、まったくもって、喧嘩しないとばかり思っていまシタ」
「そ、それは……。喧嘩をした後はずっ魂ばっ魂で仲直りって言う約束があります……ニャン」
ミサ=ミケーンにとって、アリス=アンジェラは純心すぎた。これ以上、突っ込んだことを聞かれれば、自分たちの情事を、ここのメンバーにさらけ出さなければならなくなる。顔を段々と紅く染めつつあったミサ=ミケーンは、アンドレイ=ラプソティに助け舟を出してもらうことにする。
「ごほん……。アリス殿に大切なヒトが出来たら自然とわかることなのですが。とにかく、喧嘩するほど仲が良いと言うのは本当です。仲が良ければ良いほど、そのひとたちの距離感は近づくんです。だからこそ、自分のことをわかってほしいと喧嘩してしまうんですよ」
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