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9話 彼氏と大事な約束(ずっと一緒にいるために)
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「私とひとつ、約束をしよう」
泣き続ける彼の前に、手を差し出す。震える彼の手が、ゆっくりと重ねられた。
「ねぇ、少し家に上がっていかない?」
私の家の前。いつもなら帰るのを渋る高橋くんを説得しているところを、今日は引き留めた。私の言葉に嬉しそうに笑い、大きく頷いた彼を見つめる。
「どうかしたの?真木さん」
きょとんとした表情で私を見る高橋くん。そこにあの日見た、凶暴なまでの狂気は見当たらない。
──私の見間違いだった?
いいや、確かに見たのだ。私以外に向けられる高橋くんのあの狂気を。
「いや何でもないよ。この部屋に入って待ってて」
高橋くんからの問いかけに首を振り、彼を私の部屋に案内する。キョロキョロと落ち着きなく部屋を見回す彼に小さく笑う。
「適当に座って。すぐ戻って来るから」
「あ、うん・・・・・・」
自分の行動に照れながら小さく座る彼を確認して、お茶を取りに部屋を出た。
バタンと扉を閉めた音が、やけに大きく廊下に響く。
──さぁ、もう逃げることは許されない。
コトリ、と机に置いたコップが音をたてる。
「このお茶すごくおいしいね」
ほぅ・・・と息をつき高橋くんが呟く。少し緊張した様子の彼に癒されながら、口を開いた。
「・・・ねぇ、聞いてもいいかな?」
「なに?」
「私のこと、好き?」
無防備な様子の彼に聞く。
あっという間に頬を染めた彼は黙ったまま何度も首を縦に振る。そこに嘘はない。
そんな彼を私はこれから、追い詰める。ツキリと痛む胸を無視し、高橋くんに言う。
「そっか、私も高橋くんが好きだよ」
「・・・・・・でも、人を傷つける人は、嫌い」
私の言葉に、赤面していた彼の顔が一瞬で青褪める。カタカタと彼の体が震え始める。
「この前、人をバットで殴ったでしょ?」
「あれは、違っ・・・、でも!」
「殴ったでしょ?」
混乱か、焦りか、言葉がまとまらない様子の彼に、念押しするようにもう一度告げる。
誤魔化しは許さない。そう口外に伝えるように。
「何で、あんなことをしたの?」
震える彼から目を離さず、問い詰める。
怯えた様子の彼を抱き締めたい感情に見舞われながらも、じっと彼を見つめた。
そんな私の様子に、高橋くんが口を開く。私より大きな体を小さく丸めながら。
「僕は、真木さんが傷つくのが嫌なだけなんだよ。だって真木さんが始めてだったんだ。僕をなんの打算もなく心配してくれたのは・・・」
ポツリ、ポツリと小さな声で彼が言う。
泣きそうに震えた声で、一言一言大切そうにゆっくりと続ける。
「好きだなって思ったら止まらなかった。ずっと一緒にいたくて、離れていかないでほしくて、・・・・・・一人にしないでって、そう思った」
「大事に、したかった。僕だけのものにしたかった・・・・・・」
俯いた彼の頬を、涙が伝う。
ひとつ、またひとつと涙が彼の頬に後を残す。嗚咽混じりに言葉を重ねる高橋くんを見つめる。
「だから、許せなかった。真木さんに傷をつける奴が、僕から奪おうとする奴が、・・・・・・・・・皆、消えてしまえば良いのにって」
「僕が、消さないとって・・・・・・」
「高橋くん・・・」
思わず彼に声を掛けていた。彼が顔をあげる。青褪めた、絶望に満ちた顔。
「・・・・・・こんな僕は、もう嫌いになった?僕はもう、いらないの?」
暗く、淀んだ瞳が私を見つめた。その瞳に不安を滲ませて。彼は私に手を伸ばし、縋りつく。
「僕を、捨てないでぇ・・・・!」
ボロボロと涙を流し、悲痛な叫びをあげる高橋くんに私は手を差し出し、告げた。
泣きながら、しっかりと私の手を握る彼の頬を撫でる。優しく、慰めるように。
「私は、高橋くんに人を傷付けて欲しくないだけなの」
「高橋くんが私を大切に思ってくれてるように、私も高橋くんを大切にしたい」
「この手を汚して欲しくないの」
額に、目元に、頬に、指先に、小さくキスをする。嫌いにならないと、大好きなんだと伝えるように何度も。
「だから、約束しよう?絶対に、人を傷付けないって。どうしても気持ちが押さえられないなら、私に言うって」
「何で僕を嫌いにならないの・・・?まだ、一緒にいてくれるの・・・?」
泣き止んだ彼が、呆然と呟く。何が起こったのかわからないと、そんな顔で。
そんな高橋くんの腕を引き寄せ、私の胸に抱き締める。
「ずっと一緒って言ったでしょ?」
「離れて行かないよ」
彼を安心させるように、頭を撫でる。
「ほんと?ずっと一緒?」
呆然と呟き、また泣き出した彼に笑い口を開く。
「私と約束出来るならね」
「約束する!約束するから、僕とずっと一緒にいて・・・?」
私の言葉に間髪いれず返事した彼に頷く。すると泣きながら、彼は笑った。
私の大好きなあの、ふにゃりとした笑顔で。
彼氏と私の大事な約束。(ずっと一緒にいるために、約束しよう)
泣き続ける彼の前に、手を差し出す。震える彼の手が、ゆっくりと重ねられた。
「ねぇ、少し家に上がっていかない?」
私の家の前。いつもなら帰るのを渋る高橋くんを説得しているところを、今日は引き留めた。私の言葉に嬉しそうに笑い、大きく頷いた彼を見つめる。
「どうかしたの?真木さん」
きょとんとした表情で私を見る高橋くん。そこにあの日見た、凶暴なまでの狂気は見当たらない。
──私の見間違いだった?
