【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉

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6章 京都への旅 side.理久

2 自由行動

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 南高校の修学旅行先は、例年定番の京都奈良だ。
 一日目の午前中に全員で東山エリアで清水寺や八坂神社の見学があったあと、昼食をとってから班行動の自由時間となる。
 京都に転々とする寺社が並ぶエリアを各々の班で選び、グループ学習として巡ることになっている。
 多くの学生たちが選びがちなのが、嵐山エリアだ。ここは、土産物屋やお洒落な飲食店が立ち並び、渡月橋や有名な竹林など写真撮影スポットも多く、女子人気が抜群だ。
 ただ、俺たちの班が選んだのはいわゆる「きぬかけの道エリア」だった。
  金閣寺や龍安寺、仁和寺という有名な寺社が密集しておりこちらも人気の観光エリアであるものの、どちらかというと年齢層は高めだ。
 だから良悟がそこにいかないかと提案したとき、一緒の班のイケイケ女子たちから反対されてしまった。
 それに対する良悟の言い分は、嵐山は観光客で混んでるし、こちらのほうが有名スポットを数多く巡れるというまっとうな理由だった。
 すっかり納得して説き伏せられた女子たちを前に、俺は小さな声で良悟に言う。

「良悟……本当にこれで大丈夫なのか」

「ああ。俺の情報網によると、西脇くんの班はこのルートを選んでそのまま下鴨神社まで行くらしい。お前、西脇くんと今も一緒に昼飯食べてるんだろ?そういう話はしないのか?」

 そう問われたら俺は何も言えなくなってしまう。
 最近、俺といるときの新汰は、どこか上の空なのだ。
 ぼうっとこちらを見ていると思えば、突然ぱっと視線をそらしたり。
 修学旅行の自由時間はどこへいくんだとさりげなく聞いても、俺はあまりわからないから牧田たちに任せてるんだと言うだけ。
 だから牧田に聞けば一発であることはわかったのだが、正直聞くのは嫌だった。
 あいつは俺の女装コンテストのことを今もネタにしていて、昔通っていた体操クラブの皆にばらまいたという。だからどこか信用できない。
 それに、あいつに聞いたら負けたような気分になるに違いない。
 だから俺は良悟の情報網とやらを信じることしかできなかった。


 そうして修学旅行は幕を開けた。
 しおりの日程どおり、一日目に清水寺をぐるりと回り、八坂神社や周辺寺社の見学をしたあとでみんなで昼食を取った。
 それが終わってから、いよいよ移動を始めようというところだった。
 辺りをちらちらと見回していた良悟が、お!と声を上げたと同時に女子の甲高い声が響いた。

「ねえ西脇君、清宮君いるよ!」

 牧田の声色が聞こえ、ちらりとそちらを見ると確かに新汰がいた。視線は合うもぱっと外されてしまい、それにもやもやしていると牧田がづかづかとやってきた。

「ねえ、二組もこれから自由時間だよね?そっちはこれからどこ行くの?」

「えっと、金閣寺とかそっち方面だけど」

「わー!私たちと同じじゃん」

 それに対して反応したのが脇にいた良悟だった。

「え、嘘、本当?新体操部のエース牧田さんだよね。俺たちも金閣寺方面ぐるっと回る予定なんだけど、一緒にいかない?」

「あ、いいねそれ!みんなはどう?」

 それに対して新汰たちが頷くなか、そのうちのひとりの男子が呆れたように言う。

「いいよ。そいつ一度言ったら聞かないし」

「え!相川くんと高橋くん知り合いなの?」

 驚く牧田をたしなめるように、その相川とやらは答える。

「小中同じなだけ」

 俺はひとり納得していた。
 良悟の言う情報網とはこの相川のことだったらしい。

「……つれないなあ。俺たち親友みたいなもんだろ」

「ただの腐れ縁だろ」

「まあ、そうとも言える!」

「あはは。ふたりとも仲良しなんだね。それで、そっちの班は一緒に回っても大丈夫?」

 牧田の問いに対して、こちらの女子たちは軽やかに全然大丈夫と笑った。
 どうやら相手方に新汰がいることに浮き足立っているらしい。俺ももちろん文句はないし、二班で一緒に向かうことはそうして決まった。

「よし!じゃあみんなで行こっか!」

 結局そのまま駅に向かい、電車に乗り込んだ。
 良悟の言っていたとおり、新汰たちは二班で回ることに少しも疑問に思っていないように思えた。
 なぜなら俺たちのような学生はそこら中にいて、全国から来ているらしく至る所にいる。それを前にしたら、京都という狭いエリア上で向かう先が重なっても、少しもおかしくないように思えた。

 電車に揺られながら、良悟は楽しそうに聞く。

「そっちはこのまま仁和寺まで行って、それから王道ルートの龍安寺?」

「そう。やっぱりせっかく京都に来たんだから、わびさびとか昔の人たちの文化を楽しみたいんだよね」

「うんうん。いいよねえ、わびさびとか趣とか!」

 牧田が頷くなかで新汰は言う。

「林はそういうの好きだよな。確か、相川もこのルートが絶対って言ってたっけ」

「西脇くん……俺のことはいいでしょ」

 すると良悟が相川という男に絡み始めた。

「は?お前そういうとこだってみんなに思われてっぞ」

「……うるさ。大丈夫だから。みんなお前と違って優しいんだって」

「は、それ俺が優しくないみたいじゃん。今すぐ発言撤回しろよー」

 俺は良悟がそんな風に雑に話すのを聞いたことがなかったから、驚いた。
 相川とは小中同じだと言っていたから、おそらく俺と新汰のようなものなのだろう。
 ふたりのじゃれあう距離が近くて、思わず羨ましくなってしまう。

 ――こんなだったら告白せずに……前みたいに親友同士を続けてればよかったかもしれない。

 そうすれば、今も前と変わらずに新汰の隣りにいられたのかもしれない。
 俺がひとり悶々としていたときだった。

「清宮君はわびさびって感じじゃなさそうだよね」

「え、俺?」

 牧田に声をかけられつい黙ってしまう。
 皆の視線が俺に向き、何とか言う。

「俺は……そうだな、まあどこ行っても楽しめるからなあ。どちらかというと新汰がこういうところ好きだろ」

 そう言ったあとで大丈夫かと俺は心配する。これまで新汰に対して、突然話題を振らないように配慮していたから。
 しかし今の新たにとってそれは不要だった。

「……ああ。俺はこういう静かで余計なものをそぎ落としたような感じ、すごく好きだよ」

 そう言って皆と共に笑っていた。
 一生に一回の高校の修学旅行はこんな感じで幕を開けた。
 楽しそうにする新汰を前に、俺は安心するもひとり疎外感を感じていた。

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