【完結】若手アルファ俳優の運命は大嫌いなオメガ俳優でした ~インテグラル・スター ~

上杉

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2章 始動

6 ささやかな期待

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 水上とマネージャーの大森は、監督やスタッフに挨拶をしたあと研究棟から立ち去った。
 授業を終えた学生たちがぶらぶらと構内を歩く中、反対方向へと歩きながら大森が口を開く。

あまね、あの主演に何を言ったかは知らないが、とにかく気をつけろ。あいつは――」

「そんなこと、一目でわかったよ」

 大森の言葉を遮った水上は続ける。

「――けど、あの子はこれまで会ったことのある彼らとは、全く違う感じがした。……監督はきっと、あの憂いのある感じを気に入ったんだろうな。今回のキャスティングに納得がいったよ」

「……ふうん。なるほどな」

 そんな大森の適当な返事とは打って変わって、水上は真剣な表情で言う。

「でも、まだだ。演技はこれから伸びるとして、あと少し……今の彼に足りないものがある」

「……演技以外?どういうことだ?」

 大森が聞くも、水上は答えなかった――いや答えられなかった。いまだ水上の中でも言語化することは難しかった。
 そんな感覚的なものだったが、ひとつだけ確実に言えることはあった。それは宮城昂世の演技の部分と彼の本性が混ざり合った瞬間を、きっと監督はカメラに収めたいだろうという確信だった。

 ――もしそんな表情を使うことができたら、どんなに印象的な作品になるだろう。

 水上がにやりと笑みを浮かべていると、それを見た大森は気だるそうに言った。

「……周。楽しそうなのは何よりだが、無茶はしないでくれよ」

 その言葉に水上は軽く笑って答える。

「大丈夫。僕が機能不全なことは、君の方がよく知っているだろう?」

「……まあな」

「それに、ここまで自分の努力で築いてきたんだ。この年になって性に振り回され瓦解するものなんて、もうありはしないだろう」

 そう言って微笑む水上の後ろで、大森は静かにため息を付いた。

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