いいや、確かに見たのだ。私以外に向けられる高橋くんのあの狂気を。
「いや何でもないよ。この部屋に入って待ってて」
高橋くんからの問いかけに首を振り、彼を私の部屋に案内する。キョロキョロと落ち着きなく部屋を見回す彼に小さく笑う。
「適当に座って。すぐ戻って来るから」
「あ、うん・・・・・・」
自分の行動に照れながら小さく座る彼を確認して、お茶を取りに部屋を出た。
バタンと扉を閉めた音が、やけに大きく廊下に響く。
──さぁ、もう逃げることは許されない。
コトリ、と机に置いたコップが音をたてる。
「このお茶すごくおいしいね」
ほぅ・・・と息をつき高橋くんが呟く。少し緊張した様子の彼に癒されながら、口を開いた。
「・・・ねぇ、聞いてもいいかな?」
「なに?」
「私のこと、好き?」
無防備な様子の彼に聞く。
あっという間に頬を染めた彼は黙ったまま何度も首を縦に振る。そこに嘘はない。
そんな彼を私はこれから、追い詰める。ツキリと痛む胸を無視し、高橋くんに言う。
「そっか、私も高橋くんが好きだよ」
「・・・・・・でも、人を傷つける人は、嫌い」
私の言葉に、赤面していた彼の顔が一瞬で青褪める。カタカタと彼の体が震え始める。
「この前、人をバットで殴ったでしょ?」
「あれは、違っ・・・、でも!」
「殴ったでしょ?」
混乱か、焦りか、言葉がまとまらない様子の彼に、念押しするようにもう一度告げる。
誤魔化しは許さない。そう口外に伝えるように。
「何で、あんなことをしたの?」
震える彼から目を離さず、問い詰める。
怯えた様子の彼を抱き締めたい感情に見舞われながらも、じっと彼を見つめた。
そんな私の様子に、高橋くんが口を開く。私より大きな体を小さく丸めながら。
「僕は、真木さんが傷つくのが嫌なだけなんだよ。だって真木さんが始めてだったんだ。僕をなんの打算もなく心配してくれたのは・・・」
ポツリ、ポツリと小さな声で彼が言う。
泣きそうに震えた声で、一言一言大切そうにゆっくりと続ける。
「好きだなって思ったら止まらなかった。ずっと一緒にいたくて、離れていかないでほしくて、・・・・・・一人にしないでって、そう思った」
「大事に、したかった。僕だけのものにしたかった・・・・・・」
俯いた彼の頬を、涙が伝う。
ひとつ、またひとつと涙が彼の頬に後を残す。嗚咽混じりに言葉を重ねる高橋くんを見つめる。
「だから、許せなかった。真木さんに傷をつける奴が、僕から奪おうとする奴が、・・・・・・・・・皆、消えてしまえば良いのにって」
「僕が、消さないとって・・・・・・」
「高橋くん・・・」
思わず彼に声を掛けていた。彼が顔をあげる。青褪めた、絶望に満ちた顔。
「・・・・・・こんな僕は、もう嫌いになった?僕はもう、いらないの?」
暗く、淀んだ瞳が私を見つめた。その瞳に不安を滲ませて。彼は私に手を伸ばし、縋りつく。
「僕を、捨てないでぇ・・・・!」
ボロボロと涙を流し、悲痛な叫びをあげる高橋くんに私は手を差し出し、告げた。
泣きながら、しっかりと私の手を握る彼の頬を撫でる。優しく、慰めるように。
「私は、高橋くんに人を傷付けて欲しくないだけなの」
「高橋くんが私を大切に思ってくれてるように、私も高橋くんを大切にしたい」
「この手を汚して欲しくないの」
額に、目元に、頬に、指先に、小さくキスをする。嫌いにならないと、大好きなんだと伝えるように何度も。
「だから、約束しよう?絶対に、人を傷付けないって。どうしても気持ちが押さえられないなら、私に言うって」
「何で僕を嫌いにならないの・・・?まだ、一緒にいてくれるの・・・?」
泣き止んだ彼が、呆然と呟く。何が起こったのかわからないと、そんな顔で。
そんな高橋くんの腕を引き寄せ、私の胸に抱き締める。
「ずっと一緒って言ったでしょ?」
「離れて行かないよ」
彼を安心させるように、頭を撫でる。
「ほんと?ずっと一緒?」
呆然と呟き、また泣き出した彼に笑い口を開く。
「私と約束出来るならね」
「約束する!約束するから、僕とずっと一緒にいて・・・?」
私の言葉に間髪いれず返事した彼に頷く。すると泣きながら、彼は笑った。
私の大好きなあの、ふにゃりとした笑顔で。
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