【完結】若手アルファ俳優の運命は大嫌いなオメガ俳優でした ~インテグラル・スター ~

上杉

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おまけ

バラエティ番組でたまたま共演することになった恋人が格好よすぎるんだが(3)

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  不安に襲われながらも収録は進み、いよいよ中盤というところだった。
 ミニゲームのリズムダンスゲームで無事勝利を収めた昂世は、戻ってきたところで出口に声をかけられた。

「お疲れさま。宮城くんどうしちゃったの?覚醒?」

「……まあ、そんなところです」

 すると出口はまた不敵な笑みを浮かべてぼそりと言った。

「むふふ……さては愛しの静河さんがいるから、かっこいいところを見せようと……!」

「……出口さん、少し黙っていて下さい」

「ふふふ。んふふ」

 実際彼女の言う通りだった。
 収録前に水上に視線を逸らされて以来、もう彼のことが気になって気が気でなかった。
 それがなぜ今も続いているかというと、あの一件以来一向に目が会わないからだった。
 同じミニゲームに参戦することになり、隣りのチームになったこともあった。なのに水上は絶対にこちらを見ようとはしなかった。
 昂世はそのたび淋しくて悲しくて、どうしてという悶々とした気持ちを晴らすように「宮城くんお願い」と声のかかるアトラクションを次々とこなしていた訳だ。
 フリースローもダンス対決も、ミニマラソンも淡々とやり遂げた。すべて集中して身体を動かせばどうにかなるので、このときばかりはαでよかったと久しぶりに思った。

 そうして次はまるでアーチェリーのような、セット奥に用意された流れる的を射抜くゲームだった。
 経験はなかったものの、試し打ちである程度の感覚がわかったのでそれを応用して本番に向かう。
 
 ――水上さん……!

 このときはもう、彼になんとしても見て欲しくて躍起になっていた。
 チーム戦であるものの、一番先頭で的を待ち構える。スタートの合図があったのち、呼吸を止め集中し次々と的を弾いた。
 結局、すべての的をひとりで制覇したあと――後ろから上がる黄色い歓声の中を、きっと水上が見ていると思い振り返る。
 しかしやはり水上は隣りの俳優と談笑しており、こちらに顔を向けてすらいなかった。

 ――……なんで!

 結局その後もその繰り返しで、気付いたときには収録が終わろうとしていた。
 心も身体もぼろぼろになり沈黙していた昂世に、出口は儲けたとばかりに嬉しそうに言った。

「宮城くんが頑張ってくれたおかげで、うちのチーム優勝しそうじゃない?」

「……そんなの、どうでもいいです……――痛っ!」

 突然肩をばちんと叩かれ昂世は驚く。
 出口の方を見ると、彼女はまるで女性刑事役を感じさせる鋭い目付きでこちらを見ていた。

「もう、何言ってくれちゃってるのよ、うちのワンコは」

「……で、出口さん」

「このドラマはあたしの主演、そしてあなたは映えあるあたしの相手役なの。世の女性はあたしに感情移入してあなたに翻弄されるんだから、しょんぼり餌をもらえないワンコじゃだめでしょ。早く!実はオオカミの柴犬顔しなさいッ!」

 突然そう言われ昂世は戸惑った。

 ――実はオオカミの柴犬顔ってなんだよ。

 そう心の中でつっこむも、なんとか頷きすぐに顔を作って頷く。

「……はい」

「いい。その調子よ!さあ番宣行くわよ!あずき!ついてらっしゃい!」

「……はい!」

 その後、今回のチーム戦の褒章として与えられた番宣をこなし、皆に挨拶をして急いで現場を後にする。

 ――水上さんっ!

 しかしもうほかのチームの人々は解散した後で、現場にはセットを片づけるスタッフたちの姿があるだけだった。

「はあ…………もう、疲れた」

 久しぶりに顔を見られたのに、言葉を交わすことも視線を交わすことすらできなかった。
 俺が何かしてしまったのだろうか――そう思いながらとぼとぼと歩く昂世のもとに、駆け寄ってきたのはマネージャーの波多野だった。

「昂世!長丁場の収録お疲れさま!気合入ってたじゃないか。今回もきっと注目の的だな!」

「…………はい」

「ん?元気ないじゃないか。水上さんいただろう?元気もらえなかったか?」

「……いましたけど、別のチームで話したりとかは全然無理でした」

 もう無理――そう思う昂世に対して波多野は穏やかな顔で言った。

「そうか。じゃあそんな今の昂世にはとびっきりのいい話だな」

「……え?」

「明日のロケなんだけど、天候が怪しくて延期って連絡が入ったんだ。仕事はそれだけだったからほかの仕事をいれずにオフにした。ゆっくり休めよ」

「……波多野さん」

 こういうときに、彼の心配りと優しさは身に染みた。
 
 ――とりあえず、帰って休もう。

 疲れた頭で考えていては、悪いことばかり考えるだけだ。眠ってしっかり身体を休めた後で連絡してみよう――昂世がそう思ったときだった。

「あと、これを預かってるんだ」

 波多野から手渡されたのは手のひらサイズの黒いプラスチックの塊だった。光沢のあるそれはマンションの鍵のように見えた。

「……え?これ……鍵ですよね」

「そうだな。ただ俺はお前に渡してくれって言われただけなんだ」

 そうして波多野は微笑んだので、昂世はまさかと思った。胸が高鳴りかけたそのとき――昂世のスマホが震えたと思えばメッセージが来ていた。

「……っ!」

 それは待ちに待った水上からのものだった。
 アプリを開くと地図リンクと一言だけ――。

『お疲れさま。ここで待ってる』

 それを見た瞬間、今まで身体にどっと押し寄せていた疲れがどこかにいったような気がした。
 昂世は波多野に向かって頷くと、急いでその場をあとにした。

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