50 / 51
おまけ
バラエティ番組でたまたま共演することになった恋人が格好よすぎるんだが(5)
しおりを挟む番になったふたりは、抱き合ったまま目を覚ました。
「……周さん」
「昂世くん、おはよ」
「はい、おはようございます」
そうして再び顔を寄せて口付けて、疲労感のある身体をくっつけ合った。
――ついにこの人と番になったんだ。
水上の白い首筋に赤い歯形がくっきりと浮かび上がっていた。
昂世はそれをぺろりと舐めてびくんとした水上の身体を抱きしめる。
――なんて愛おしいのだろう。
番となり、自分だけに発情することになった水上の身体。以前よりも確実に細くなった腰に触れながら、昂世は思わず聞いた。
「周さん、そういえば次はどんな役なんですか?」
「役?ええと、作品のジャンルはサスペンスだね。いわゆるバディもので、僕は謎めいた刑事のひとりだ。……そういえば、君現場ですごく驚いてたよね。今回のこと知らなかったでしょ」
「はい……最近ありがたいことに忙しくて、それどころじゃなくて……」
だからまさか収録で会うことができるなんて思ってもいなかったし、それはこうして番うのも同じだった。
その喜びを噛みしめるように、抱きしめた腕に力を込める。すると水上はそれに手を伸ばし触れながら言った。
「……またやらしいこと考えてるでしょ」
「ち、違います!この役の周さんきっとかっこいいんだろうなって。共演者の方が……その……羨ましいです」
昨晩のこの身体はもはやエロすぎた。なのに今、同じもののはずなのに、引き締まっていて格好よく見えた。
――須藤静河のだらしない身体もよかったけど。
これは万人受け間違いない、昂世がそう思っていると、水上はこちらをじろじろと見ながら言った。
「……そう言う君も大概じゃない?」
「え?そうですか」
「そりゃあね。あれだけ目立ってたし、どれだけみんなの悲鳴があがっていたか」
その言葉に、昂世は思わず、
――それは一体誰のせいだと!
と、声を荒らげた。
「――あれは、あの収録で周さんと全然目が合わなかったから必死だったんですよ!」
その強い口調に気圧されるように、水上はぽつりと言った。
「それは、君が出口さんと――」
「……え?」
不意に水上を見ると、何やら言ってはいけなかったことを言ってしまったようで、顔を隠すようにぱっと立ち上がった。
「……なんでもない」
「いや何でもなくないですよ」
そうして腕を掴み顔をみれば、水上は赤くなっていた。
――まさか……出口さんに嫉妬していたりして。
それならば収録中のあの不思議な位の目の合わなさにも納得がいった。
同時に昂世は思った。今回の意図しない発情の原因も、実はその心の動きによるものなのでは、と。
「周さん」
「…………何?」
「いや、その…………嬉しいです」
すると水上は呆れるようにため息をついて言った。
「……はあ。まさか僕で童貞を捨てた君が……ね。こんなに格好よくなって、誰かにきゃあきゃあ言われて。しかも誰かの相手になってるのを見てたら……そりゃあ妬くでしょ」
昂世はそのストレートな言葉に思わず嬉しくなった。そしてにんまりしていると、水上は恥ずかしそうに言った。
「何で笑ってるの」
「いや、普通に嬉しくて。……今思うんですけど、須藤静河って結構水上さんの素に近かったんじゃないですか?」
突然そんなことを言われ、水上は反射的に言う。
「……なんで突然。それに何故そう思ったの?」
「……なんとなくです」
昂世の返答に、水上はまた一つため息をついた後で部屋から出ていこうとした。しかし入口で足を止めて振り返り、なぜかこう言った。
「……君はさ、優人とは随分違うよね」
「そうですか?」
「ああ。優人はさ、生き急いでいてもう必死じゃないか」
その言葉に思わず笑う。
「え、それは俺が必死じゃないみたいじゃないですか」
「そんなことは言ってない。彼が静かに燃える炎なら……きみは澄み切ってそこにただ在る水だね。すべてを受け止めて、受け入れるような」
「……そうですか?」
「ああ。会ったときから、なんて優しい顔をする人間だろうと思ったよ」
その突然の告白にら昂世は嬉しくなる。
「ふふっ。そんなこと思ってたんですか」
