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おまけ
バラエティ番組でたまたま共演することになった恋人が格好よすぎるんだが(1)
しおりを挟む「昂世、最近大丈夫か?」
「…………なんとか」
ドラマ撮影現場の脇でパイプ椅子に腰かけた宮城昂世は、疲れた顔をしてそう答えた。付き添うマネージャーの波多野がゼリー状ドリンクを差し出してくれたので、それを手に取り口にする。
アカデミー賞主演男優賞の受賞以来、昂世の毎日はてんてこ舞いだった。
ある程度想像はしていたものの、反響は想定を遥かに超えていた。現在、昂世が抱えるドラマは今撮影している主役級のものが二本、ほかにサブキャストとしてすでに五本の撮影が予定されていた。
またそれ以外に映画の撮影や雑誌の取材、そして多種多様なCM撮影に追われ、今はもうすっかり「売れっ子」だった。実際、昂世が道を歩けば女性の悲鳴が次々に聞こえる始末で、今はもう自由に外へ出歩けない生活を送っていた。
しかしそういう点は昂世にとってまったく苦にならなかった。今も昔と変わらない、毎日寮に帰って寝て仕事に行くだけの生活だったから。昂世にとってさまざまな仕事が舞い込み経験できる今、それだけでもう十分満足していた。
ただ彼を唯一悩ませていたのは、水上にまったく会えなくなってしまったことだった。
仕事の激増でこちらから連絡する暇がなくなったのはもちろん、水上の方もどうやら相当な量の仕事を抱えているらしい。
水上周が国内で引っ張りだこだったのは昔からだが、今はそれに加えて流行りのネットドラマや、海外映画出演のオファーも来ているそうだ。
――やっぱり、水上さんはすごい。
そう羨望の思いを向けながらも昂世が悩んでいたのは、身体に溜まり続ける彼への欲望だった。
以前会えたのはいつだろう――そう考えて思い浮かんだのは、アカデミー賞受賞祝のご褒美として手に入れた、たった一日のふたりだけの休日だった。
――あの日はなんて幸せだっただろう。
水上も同じく休みを貰い、手配してもらった高級ホテルでゆったりと時間をともにすごした。
受賞スピーチについて水上に褒めてもらったり、ふたりで次の仕事の役柄を共有したり。また映画を観ながら演技論を交わしたり、教えてもらったり。
そうして隣りにいるだけで、心が満たされる感覚があった。ただ、足りなかったのは肉欲だった。
お互い次の日にロケの長距離移動を控えていたので必死に理性を働かせて抑えたのだが――まさかこんなに会えなくなるなんて、想像もしていなかった。
昂世は波多野から差し出された水を飲みながらぼんやりと思う。
――結局、なあなあな関係のまま宙ぶらりんになってしまった。
受賞してしまえばこうなることはわかってはいた。しかしあの日番になると決めたはずだったのに、今は忙しい毎日で顔を合わせることすらできていない。
だからこうして俳優生活を送りながら、本当に番うことができるのだろうか――最近、昂世はそんな不安に襲われていたのだった。
「…………はあ」
「ごめんな。しっかり休ませてあげたいんだが」
「いえ、大丈夫です。予めこうなることはわかってましたし、これだけ仕事を頂けるのは嬉しいことですから。それに…………休めてもどうせ会えないし」
「……昂世」
波多野が申し訳なさそうに言ったときだった。突然彼のスマホに着信が入り、波多野はこちらにすまないという口を作ったあとでそれに出た。
「……お疲れさまです。波多野です」
その硬い口調と手帳を取り出す姿に、昂世はまた新しい仕事が決まったのだと察した。
――また仕事だ。とりあえず頑張るしかない。
確かに今は身体も心も疲弊していて苦しかった。けれどこうして一つずつ頑張っていけば、いつか再びあの輝かしい現場で、水上の隣りに立てるかもしれないのだ。
電話の終わった波多野に向かって、昂世は声をかけた。
「……波多野さん、次はどんな仕事ですか?」
すると彼は何故か、今まで見たことのないにやにやとした笑みを浮かべてこう言った。
「ああ……昂世、今のお前にとって最良の仕事が舞い込んだぞ!」
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