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17夜目のためのお話:氷魔法の一族
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「私もヒルデさんのお祝いをしたくて一緒に来ましたの。いいですわよね、エーファお姉様?」
マクダレーナの目が、すっと弧を描いた。
初めてその目と視線がかち合った。
今まで二人は赤の他人――平民と候爵令嬢という、交わることなない存在だったのだ。
メヒティルデの使用人として同じ空間にいることはあったが、貴族令嬢の侍女は基本的に空気のように扱われる。そのためお互いに会話をすることはなかった。
(どうして暗に血縁関係を匂わせているの……?)
自分はルントシュテット侯爵家の当主から一族の人間ではないとみなされた存在だ。その娘なら、エーファが置かれている立場を知っているはずだろう。
貴族は血縁と地位に重きを置く生き物だ。昔に比べると血筋を重視する風潮が弱まりつつあるが、高位貴族ほどその系譜に平民の血を入れることは許されないと考える者が未だに多い。
氷魔法の一族として由緒ある家門のルントシュテット侯爵家が、平民の血が流れている自分を受け入れるとは思えない。
「……お客様を追い出すようなことはしませんよ。もちろん、営業妨害や他のお客様に迷惑をかけないのであればですが」
警戒するに越したことはないが、とはいえまだマクダレーナがここに来た目的がわからない。
ひとまずそれとなく釘を刺すことにした。
「ここではヒルデさんのお祝いと美味しいお菓子を楽しむつもりですからご安心くださいな。夜の間だけ開くカフェに行くと聞いて、とても楽しみにしていましたの。想像以上に素敵な場所で感激していますわ。それに、思いがけずエーファお姉様と再会できましたもの」
どうやらここに来るまで、店主がエーファであることは知らなかったようだ。
自己申告はそうだが、実際のところどうなのだろうか。
(……考えていても仕方がないし、放っておこう)
思うところは色々あるが、予想するだけでは埒が明かない。
「お気に召していただけたようで良かったです。外は寒いですから、どうぞ中に入ってください」
「それでは、お言葉に甘えて――あら、ロシュフォール卿?」
すっかり室内に馴染んでいたランベルトを見つけたマクダレーナは、柳眉をわずかに釣り上げる。
よもや公爵家の令息――一国の騎士団長が平民区画にある小さなカフェにいるとは夢にも思わなかったのだろう。
「……随分と寛いでいらっしゃいますのね。もしかして、常連ですの?」
「ええ、最近通い始めたばかりですが、常連を名乗らせていただいています」
「そうですのね。では、わたくしも常連になりますわ」
競うような口調には敵意も滲んでいる。
今まで二人の噂を聞いたことはなかったが、実はあまり仲が良くないのかもしれない。
もしくは、マクダレーナが個人的に嫌っている可能性がある。
(まあ、私が知ったことではないけど……)
エーファはヒルデとマクダレーナの注文を聞き、ついでにランベルトの銀のゴブレットが空っぽになっていないか確認する。
今日は彼に助けてもらったから、とびきりサービスするつもりだ。
しかしいつもより飲むペースが遅く、ゴブレットの中にはまだ半分ほどのホットワインが残っていた。
カウンターの中に戻ったエーファは、二人から注文があったホットショコラ作りに取りかかる。
どうやらヒルデは、ホットショコラがお気に召したらしい。
これまでは温かいアップルサイダーを飲んでいたが、今日はまたホットショコラを飲みたいと言っていた。それを聞いたマクダレーナが自分も飲みたいと言って注文したのだ。
「あの……もしかして、マクダレーナ様とエーファさんはお知り合いですか?」
「ええ、エーファお姉様はわたくしの従姉ですのよ。家の都合で、書類上では他人ですけど――」