「ああ。ずっとね」
こちらに向けられた水上の眼差しが、その時の長さと思いの強さを物語っているように思えた。
昂世は思わず恥ずかしくなり、顔を背けてしまう。
「……なんで突然。照れます」
「いいだろう?君は何やら疑り深いみたいだし」
そう言われ、水上に詰め寄られたときだった。突然、部屋の隅に放ってそのままになっていた自分の鞄から、スマホの振動音が聞こえた。
「そんなこと――あ、電話……波多野さん、マネージャーです!出ます!」
お疲れ様です――そう話し始めた昂世を見ながら水上は思った。
確かに自分は彼の言う通り、須藤静河によく似ていた。
仕事に対して熱心だった須藤は、それ以外のことについてはまるで諦めていた。自分はそんな彼とまるで同じで、仕事以外のプライベートについて、少しも考えていなかった。
だから演じていて役に同調していたところはあった。
そして次第に撮影が進んでいくことで、須藤の凝り固まった心が中谷優人によって解きほぐされていったように。自分の頑なだった心も宮城昂世によって少しずつ――。
「ふふ……君のおかげだな」
「?今、俺に何か言いました?」
通話を終えこちらに向かって首を傾げる昂世に水上は笑顔を向けた。
「はは。何でもないよ。……強いて言えば昂世。君のことが好き、それくらいかな」
「そんなこと、もう十分わかってますよ」
二人は笑って寝室を出た。
部屋の中にも関わらず手を繋いだまま、番として確かに繋がった身体と心を、互いに感じ合うように。
(終)
65
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
αが離してくれない
雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。
Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。
でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。
これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
あまく、とろけて、開くオメガ
藍沢真啓/庚あき
BL
オメガの市居憂璃は同じオメガの実母に売られた。
北関東圏を支配するアルファの男、玉之浦椿に。
ガリガリに痩せた子は売れないと、男の眼で商品として価値があがるように教育される。
出会ってから三年。その流れゆく時間の中で、男の態度が商品と管理する関係とは違うと感じるようになる憂璃。
優しく、大切に扱ってくれるのは、自分が商品だから。
勘違いしてはいけないと律する憂璃の前に、自分を売った母が現れ──
はぴまり~薄幸オメガは溺愛アルファ~等のオメガバースシリーズと同じ世界線。
秘密のあるスパダリ若頭アルファ×不憫アルビノオメガの両片想いラブ。
番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~
伊織
BL
高校1年生の蓮(れん)は、成績優秀で運動神経も抜群なアルファ。
誰よりも大切に想っているのは、幼い頃からずっとそばにいた幼なじみのオメガ・陽(ひなた)だった。
初めての発情期(ヒート)──それは、蓮と陽の関係を静かに、でも確実に変えていく。
「陽が、知らない誰かに抱かれるのは嫌だ」
その言葉をきっかけに、陽は蓮だけに身体を預けるようになる。
まだ番にはなれない年齢のふたり。
触れ合えば触れ合うほど、高まる独占欲と焦燥、そして不安。
ただ一緒にいられる今を、大切に過ごしていた。
けれど、優しくあるはずのこの世界は、オメガである陽に静かな圧力を与えていく。
気づけば、陽が少しずつ遠ざかっていく。
守りたくても守りきれない。
アルファであるはずの自分の無力さに、蓮は打ちのめされていく。
番じゃない。
それでも本気で求め合った、たったひとつの恋。
これは、ひとりのアルファが、
大切なオメガを想い続ける、切なくて愛しい学園オメガバース・ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる