元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が私への初恋を拗らせていた〜

岡崎マサムネ

文字の大きさ
21 / 64

20.すごいのは私じゃなくて、ノアなのでは

しおりを挟む
「それでいて決して頭でっかちにならず常に実践を交えて魔法の研究を進めていたところも他の研究者とは一線を画しているんだ。時に今までの定石を覆すような理論も机上の空論に留まらずきちんと実験と考察の繰り返しで再現性を担保されているところが国内外問わず多くの研究者から評価されているし、調査と実験、考察すべてにおいて深く広く進められていることから先生が論文を発表した分野では『先行研究が強すぎる』って他の研究者が避けるという話があるくらいで、とにかく先生の魔法研究の第一人者としての功績は計り知れない」
「はぁ」
「詠唱じゃなく魔法陣が主流になったのはそもそも利便性と人為的なミスを防ぐことが目的だけれど、それだけじゃなく他者に何の魔法陣か読み解かれないようにする意図もあったわけで。だけど先生の提唱した記法ではあえて分かりやすい記法にして他者と共有する魔法陣と秘匿する魔法陣、それぞれをきちんと分類・体系化することでより効率的な魔力の伝達を可能にしたんだ。これによって魔法は旧来の魔力の多い魔法使いだけが使うものから魔力が少ない人間でも簡便に魔法が利用できるものに変わった。分かる? この数年で、魔法はもう魔法使いだけのものじゃなくなった。これがどれだけこの国を、人を豊かにしたか。この業績は第六次魔法革命とも呼ばれて今は魔法史の教科書にも載ってるし、子どもにだって分かるだろ」
「へぇ」
「先生の魔法に関する卓越した能力は今更僕が語る必要もないくらい誰でも知っていることだけど」

 知らないけど。
 本人が全然知らないけど。

 確かにたくさん論文は書いた。誰かにこの発見を共有したくて、先人たちの考察の検証を広めたくて。
 一時期魔力伝達の効率化にハマって極めるところまで極めてみようって、いろいろ魔法陣の記法を考えた。逆に効率が悪い魔法陣の研究もした。
 でもどれも、今までの先行研究や古文書なんかを読み解いて組み合わせただけで、私のオリジナルというものでもない。

 しかも特に何か意図があったわけではなく、本当にやりたいことをやっただけだ。
 結果として多くの人が魔法に触れる機会が増えたなら、それはもちろん嬉しいことだけど。

「詳しく知りたければ先生の本がここに」
「先生の本」
「僕が書いた。先生の考えをまとめただけだけど」

 ノアが指を振ると、廊下から本がひゅんひゅんと飛んできて机に積み上がった。
 分厚い。1冊あたりの厚みが辞典だろうかと思うくらいのものがどかどか積み上がって、反対側に座るノアの顔が見えなくなった。

 ノアの手が一番上の本を手に取る。

「これが先生の研究していた記法について、こっちが魔法理論の体系化、これは魔力伝達効率の証明と実験結果」

 机に本が並べられる。
 確かに私の名前も書かれているけれど、これは私の本ではなくてノアの本では。

 ぱらりと表紙をめくってみる。
 中身が充実していて驚いた。
 私が書き散らして手当たり次第に発表していた研究結果や論文がきれいにまとめられていて、誰が読んでも分かりやすい順に整頓され、補足されている。

 目次を見ただけで分かる。
 そう、それ。私はこれが言いたかったんだ。

 そこで悟った。
 ノアが私の業績として語ったそれのうち、何割か……というか大半は、こうして彼が人々に分かりやすいようにまとめてくれたから生まれたものなんじゃ。

 つまりすごいのは私じゃなくて、ノアなのでは。
 私へのそれはノアの過大評価であって、世間からの評価はノアの方が断然高いのでは。

「あとこれが伝記」
「伝記」

 伝記が書かれている。
 本人の知らない間に、ていうか死んでいるわずか数年の間に伝記が書かれている。
 これはちょっと恐ろしかったので興味本位で開く気にはなれなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!

宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。 静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。 ……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか? 枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと 忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称) これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、 ――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

処理中です...