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10.自宅で死んだら不審死扱い
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翌朝、窓から差し込む光で目を覚ました。
カーテンを閉めないままで眠ってしまったらしい。
見慣れない殺風景な部屋に一瞬あれっと思ったけれど、すぐに昨日のことを思い出す。
寝巻きにも着替えずそのまま眠ってしまったので、髪も服もぐちゃぐちゃだ。
それに何より、お腹が空いた。
6歳はまだまだ育ち盛り、胃のキャパシティが小さいからかたくさん食べられない代わりに、すぐお腹が空く気がする。
ベッドを降りる。私の服はすでにクローゼットに並べられていて、昨日はなかったトランクが部屋の隅に置いてあった。
きっとアイシャの両親も、娘の嫁ぎ先に使用人の一人もいないとは思わなかっただろう。
前世のように魔法が十分に使いこなせれば、身の回りのことには困らないのだけれど……今の私にはそれだけの魔力がない。この手で何とかするしかないのである。
ぐぅ、とお腹が鳴った。
何はなくとも、まずは食事だ。
健全な精神は健全な肉体から生まれる。魔法使いだって健康体に越したことはない。
とにかくお腹がすいた。空腹がこんなに思考を削がれるものだとは。
精神と肉体は必ず相互に作用しあっている。
どうやら肉体に引っ張られていくらか精神性も変化しているらしい。
空腹は子どもにとっては由々しき事態だ。
廊下を歩いて、ノアの部屋の扉をノックする。けれども、返事がない。
ドアノブを握るが、鍵がかかっているのか回らなかった。
それなら。
指先に魔力を集中させる。魔力量が少ないので、一番簡易的なもので……
「《開錠》」
発動の呪文を唱えると、ガチャリと音がした。
子どもの魔力であっても、簡単な鍵くらいなら開けることが出来ると分かった。限界値が分からないのはいざという時に不安なので、いつか試しておかなくては。
ドアノブを回して、部屋に入る。
カーテンが閉まっているからだろうか、薄暗い。
ノアの姿を探すが、ベッドにはいなかった。
はて。もう出かけてしまったのだろうか。
「もう開錠の魔法が使えるのか」
声がして、思わずその場で飛び上がった。
慌てて振り向くと、ドアから死角になるような部屋の隅にひっそりと座っているノアを発見した。
どうして、自分の部屋で、そんな隅っこに。
「そ、そこで何を」
「……このまま、ここで朽ちてしまおうと思って」
そんなことを言う同居人は嫌すぎる。
勝手に朽ちないでほしい。
自宅で死んだら不審死扱いで魔法警察が来てしまう。
「先生を蘇生させることも出来ない僕なんてカメムシみたいなもんだよ」
「かめむし」
「僕のことは放っておいて」
そう言って俯くノア。
そんなことを言われても彼が朽ち果てるまで待っているわけにもいかない。途方に暮れてそのつむじを見つめていると、ぐぅうと私のお腹が鳴った。
あまりの音量に、ノアが顔を上げる。
驚きに見開かれたまんまるの目は、私の記憶の中の彼と少しだけ、似ている気がした。
ずんずんと彼に歩み寄って、その腕を取る。
「旦那さま!」
「だ、だんなさま!?」
「私お腹が空きました!!」
両手でノアの腕を引っ張る。足を踏ん張って全力で引っ張っても、ノアを立たせることなど出来るわけがない。
でも私は知っていた。
昨日何だかんだ言いながらも寝かしつけにきてくれたのだ。彼はきっと、私についてきてくれる。
「……だから?」
「ご飯食べましょう! ごはん!」
「君、本当に図々しいな……」
「早くしないと旦那さまが朽ちる前に私が餓死します!」
私の言葉に、しばらく真紅の瞳をぱちぱちと瞬かせていたノアが、やれやれと首を振った。
「餓死は困る……警察来ちゃうだろ」
