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34.心配して損したよ、まったく。(ノア視点)
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ぐつぐつと鍋が沸いている音に、はっと我に返る。
コンロに近づいて、火を止めた。スープの味を見て、鍋に蓋をする。
音を立てないように、アイシャの部屋に入った。
ベッド脇に跪いて、額に載った濡れタオルに冷却の魔法をかけ直してやる。
「旦那さま……?」
アイシャがうっすらと目を開けた。
音を立てないようにしたのに、どうして気づいたのだろう。
いつもうるさい彼女しか見ていないので、かすれた声と潤んだ瞳で呼びかけられると、どうしたらいいか分からない。
弱っている子どもを邪険にするわけにもいかず、仕方なく会話を試みる。
「魔力切れだって」
「まりょくぎれ……」
「寝てれば治るよ」
ジェイドに言われたことをそのまま伝える。
大慌てして人を呼び出したことは黙っておくことにした。
「ランタン4つ、浮かせただけなのに」
「勢いがよすぎたんじゃない」
「でんたつこうりつがわるすぎる……」
悔しげに呟くアイシャに、苦笑いする。
魔導書を読んで覚えたばかりの言葉を使いたくて仕方ないらしい。こういうところは子どもらしい。
放っておいたらまたやりそうだな、こいつ。
もう少し魔力伝達効率の良い魔法陣の描き方を教えてやった方がいいのかもしれない。
「もう少し寝ていたら」
「はい」
僕の言葉に、アイシャが素直に頷いた。
先ほどのまでの苦しそうな様子は薄れたが、どこか目つきがぼんやりとしているし、まだ本調子ではないのだろう。
毛布に潜り直した彼女のお腹に手を置いて、とんとんとゆっくりリズムを刻む。
視線を感じて彼女を見れば、アイシャが不思議そうな顔で僕を見上げていた。
「……こうしないと眠れないって言ってたろ」
僕の言葉に、アイシャがぱちくりと目を瞬いた。
何だよ、君が言ったんだろ。
しばらく僕の顔を見ていたアイシャが、へらりと嬉しそうに笑う。
照れくさくなって、彼女から目を逸らした。
とんとんと一定の速度でお腹を叩いてやりながら、キッチンに置いてきたスープの存在を思い出した。
起きているなら持ってきてやればよかったか。
「スープ、作ったから。起きたら食べなよ」
「スープ」
アイシャが僕の言葉を繰り返した。
ふと彼女に視線を戻せば、爛々と輝いた目で僕の方をじっと見つめている。
あれ。もう一回寝るんじゃなかったのか。
引き続きお腹をとんとんしてやるものの、一向に目を閉じる気配がない。
「……食べる?」
「はい!」
アイシャが元気よく返事をした。
あまりにはっきり返事をするものだから、つい笑ってしまう。
反応が鈍いと思ったら、お腹が空いていたのか。
「持ってくるから。食べたらちゃんと寝てよ」
「旦那さま」
キッチンに向かおうと立ち上がった僕を、彼女が呼び止めた。
振り返ると、ベッドの上でやたらと嬉しそうにはにかむ彼女と、また目が合う。
瞳の色が金色だったのだと、その時初めて気が付いた。
「寝るときはまた、とんとんしてくださいね!」
「分かったよ」
笑いながらも、どこかほっとしている自分がいて、また苦笑する。
何だよ。さっきまであんなに、具合が悪そうだったくせに。
心配して損したよ、まったく。
コンロに近づいて、火を止めた。スープの味を見て、鍋に蓋をする。
音を立てないように、アイシャの部屋に入った。
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「旦那さま……?」
アイシャがうっすらと目を開けた。
音を立てないようにしたのに、どうして気づいたのだろう。
いつもうるさい彼女しか見ていないので、かすれた声と潤んだ瞳で呼びかけられると、どうしたらいいか分からない。
弱っている子どもを邪険にするわけにもいかず、仕方なく会話を試みる。
「魔力切れだって」
「まりょくぎれ……」
「寝てれば治るよ」
ジェイドに言われたことをそのまま伝える。
大慌てして人を呼び出したことは黙っておくことにした。
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「勢いがよすぎたんじゃない」
「でんたつこうりつがわるすぎる……」
悔しげに呟くアイシャに、苦笑いする。
魔導書を読んで覚えたばかりの言葉を使いたくて仕方ないらしい。こういうところは子どもらしい。
放っておいたらまたやりそうだな、こいつ。
もう少し魔力伝達効率の良い魔法陣の描き方を教えてやった方がいいのかもしれない。
「もう少し寝ていたら」
「はい」
僕の言葉に、アイシャが素直に頷いた。
先ほどのまでの苦しそうな様子は薄れたが、どこか目つきがぼんやりとしているし、まだ本調子ではないのだろう。
毛布に潜り直した彼女のお腹に手を置いて、とんとんとゆっくりリズムを刻む。
視線を感じて彼女を見れば、アイシャが不思議そうな顔で僕を見上げていた。
「……こうしないと眠れないって言ってたろ」
僕の言葉に、アイシャがぱちくりと目を瞬いた。
何だよ、君が言ったんだろ。
しばらく僕の顔を見ていたアイシャが、へらりと嬉しそうに笑う。
照れくさくなって、彼女から目を逸らした。
とんとんと一定の速度でお腹を叩いてやりながら、キッチンに置いてきたスープの存在を思い出した。
起きているなら持ってきてやればよかったか。
「スープ、作ったから。起きたら食べなよ」
「スープ」
アイシャが僕の言葉を繰り返した。
ふと彼女に視線を戻せば、爛々と輝いた目で僕の方をじっと見つめている。
あれ。もう一回寝るんじゃなかったのか。
引き続きお腹をとんとんしてやるものの、一向に目を閉じる気配がない。
「……食べる?」
「はい!」
アイシャが元気よく返事をした。
あまりにはっきり返事をするものだから、つい笑ってしまう。
反応が鈍いと思ったら、お腹が空いていたのか。
「持ってくるから。食べたらちゃんと寝てよ」
「旦那さま」
キッチンに向かおうと立ち上がった僕を、彼女が呼び止めた。
振り返ると、ベッドの上でやたらと嬉しそうにはにかむ彼女と、また目が合う。
瞳の色が金色だったのだと、その時初めて気が付いた。
「寝るときはまた、とんとんしてくださいね!」
「分かったよ」
笑いながらも、どこかほっとしている自分がいて、また苦笑する。
何だよ。さっきまであんなに、具合が悪そうだったくせに。
心配して損したよ、まったく。
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