【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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本編

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 リアム様は直ぐに立ち上がり、しゃがみ込んだ俺の元へと近づいてくる。

「ベッドまで移動しよう。ここでは眠りもできない」

 部屋の床に蹲った体勢の俺に手を伸ばす。

 そっと背中に触れた瞬間、ビクンッっと体が跳ねた。

「マヒロ、すまない。今だけ触れるよ」

 躊躇いもなく抱き上げるとベッドへと運んでいく。

 触れらた所から熱を帯びていく。

 薬が切れただけでこんな症状になるなんて……。

 既に荒くなっている呼吸、虚な視界。

 体が本能でαを欲している。

「な、んで……。こんなの、今までなかった……」

 苦しくて涙が止まらない。

 はやく抑制剤の注射を打って楽になりたい。そう思っているのに、目の前にいるリアム様から目が離せない。リアム様を掴んだこの手を離すことができない。

「マヒロ、直ぐに医務室の先生を呼んでくるから」

 シャワーを浴びたばかりなのに、額には汗が滲んでいる。

 助けてほしい。

 もう何年もヒートを経験していなかった。

 先輩に監禁されていたあの頃は、ヒートの苦しみよりも先輩からの行為に怯えていた。

 それでもこんなにも苦しかっただろうか。

 意識が朦朧としてきた。

 全身に力が入らないのに、リアム様を掴むこの手だけは意地でも離さなかった。

「……けて……。たす……けて……」

「マヒロ、大丈夫だ。直ぐに注射を打ってもらおう」

 リアム様が俺の手を優しく解こうとする。

 また、俺だけが発情している。

 このフェロモンは、リアム様には届いていないのかもしれない。

 自分だけが、物欲しそうにαを見ている。俺はこの時、気付いてしまった。俺の方がリアム様を求めているのだと。

 そんな状況が悲しくて、惨めだった。

 こんなにも酷いヒートを起こしているΩを前にしても、顔色一つ変えないリアム様が運命の番? やっぱり、それは嘘だ。

 あのジェイクでさえ、抗えなかったんだ。

 いくら訓練を受けているとはいえ、俺のヒートはこれで二回目。

 こんなにも反応しないαを、どう信じろというのだ。

 毎晩、毎晩、こうして俺にヒートを起こさせて、俺がどんなに強がっても無駄だと、思い知らせようとしているのか。

 苦しみの中で悔しさが滲み出る。

「マヒロ、手を離して。少しの間だけ、我慢できる?」

 穏やかな口調がこんなにも癪に触ったことはない。

 本当に、俺の運命の番なら、リアム様自身の力で沈めてほしい。

「離さない……」

「それではマヒロがずっと苦しい思いをする羽目になる」

「リアム様が……抑えてよ。……運命の、番……なら」

 息切れしながらワザと煽った。これでも何もないのなら、運命だろうがなんだろうが、番なんてならないと腹を括った。

「君がちゃんと私に好意を持つまでは、我慢しようと思っていたのに。もう、止められないよ?」

 リアム様の視線が痛いほど突き刺さる。

 αの本性が現れた。
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