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其の弐拾
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「何故……何故、暁明に会えないのですか?」
飛龍に詰め寄るが、今度は飛龍の方が顔を背けた。
暁明に何かあったのかと、青蝶はさらに飛龍に喰らいつく。
「この話はできるだけ青蝶には話したくなかった。決して良い話ではない。それでも聞くか?」
良い話ではない……これがどういう内容なのか、僅かにも想像できない。
この数ヶ月の間に、暁明が病気にかかってしまったのか……そのくらいしか青蝶は思い浮かばなかった。
それでも暁明について知っていることがあるなら教えて欲しいと哀願する。
飛龍は少しの間、無言で考え込んでいた。そうして口を開いたかと思えば「今日はもう遅いから休みなさい」と言うではないか。
「気になって眠れないので、今、聞かせてください」と言いたかった。しかし飛龍も忙しい仕事の後で来てくれている。これ以上粘って時間を取らせるのも悪いと思ってしまう。
早く自室へ戻って体を休めたいだろう。
「……分かりました」
力無く答えるしかない。
「明日、必ず話しにくる。暁明のことも大切だろうが、私の気持ちももっと理解してほしい。もし眠れぬのなら、私だけを想って過ごしてほしい」
「殿下のお気持ち……」
「そうだ。今夜は怒鳴ったりして、すまなかった。でも、青蝶がいかに鈍感なのかが分かったよ。お蔭でやるべきことが明確になった」
そう言うと、飛龍は青蝶の額に口付けて帰って行った。
一人になると飛龍のことと暁明のこと、交互に考え込んでしまい、本当に眠れなくなってしまった。明け方まで飛龍の気持ちを理解しようとしたが、ハッキリと飛龍の口から言ってくれない限り、自分では分からないと結論づけた。これも逃げていると言われれば仕方ないとも思う。それを承知で、今日ハッキリ言ってくださいと申し出る覚悟だけは決まった。
暁明については、全く見当もつかない。
あんなに『健康そのもの!』と言った感じの男だ。たとえ急病にかかったとしても、会えないほどの状態になるとは考え難い。
自分の難病ですら、数年かけて悪化したのをふまえると、病気で会えないのはきっと見当違いだろう。しかし他の理由など、青蝶の発想力では何も思いつかなかった。
暁明にあれだけ懐いていたのに、こうして考えると何も知らなかったと自覚しざるを得ない。自分では人に甘えるのは苦手だと思っていたが、暁明には随分甘えていたと反省した。
早朝、ようやくウトウトし始め、朝日が昇るとほぼ同時に眠りについた。
それでも数時間後には自然と目が覚めた。青蝶が起きたのを確認すると、瘰が食事を運んでくれる。
「眠れなかったようですね」
「瘰さんに言われた通り殿下に話してみたのですが、結果的に怒らせてしまいました」
「怒る? まさか! 落胆しているのでしょう。殿下のことだから、もう次の対策を考えていらっしゃるかと……」
「次の対策?」
「いえ、私の憶測ですので……」
瘰は長きに渡り飛龍に仕えていただけあり、自分よりもずっとか飛龍を理解している。青蝶はそれを羨ましく感じた。それを瘰に言うと、「殿下が幼少期からの付き合いですので」と話してくれた。負けず嫌いや諦めない精神は、子供の頃から変わらないと教えてくれたのは嬉しかった。
また飛龍の幼少期の話を聞かせてくださいと話していると、飛龍が睡蓮殿を訪れたため、瘰は見張りをすると、外へ出た。
「瘰とも随分仲良くなったようだな」
「良くしてくださっています。最近は話し相手にもなってくれていますし」
「ほう、それは珍しい。瘰は気難しい性格で有名なんだが」
「瘰さんが? そんなの信じられません。確かに最初は怖かったですが……話してみると、とても大らかで頼りになります」
「そうか。まぁ、だから私の側近として仕えてもらっているのだが……自分以外の人が褒められるのは妬けるな」
飛龍は自嘲しながら言った。
「瘰さんを、恋愛の目で見ているわけではありません。本当に、純粋にそう思っただけで……」
「分かっている。万が一、其方が瘰に惹かれたとしても私が振り向かせてみせるよ。運命の番だからね」
「ふふ……本当に、殿下は瘰さんのおっしゃる通りの人柄のようです」
「瘰のやつ、青蝶に何を話したのだ?」
焦っている飛龍は初めて見る、思えば昨夜からいろんな顔を見ている気がする。
それも何だか楽しく感じた青蝶だった。
「それで、昨夜の続きを話に来た。心の準備は出来ているか?」
「暁明のことですね。自分では検討もつかないので、包み隠さず教えてください」
飛龍はいつになく真剣に言葉を選んでいる様子だった。