そう言いながら、ノアが立ち上がる。
私は勝ち誇った顔で彼の手を引き、キッチンへと向かった。
カーテンを閉めないままで眠ってしまったらしい。
見慣れない殺風景な部屋に一瞬あれっと思ったけれど、すぐに昨日のことを思い出す。
寝巻きにも着替えずそのまま眠ってしまったので、髪も服もぐちゃぐちゃだ。
それに何より、お腹が空いた。
6歳はまだまだ育ち盛り、胃のキャパシティが小さいからかたくさん食べられない代わりに、すぐお腹が空く気がする。
ベッドを降りる。私の服はすでにクローゼットに並べられていて、昨日はなかったトランクが部屋の隅に置いてあった。
きっとアイシャの両親も、娘の嫁ぎ先に使用人の一人もいないとは思わなかっただろう。
前世のように魔法が十分に使いこなせれば、身の回りのことには困らないのだけれど……今の私にはそれだけの魔力がない。この手で何とかするしかないのである。
ぐぅ、とお腹が鳴った。
何はなくとも、まずは食事だ。
健全な精神は健全な肉体から生まれる。魔法使いだって健康体に越したことはない。
とにかくお腹がすいた。空腹がこんなに思考を削がれるものだとは。
精神と肉体は必ず相互に作用しあっている。
どうやら肉体に引っ張られていくらか精神性も変化しているらしい。
空腹は子どもにとっては由々しき事態だ。
廊下を歩いて、ノアの部屋の扉をノックする。けれども、返事がない。
ドアノブを握るが、鍵がかかっているのか回らなかった。
それなら。
指先に魔力を集中させる。魔力量が少ないので、一番簡易的なもので……
「《開錠》」
発動の呪文を唱えると、ガチャリと音がした。
子どもの魔力であっても、簡単な鍵くらいなら開けることが出来ると分かった。限界値が分からないのはいざという時に不安なので、いつか試しておかなくては。
ドアノブを回して、部屋に入る。
カーテンが閉まっているからだろうか、薄暗い。
ノアの姿を探すが、ベッドにはいなかった。
はて。もう出かけてしまったのだろうか。
「もう開錠の魔法が使えるのか」
声がして、思わずその場で飛び上がった。
慌てて振り向くと、ドアから死角になるような部屋の隅にひっそりと座っているノアを発見した。
どうして、自分の部屋で、そんな隅っこに。
「そ、そこで何を」
「……このまま、ここで朽ちてしまおうと思って」
そんなことを言う同居人は嫌すぎる。
勝手に朽ちないでほしい。
自宅で死んだら不審死扱いで魔法警察が来てしまう。
「先生を蘇生させることも出来ない僕なんてカメムシみたいなもんだよ」
「かめむし」
「僕のことは放っておいて」
そう言って俯くノア。
そんなことを言われても彼が朽ち果てるまで待っているわけにもいかない。途方に暮れてそのつむじを見つめていると、ぐぅうと私のお腹が鳴った。
あまりの音量に、ノアが顔を上げる。
驚きに見開かれたまんまるの目は、私の記憶の中の彼と少しだけ、似ている気がした。
ずんずんと彼に歩み寄って、その腕を取る。
「旦那さま!」
「だ、だんなさま!?」
「私お腹が空きました!!」
両手でノアの腕を引っ張る。足を踏ん張って全力で引っ張っても、ノアを立たせることなど出来るわけがない。
でも私は知っていた。
昨日何だかんだ言いながらも寝かしつけにきてくれたのだ。彼はきっと、私についてきてくれる。
「……だから?」
「ご飯食べましょう! ごはん!」
「君、本当に図々しいな……」
「早くしないと旦那さまが朽ちる前に私が餓死します!」
私の言葉に、しばらく真紅の瞳をぱちぱちと瞬かせていたノアが、やれやれと首を振った。
「餓死は困る……警察来ちゃうだろ」
そう言いながら、ノアが立ち上がる。
私は勝ち誇った顔で彼の手を引き、キッチンへと向かった。
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