チョコレートを刻んでいるエーファの耳に、二人の会話が聞こえてくる。
気にしない素振りのまま、耳を澄ませて彼女たちの話を聞くことにした。
「エーファお姉様は幼少の頃からすでに雪の妖精のように可憐で美しかったですのよ。雪のように白い肌に輝くばかりの銀色の髪。睫毛は長く密で、全王国中の女性が羨むほど芸術的な角度で上を向いていますもの。おまけにすらりと背が高くてしなやかで、どんな服でも着こなしていましたわ。エーファお姉様が侍女としてお茶会に現れると、どの貴族令嬢も貴族令息もエーファお姉様に釘付けになっていましたのよ。エーファお姉様の素晴らしさは見目だけではなくってよ。頭脳明晰で、貴族の作法をひと月で習得しましたし、魔法学院は飛び級でたった一年で卒業しましたの。試験ではどの科目も満点をとって常に主席だったんですって。それにとてもお強いですのよ。魔法学院に入学する前に既にフェンリルを使い魔として契約していましたもの。魔法学院の先生が王国最年少記録だと仰っていましたわ。そうそう、魔法兵団の凱旋パレードでエーファお姉様を見たことはあって? あれは南部に出現した海の狂竜をエーファお姉様が――」
マクダレーナは息継ぎする暇もなく早口でエーファについて語っている。
従妹は驚くほど自分の情報を仕入れていたようだ。
あまりにも詳細に調べ上げられているものだから、エーファは少し鳥肌が立った。
それにしても、こんなにも口数が多かっただろうか。
エーファはショコラを作りながら首を捻る。
メヒティルデに付き添ってお茶会や舞踏会で見かけた時は、こんなにも饒舌ではなかった。完璧主義の彼女は貴族令嬢としての振舞を徹底していた。
目の前にいる人物が、果たして本当にあのマクダレーナなのかと、頭の上に疑問符が浮かぶ。
「はい、できましたよ」
ヒルデにはリンゴのキャラメリゼパンケーキとホットショコラ、マクダレーナにはキャロットケーキとホットショコラを出す。
二人とも目を輝かせ、ケーキを食べてくれた。
(なんだ、意外と年頃の女の子らしいところもあるんだね)
マクダレーナはうっとりとした表情でケーキを咀嚼する。
フォークを動かす手は少しも変わらず、あっという間に食べ終わってしまった。
「エーファお姉様はケーキ作りの才能もありますのね」
「才能だなんて……父の教えが良かっただけですよ」
「叔父様の教え……ですか……」
いつもは勝気な目が、急にしおらしくなった。
まるで、今は亡き叔父を偲んでいるような表情だ。
「わたくし、今の婚約を破棄するつもりですの」
「……は?」
急に話題が変わり、エーファは呆気にとられる。
なぜ父の死からマクダレーナの婚約に話題が変わるのか、わからなかった。
「だって私よりも不出来な殿方を立てるのなんてまっぴらごめんですもの。それに――今の凝り固まった考えではそのうち、家門が立ち行かなくなっていきますわ。だからわたくしがどうにかしないといけないと思いましたの。現にお父様は氷の一族としての威厳がありませんもの。特に秀でているわけでもないのに、変わろうとせずに他者を蹴落とそうとして見苦しいですわ。お父様は……叔父様への劣等感があったから叔父様を見捨てましたの」
青い目が微かに潤んでいる。しかしマクダレーナはぐっと目に力を入れ、泣かないよう堪えている。
「父に代わって謝罪申し上げますわ。あの日、叔父様を掬えずお詫び申し上げます。口先だけの謝罪で許していただけるとは思っていませんわ。償いとしてこれからわたくしがルントシュテット侯爵家を変えていきます。――わたくしが当主となって」
たしかに父親を見捨てたルントシュテット侯爵家を許せない。しかしマクダレーナが何をしたと言うのだろうか。
心と思考が相容れてくれない。消化しきれない思いがエーファを苦しめた。
戸惑いとやるせなさが渦巻き、喉の奥につっかえる。
「……だから、婚約を破棄するつもりなんですか?」
