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21.一年に一歳順調に取るよ
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「先生は人間的にも素晴らしい人だった。これだけの功績がありながら、決して奢ることも気取ったところもなくて。まだただの、生意気な子どもだった僕にも、嫌な顔せず接してくれて。誰に対しても裏表なく、どんな時でも明るくて前向きで。魔法のことを考えているときの真面目な表情と、やさしい笑顔とのギャップもあって。まさに神の采配としか思えない絶妙なバランスっていうか。見た目だってほとんど芸術品で、燃えるような赤い髪はまるで薔薇の花みたいだった。それでいて雪のように白い肌とのコントラストが美しくて。すらりと手足が長い体つきも人目を惹いたし、琥珀色の瞳はこの世のすべてを見透かしているようにいつもきらきら澄んで輝いていて、人を惹きつけた。どこが好きっていうか、先生のことを好きにならない人間なんてこの世にいるわけないだろ」
「アンタそれ絶対幻想入ってるわよ」
ジェイドがばっさりと切り捨てた。
私もそう思う。
誰の話、それ。絶対私じゃない。
幻想がえげつなさすぎる。
ノアと接していた時にはこんなに、過剰に神聖視されている感じはしなかったのに。
会わない間に記憶が恐るべきスピードで美化されている。しかも死んだことでさらにありえないブーストが掛かって、もはや神格化の域に至っていた。
そんな人間はいないよ。
そんな人間はうっかり自爆で死んだりしないよ。気をしっかり持って。
「そんな人が一生独身でいたなんておかしいじゃない」
「先生にふさわしい男がいなかっただけだ」
ノアがきっぱりと言い切った。
そんなことないよ。単純に男性から好かれてなかっただけだよ。
魔法に夢中でそれ以外のありとあらゆるものに対して生涯ずっとご縁がなかっただけだよ。
ジェイドがため息をついて、ノアの手元に水を注いだグラスを置く。
「そんなに好きなのにどうしてアタックしなかったのよ。アンタ女の子にはモテるじゃない」
「は? 先生が僕みたいなガキ相手にするわけないだろ解釈違いだ」
「アンタ本当にめんどくさいわね……」
即答で言い切ったノアを、ジェイドが冷めた目で見ていた。
死んだせいかどうにも過剰に美化されているようだけれど、ノアの言う「好き」は師匠に対する尊敬というか憧れというか、そういうものなのかと思っていたけれど……見た目や恋愛遍歴まで美化されるとなると何となく、ちょっと違うのだろうかと思えてきた。
ノアが水を一気に呷る。
「先生にふさわしい男になりたくて、魔法の勉強だって頑張ったし、大人にもなったし……あの頃と比べたら、少しはマシになったと思うけど。今先生がここにいたとしても……やっぱり僕じゃまだまだ、先生の隣に並ぶには足りない」
「その人、生きてたらアンタより相当年上でしょ? オバさんじゃない」
「先生は年とか取らない」
取るよ。
普通に取るよ。
一年に一歳順調に取るよ。
二十五過ぎたあたりから自分の年齢があやふやになってきてはいたけど。
その後もノアが完全に酔いつぶれてしまうまで、前世の私への過剰な賛辞を散々聞かされる羽目になった。
ジェイドがパイと紅茶を出してくれたことだけが唯一の救いだ。
興味本位でついつい尋ねてしまったものの、聞くんじゃなかった、と後悔していた。
もはやドン引きだった。
神格化されているような気がしていたけれど、これはもう半分信仰に足を突っ込み始めている気がする。
そういうのって、死んで何十年とか何百年とか経ってから行われるものなのでは。
こちとらまだ死んで数年なので、普通に生きている当時の知り合いがわんさかいる。何とか彼の幻想を打ち砕いてくれないものだろうか。
「アンタそれ絶対幻想入ってるわよ」
ジェイドがばっさりと切り捨てた。
私もそう思う。
誰の話、それ。絶対私じゃない。
幻想がえげつなさすぎる。
ノアと接していた時にはこんなに、過剰に神聖視されている感じはしなかったのに。
会わない間に記憶が恐るべきスピードで美化されている。しかも死んだことでさらにありえないブーストが掛かって、もはや神格化の域に至っていた。
そんな人間はいないよ。
そんな人間はうっかり自爆で死んだりしないよ。気をしっかり持って。
「そんな人が一生独身でいたなんておかしいじゃない」
「先生にふさわしい男がいなかっただけだ」
ノアがきっぱりと言い切った。
そんなことないよ。単純に男性から好かれてなかっただけだよ。
魔法に夢中でそれ以外のありとあらゆるものに対して生涯ずっとご縁がなかっただけだよ。
ジェイドがため息をついて、ノアの手元に水を注いだグラスを置く。
「そんなに好きなのにどうしてアタックしなかったのよ。アンタ女の子にはモテるじゃない」
「は? 先生が僕みたいなガキ相手にするわけないだろ解釈違いだ」
「アンタ本当にめんどくさいわね……」
即答で言い切ったノアを、ジェイドが冷めた目で見ていた。
死んだせいかどうにも過剰に美化されているようだけれど、ノアの言う「好き」は師匠に対する尊敬というか憧れというか、そういうものなのかと思っていたけれど……見た目や恋愛遍歴まで美化されるとなると何となく、ちょっと違うのだろうかと思えてきた。
ノアが水を一気に呷る。
「先生にふさわしい男になりたくて、魔法の勉強だって頑張ったし、大人にもなったし……あの頃と比べたら、少しはマシになったと思うけど。今先生がここにいたとしても……やっぱり僕じゃまだまだ、先生の隣に並ぶには足りない」
「その人、生きてたらアンタより相当年上でしょ? オバさんじゃない」
「先生は年とか取らない」
取るよ。
普通に取るよ。
一年に一歳順調に取るよ。
二十五過ぎたあたりから自分の年齢があやふやになってきてはいたけど。
その後もノアが完全に酔いつぶれてしまうまで、前世の私への過剰な賛辞を散々聞かされる羽目になった。
ジェイドがパイと紅茶を出してくれたことだけが唯一の救いだ。
興味本位でついつい尋ねてしまったものの、聞くんじゃなかった、と後悔していた。
もはやドン引きだった。
神格化されているような気がしていたけれど、これはもう半分信仰に足を突っ込み始めている気がする。
そういうのって、死んで何十年とか何百年とか経ってから行われるものなのでは。
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