【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉

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3章 別々の体育祭 side.新汰

2 次は、理久

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 ――まったく、なんでこんなことに。

 結局、三組の応援団は俺と牧田に決まってしまった。
 やっぱり辞退しますと言わせないようにするためだろうか。翌日すぐに決起会的なものが行われた。
 体育館で行われるそれは全校集会さながらで、三学年の生徒全員を前にそれぞれの応援団が挨拶をするとのことだ。
 もちろん、話すのは三年の先輩たちなので自分たち二年は横で立っていればいい。それでも人前に立ち目立つことは変わりない。
 全学年の三組をまとめる先輩たちと脇で待機しながら、俺はついつい思ってしまう。

 ――本当に、なんで俺がこんなところにいるんだろう。

「はあ」

 思わずため息を漏らすと、一緒にいた牧田と視線が合った。

「西脇くん……本当にごめんね。私のせいで」

「いいよ。牧田のせいじゃないだろ」

「だって、西脇君…………本当にダンス苦手なんだもん」

 そうして牧田は思い出したように笑いをこらえはじめた。
 どうやら俺がこんなにもダンスができないなんて、想像もしていなかったらしい。

「それは本当にごめん。でもいくらなんでも笑い過ぎだって」

「だって、去年は踊れてたから」

「……去年は理久に手取り足取り教えてもらってたんだ。それに結構隠れて練習してたし」

 すると牧田は申し訳なさそうに言う。

「そうなんだ。それなら笑っちゃってごめん。大丈夫だよ。今年は私が頑張って教えるから!……そういえば、先輩たちも言ってたけど西脇くんの声すごくいいよね。応援団ぴったりだって」

「一応、大声は剣道で鍛えられてるから」

 注目を浴びると緊張するが、人前で声を出すことは割と苦ではない。それは俺が剣道を学ぶ上で成長したことのひとつだ。同時にあの苦い夏の日から剣道を続けている理由のひとつでもある。
 そうして俺はふと気付いた。
 今回の応援団の件を、俺はまだ理久に言っていない。
 ざわざわと嫌な予感が駆け巡る。
 理久は俺が応援団に入ることは絶対にないと思っている。ダンスが下手で目立つことも嫌いで、その上部活もある俺が応援団と聞いてしまったらどんな反応するだろう。

 ――またあのときみたいに拒絶されるかもしれない。

 道場に行くと伝えたあの日、何故理久が家に帰ってしまったのか機嫌を損ねてしまったのか、俺は未だ理久に聞けていない。
 ただ、もう俺たちは大人だ。あの頃から随分成長してるから、きっと大丈夫だと俺は思いたかった。
 
 ――理久だって、わかってくれる。

 そんなときだった。

「うわ……まじか」

 三組の先輩たちが驚いたように声を上げるので、つられて思わず声の先を見た。
 今ステージの上に上がっているのは二組のチームだ。チームカラーは青らしく、みんなおそろいの青のティーシャツを身に着けていて――。

「…………えっ」

 俺はそこに理久の顔を見つけて、思わず声を上げてしまった。
 どこか不機嫌そうな顔で宙を見つめる理久は、確かに清宮理久本人だった。普段のきらきらした佇まいとは違う気だるい雰囲気に、周りの女子たちがざわつき始める。
 
「わ、清宮君いるじゃん」

 牧田がそうぼそりと言った瞬間、なぜか理久と目が合った気がした。
 その表情はどこか怒っているように見えて、もうそのときから気が気でなくなってしまった。
 

 集会が終わり次第、俺はすぐ理久にメッセージを送りつけた。

『話したいことがあるから、部活終わるまで待っていて欲しい』

 すると『わかった』とだけ返ってきて、確かに理久は練習が終わるまで学校で待っていてくれた。
 空にすっかり夕日が輝き始めた頃、部室棟から出ると目の前の階段に理久が腰かけていた。

「おつ」

 そう言って立ち上がる理久に、俺は思わず言う。 

「理久、ごめん。その…………言わなくて」

「ああ。応援団の話だろ?」

「……牧田に頼まれて、結局最後まで断れなくて。先輩たちが来てもう手を挙げるしかない状況になって。まさかこんなことになるなんて思ってもいなかったんだ」 

 すると理久はくすりと笑う。

「……だと思ってた」

「え?」

「新汰は知らないと思うけど、今年の先輩たちクラス間ですごくばっちばちで。そっちのチームが応援合戦に勝つために牧田に声かけて、ガチ構成にするってあらかじめ噂になってたんだ」

 ガチ構成って何と思うも、聞けないまま理久は続ける。

「……それで、うちの先輩たちがどうしようかと悩んだ結果、俺に話が回って来たってわけ。ただ、まさかお前にも声がかかると思ってなかったけど」

「牧田は……リフトの土台が足りないって言ってたけど」

「……ふうん。なるほどね」

 どうやら理久には牧田や先輩の言い分がわかるらしい。
 確かに新体操部の牧田に対して器械体操経験者の理久ということは、ふたりにアクロバティックな何かをやらせて応援の質を上げるのだろうか。
 思わず確認してみたくなった俺は聞く。

「理久も……何かやるのか?」

「うん。古傷傷まない程度だけど、軽くやることになった」

 そうさらりと言った理久に、俺は少しだけ違和感を感じた。
 納得していないような、何か思うところのある言い方に俺はどきりとする。
 
 ――まさか、俺が勝手にいろいろ決めたから怒っているのだろうか?

 そう不安になったときだった。

「新汰」

 呼ばれた俺はぱっと顔を上げる。
 その少し不安そうな表情に見覚えがあった。
 以前これを見たときは、放課後俺に気持ちを伝えてくれたときだった。

「……俺も、新汰にお願いしていい?」

「お、お願い?」

「牧田からのお願いは聞いたんだろ?なら俺のお願いも少しは聞いてほしい」

 そう言われてしまった俺は反射的に言う。

「……あ、ああ。もちろん」

 すると理久は照れくさそうに視線を逸らして口を開いた。

「じゃあさ、今回の体育祭で俺が全部一位を取ったら、デートしてほしいんだけど」
 
「…………は?」

 突然そんな突拍子もないことを言われたら、こんな反応にもなるだろう。
 理久はおかまいなしにこちらに視線を合わせ、真剣に繰り返す。

「新汰、デートして欲しい」

「いや、何回も言わなくてもわかるけど、俺体育祭終わったら夏の大会のために忙しくなるし――」

「分かってる」

 その眼差しは真剣そのものだった。
 理久の瞳に俺の心は簡単に奪われて、口を閉ざしてしまう。

「夏休み、俺に時間作ってよ」

 俺はなんて単純なやつだろう。
 気付いたときには無言で頷いていて、理久は隣りで満足そうに微笑むだけだった。
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