「ええ、お兄様を打ち負かして当主になりますわ」
「そう……ですか」
重苦しい空気が店内を占拠する。
すると、カランと鈴が音を立てた。
見てみると、昼間に会った時の服装から魔法兵団の制服へと着替えたフリートヘルムが立っているではないか。
「ロシュフォール卿にルントシュテット侯爵令嬢……随分と賑わっているな」
「フリートヘルム殿下……?!」
驚くエーファの呟きを聞いたヒルデが、さらに驚く。
「え、ええと……フリートヘルム殿下って……あの、第二王子殿下ですか?!」
「そうだが、どうか今はただのフリートヘルムだと思ってほしい。ここに来たのはお忍び……昔の上司が元気にしているのか見に来ただけなんだ」
口ではそう言っているが、彼はこの店に入ってきた時からヒルデしか見ていない。――正確に言うと、一瞬だけランベルトとマクダレーナを見たのだが、すぐに視線をヒルデに戻したのだ。
(うわぁ、何あれ。ヒルデさんに会いに来たのがバレバレだよ)
昼間にエーファの店の常連と聞いたから、確かめに来たのだろう。
「隣に座っても?」
「ひえっ、い、いいのですか?」
「むしろ私があなたから許可をいただきたい」
どうやらかなりヒルデに惚れこんでいるらしい。
自分が知る声よりもやや低く艶のある声を出しており、かっこつけている。
(まあ、おかげで気まずい空気が流れたから、感謝するけど……)
後で揶揄ってやろうと心に決めたエーファだった。
「フリートヘルム殿下の仰る通り、今日はとても賑わっていますね」
フリートヘルムたちを見守っているエーファの隣に、ランベルトがこっそりとやってきて耳打ちする。
「はい、こんなに賑やかなのは久しぶりです。……こういうのも、たまにはいいですね」
そう言い、はっとして口元を塞ぐ。
復讐を忘れて楽しみたいと思ってしまったのだ。
焦るエーファとは裏腹に、ランベルトは柔らかく目を眇める。
「そうですね。たまにはいいと思います。ですがあなたには――これからはもっと今のような時間を過ごしてほしいです」
ランベルトの言葉に、エーファは胸の奥がツキンと痛んだ。
マクダレーナの目が、すっと弧を描いた。
初めてその目と視線がかち合った。
今まで二人は赤の他人――平民と候爵令嬢という、交わることなない存在だったのだ。
メヒティルデの使用人として同じ空間にいることはあったが、貴族令嬢の侍女は基本的に空気のように扱われる。そのためお互いに会話をすることはなかった。
(どうして暗に血縁関係を匂わせているの……?)
自分はルントシュテット侯爵家の当主から一族の人間ではないとみなされた存在だ。その娘なら、エーファが置かれている立場を知っているはずだろう。
貴族は血縁と地位に重きを置く生き物だ。昔に比べると血筋を重視する風潮が弱まりつつあるが、高位貴族ほどその系譜に平民の血を入れることは許されないと考える者が未だに多い。
氷魔法の一族として由緒ある家門のルントシュテット侯爵家が、平民の血が流れている自分を受け入れるとは思えない。
「……お客様を追い出すようなことはしませんよ。もちろん、営業妨害や他のお客様に迷惑をかけないのであればですが」
警戒するに越したことはないが、とはいえまだマクダレーナがここに来た目的がわからない。
ひとまずそれとなく釘を刺すことにした。
「ここではヒルデさんのお祝いと美味しいお菓子を楽しむつもりですからご安心くださいな。夜の間だけ開くカフェに行くと聞いて、とても楽しみにしていましたの。想像以上に素敵な場所で感激していますわ。それに、思いがけずエーファお姉様と再会できましたもの」
どうやらここに来るまで、店主がエーファであることは知らなかったようだ。
自己申告はそうだが、実際のところどうなのだろうか。
(……考えていても仕方がないし、放っておこう)
思うところは色々あるが、予想するだけでは埒が明かない。
「お気に召していただけたようで良かったです。外は寒いですから、どうぞ中に入ってください」
「それでは、お言葉に甘えて――あら、ロシュフォール卿?」
すっかり室内に馴染んでいたランベルトを見つけたマクダレーナは、柳眉をわずかに釣り上げる。
よもや公爵家の令息――一国の騎士団長が平民区画にある小さなカフェにいるとは夢にも思わなかったのだろう。
「……随分と寛いでいらっしゃいますのね。もしかして、常連ですの?」
「ええ、最近通い始めたばかりですが、常連を名乗らせていただいています」
「そうですのね。では、わたくしも常連になりますわ」
競うような口調には敵意も滲んでいる。
今まで二人の噂を聞いたことはなかったが、実はあまり仲が良くないのかもしれない。
もしくは、マクダレーナが個人的に嫌っている可能性がある。
(まあ、私が知ったことではないけど……)
エーファはヒルデとマクダレーナの注文を聞き、ついでにランベルトの銀のゴブレットが空っぽになっていないか確認する。
今日は彼に助けてもらったから、とびきりサービスするつもりだ。
しかしいつもより飲むペースが遅く、ゴブレットの中にはまだ半分ほどのホットワインが残っていた。
カウンターの中に戻ったエーファは、二人から注文があったホットショコラ作りに取りかかる。
どうやらヒルデは、ホットショコラがお気に召したらしい。
これまでは温かいアップルサイダーを飲んでいたが、今日はまたホットショコラを飲みたいと言っていた。それを聞いたマクダレーナが自分も飲みたいと言って注文したのだ。
「あの……もしかして、マクダレーナ様とエーファさんはお知り合いですか?」
「ええ、エーファお姉様はわたくしの従姉ですのよ。家の都合で、書類上では他人ですけど――」
チョコレートを刻んでいるエーファの耳に、二人の会話が聞こえてくる。
気にしない素振りのまま、耳を澄ませて彼女たちの話を聞くことにした。
「エーファお姉様は幼少の頃からすでに雪の妖精のように可憐で美しかったですのよ。雪のように白い肌に輝くばかりの銀色の髪。睫毛は長く密で、全王国中の女性が羨むほど芸術的な角度で上を向いていますもの。おまけにすらりと背が高くてしなやかで、どんな服でも着こなしていましたわ。エーファお姉様が侍女としてお茶会に現れると、どの貴族令嬢も貴族令息もエーファお姉様に釘付けになっていましたのよ。エーファお姉様の素晴らしさは見目だけではなくってよ。頭脳明晰で、貴族の作法をひと月で習得しましたし、魔法学院は飛び級でたった一年で卒業しましたの。試験ではどの科目も満点をとって常に主席だったんですって。それにとてもお強いですのよ。魔法学院に入学する前に既にフェンリルを使い魔として契約していましたもの。魔法学院の先生が王国最年少記録だと仰っていましたわ。そうそう、魔法兵団の凱旋パレードでエーファお姉様を見たことはあって? あれは南部に出現した海の狂竜をエーファお姉様が――」
マクダレーナは息継ぎする暇もなく早口でエーファについて語っている。
従妹は驚くほど自分の情報を仕入れていたようだ。
あまりにも詳細に調べ上げられているものだから、エーファは少し鳥肌が立った。
それにしても、こんなにも口数が多かっただろうか。
エーファはショコラを作りながら首を捻る。
メヒティルデに付き添ってお茶会や舞踏会で見かけた時は、こんなにも饒舌ではなかった。完璧主義の彼女は貴族令嬢としての振舞を徹底していた。
目の前にいる人物が、果たして本当にあのマクダレーナなのかと、頭の上に疑問符が浮かぶ。
「はい、できましたよ」
ヒルデにはリンゴのキャラメリゼパンケーキとホットショコラ、マクダレーナにはキャロットケーキとホットショコラを出す。
二人とも目を輝かせ、ケーキを食べてくれた。
(なんだ、意外と年頃の女の子らしいところもあるんだね)
マクダレーナはうっとりとした表情でケーキを咀嚼する。
フォークを動かす手は少しも変わらず、あっという間に食べ終わってしまった。