青蝶も息を呑んで飛龍の言葉を待つ。
その後、飛龍から教えられた暁明の事実をどう受け止めれば良いのか、青蝶は戸惑うことになる。
飛龍に詰め寄るが、今度は飛龍の方が顔を背けた。
暁明に何かあったのかと、青蝶はさらに飛龍に喰らいつく。
「この話はできるだけ青蝶には話したくなかった。決して良い話ではない。それでも聞くか?」
良い話ではない……これがどういう内容なのか、僅かにも想像できない。
この数ヶ月の間に、暁明が病気にかかってしまったのか……そのくらいしか青蝶は思い浮かばなかった。
それでも暁明について知っていることがあるなら教えて欲しいと哀願する。
飛龍は少しの間、無言で考え込んでいた。そうして口を開いたかと思えば「今日はもう遅いから休みなさい」と言うではないか。
「気になって眠れないので、今、聞かせてください」と言いたかった。しかし飛龍も忙しい仕事の後で来てくれている。これ以上粘って時間を取らせるのも悪いと思ってしまう。
早く自室へ戻って体を休めたいだろう。
「……分かりました」
力無く答えるしかない。
「明日、必ず話しにくる。暁明のことも大切だろうが、私の気持ちももっと理解してほしい。もし眠れぬのなら、私だけを想って過ごしてほしい」
「殿下のお気持ち……」
「そうだ。今夜は怒鳴ったりして、すまなかった。でも、青蝶がいかに鈍感なのかが分かったよ。お蔭でやるべきことが明確になった」
そう言うと、飛龍は青蝶の額に口付けて帰って行った。
一人になると飛龍のことと暁明のこと、交互に考え込んでしまい、本当に眠れなくなってしまった。明け方まで飛龍の気持ちを理解しようとしたが、ハッキリと飛龍の口から言ってくれない限り、自分では分からないと結論づけた。これも逃げていると言われれば仕方ないとも思う。それを承知で、今日ハッキリ言ってくださいと申し出る覚悟だけは決まった。
暁明については、全く見当もつかない。
あんなに『健康そのもの!』と言った感じの男だ。たとえ急病にかかったとしても、会えないほどの状態になるとは考え難い。
自分の難病ですら、数年かけて悪化したのをふまえると、病気で会えないのはきっと見当違いだろう。しかし他の理由など、青蝶の発想力では何も思いつかなかった。
暁明にあれだけ懐いていたのに、こうして考えると何も知らなかったと自覚しざるを得ない。自分では人に甘えるのは苦手だと思っていたが、暁明には随分甘えていたと反省した。
早朝、ようやくウトウトし始め、朝日が昇るとほぼ同時に眠りについた。
それでも数時間後には自然と目が覚めた。青蝶が起きたのを確認すると、瘰が食事を運んでくれる。
「眠れなかったようですね」
「瘰さんに言われた通り殿下に話してみたのですが、結果的に怒らせてしまいました」
「怒る? まさか! 落胆しているのでしょう。殿下のことだから、もう次の対策を考えていらっしゃるかと……」
「次の対策?」
「いえ、私の憶測ですので……」
瘰は長きに渡り飛龍に仕えていただけあり、自分よりもずっとか飛龍を理解している。青蝶はそれを羨ましく感じた。それを瘰に言うと、「殿下が幼少期からの付き合いですので」と話してくれた。負けず嫌いや諦めない精神は、子供の頃から変わらないと教えてくれたのは嬉しかった。
また飛龍の幼少期の話を聞かせてくださいと話していると、飛龍が睡蓮殿を訪れたため、瘰は見張りをすると、外へ出た。
「瘰とも随分仲良くなったようだな」
「良くしてくださっています。最近は話し相手にもなってくれていますし」
「ほう、それは珍しい。瘰は気難しい性格で有名なんだが」
「瘰さんが? そんなの信じられません。確かに最初は怖かったですが……話してみると、とても大らかで頼りになります」
「そうか。まぁ、だから私の側近として仕えてもらっているのだが……自分以外の人が褒められるのは妬けるな」
飛龍は自嘲しながら言った。
「瘰さんを、恋愛の目で見ているわけではありません。本当に、純粋にそう思っただけで……」
「分かっている。万が一、其方が瘰に惹かれたとしても私が振り向かせてみせるよ。運命の番だからね」
「ふふ……本当に、殿下は瘰さんのおっしゃる通りの人柄のようです」
「瘰のやつ、青蝶に何を話したのだ?」
焦っている飛龍は初めて見る、思えば昨夜からいろんな顔を見ている気がする。
それも何だか楽しく感じた青蝶だった。
「それで、昨夜の続きを話に来た。心の準備は出来ているか?」
「暁明のことですね。自分では検討もつかないので、包み隠さず教えてください」
飛龍はいつになく真剣に言葉を選んでいる様子だった。
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