「エーファお姉様はケーキ作りの才能もありますのね」
「才能だなんて……父の教えが良かっただけですよ」
「叔父様の教え……ですか……」
いつもは勝気な目が、急にしおらしくなった。
まるで、今は亡き叔父を偲んでいるような表情だ。
「わたくし、今の婚約を破棄するつもりですの」
「……は?」
急に話題が変わり、エーファは呆気にとられる。
なぜ父の死からマクダレーナの婚約に話題が変わるのか、わからなかった。
「だって私よりも不出来な殿方を立てるのなんてまっぴらごめんですもの。それに――今の凝り固まった考えではそのうち、家門が立ち行かなくなっていきますわ。だからわたくしがどうにかしないといけないと思いましたの。現にお父様は氷の一族としての威厳がありませんもの。特に秀でているわけでもないのに、変わろうとせずに他者を蹴落とそうとして見苦しいですわ。お父様は……叔父様への劣等感があったから叔父様を見捨てましたの」
青い目が微かに潤んでいる。しかしマクダレーナはぐっと目に力を入れ、泣かないよう堪えている。
「父に代わって謝罪申し上げますわ。あの日、叔父様を掬えずお詫び申し上げます。口先だけの謝罪で許していただけるとは思っていませんわ。償いとしてこれからわたくしがルントシュテット侯爵家を変えていきます。――わたくしが当主となって」
たしかに父親を見捨てたルントシュテット侯爵家を許せない。しかしマクダレーナが何をしたと言うのだろうか。
心と思考が相容れてくれない。消化しきれない思いがエーファを苦しめた。
戸惑いとやるせなさが渦巻き、喉の奥につっかえる。
「……だから、婚約を破棄するつもりなんですか?」
「ええ、お兄様を打ち負かして当主になりますわ」
「そう……ですか」
重苦しい空気が店内を占拠する。
すると、カランと鈴が音を立てた。
見てみると、昼間に会った時の服装から魔法兵団の制服へと着替えたフリートヘルムが立っているではないか。
「ロシュフォール卿にルントシュテット侯爵令嬢……随分と賑わっているな」
「フリートヘルム殿下……?!」
驚くエーファの呟きを聞いたヒルデが、さらに驚く。
「え、ええと……フリートヘルム殿下って……あの、第二王子殿下ですか?!」
「そうだが、どうか今はただのフリートヘルムだと思ってほしい。ここに来たのはお忍び……昔の上司が元気にしているのか見に来ただけなんだ」
口ではそう言っているが、彼はこの店に入ってきた時からヒルデしか見ていない。――正確に言うと、一瞬だけランベルトとマクダレーナを見たのだが、すぐに視線をヒルデに戻したのだ。
(うわぁ、何あれ。ヒルデさんに会いに来たのがバレバレだよ)
昼間にエーファの店の常連と聞いたから、確かめに来たのだろう。
「隣に座っても?」
「ひえっ、い、いいのですか?」
「むしろ私があなたから許可をいただきたい」
どうやらかなりヒルデに惚れこんでいるらしい。
自分が知る声よりもやや低く艶のある声を出しており、かっこつけている。
(まあ、おかげで気まずい空気が流れたから、感謝するけど……)
後で揶揄ってやろうと心に決めたエーファだった。
「フリートヘルム殿下の仰る通り、今日はとても賑わっていますね」
フリートヘルムたちを見守っているエーファの隣に、ランベルトがこっそりとやってきて耳打ちする。
「はい、こんなに賑やかなのは久しぶりです。……こういうのも、たまにはいいですね」
そう言い、はっとして口元を塞ぐ。
復讐を忘れて楽しみたいと思ってしまったのだ。
焦るエーファとは裏腹に、ランベルトは柔らかく目を眇める。
「そうですね。たまにはいいと思います。ですがあなたには――これからはもっと今のような時間を過ごしてほしいです」
ランベルトの言葉に、エーファは胸の奥がツキンと痛んだ。
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