57 / 57
五十七限目 寝正月の対義語って、なに?
しおりを挟む
新年!明けましておめでとうございます!!いやぁ早いもので今年でなんと『いろはにほへと ちりになれ!』は一周年を迎える事が出来ました。これも全て読んでくれる読者の皆様のお陰です!本当にありがとうございました!そしてこれからも作者の趣味全開なこのお話を読み続けていただけたらこれに勝る幸福はありません!これからも作者共々この下らなく楽しい世界をよろしくお願い致します!!
「そんな事より福袋だ!!トレカ福袋を回しに行くぞぉぉ!!」
「む!あけおめことよろ!」
「お二人とも!もっとしっかり挨拶をして下さい!」
・・・えっと、今年もこんな奴らをよろしくお願いします。本当に。
<五十七限目 寝正月の対義語って何?>
本日は一月一日。元旦である。そんな元旦の日に本作の主人公。ではなく準レギュラーの戸部透はウキウキで寒空の下を歩いていた。
「いやっっったぁぁぁー!!」
そして実に嬉しそうにジャンプをした。そうなった理由は簡単だ。話は昨日に戻る。
「ダーリン、元旦の日に時間はあるか?実は、温泉旅行のチケットが当選してな。ダーリンの予定さえ合えば、一緒に行かないか?」
「行く!!」
そう、こんな話があったのだ。つまり今透は舳螺と温泉旅行に行く途中なのである。
「いやぁ、元旦早々いい事があるもんだなぁ。蛇塚と温泉旅行。そんなの何も起きない筈がないじゃないか!まあ何か起こったら僕の苗字は蛇塚になるんだけど」
そんな事を考えながらも嫌な気持ちは一切ない。舳螺に手は出せない為温泉旅行で姫初めという透のやりたい事は出来ないが共に温泉に行く事事態に非常に価値がある。浴衣の舳螺と卓球をして、揺れるたわわを味わったり。シンプルに膝枕をしてもらうなども悪くない。透の欲望は止まる事を知らなかった。
「ダーリン?早いな」
そんなウキウキ気分の透に声がかけられた。その人物は考えるまでもない。舳螺だ。
「おぉぉぉー!かわいいー!!」
透はあまりの舳螺の可愛さに悶えた。出来る事ならもっと可愛いと連呼したい所だが、これ以上言うと舳螺が真っ赤になってしまいそうなので一回だけに収める。それ程までに私服の舳螺は可愛かった。
「私服を見る機会など今まで数えきれない程あっただろう?」
「それでも、今年の蛇塚も一段と可愛いからな。言葉にしなくちゃ」
「全く、新年早々調子がいいな全く」
「あ、そうだな。明けましておめでとう、蛇塚。今年も宜しく」
「うむ。末長く、な」
実に可愛らしい笑顔を見せる舳螺に透も笑う。しかし、末長く、のところの含みが凄い。
「それで、電車で行くのか?それとも誰か送り迎えしてくれるのか?」
「送り迎えなど必要ないだろう?」
「ん?」
何か意見が合わない。送り迎えが必要ないのなら電車なのかとも思ったが、それなら舳螺の家の前で待ち合わせる必要はない。それに何やら背後に高級の黒塗り車が見える。しかし送り迎えが必要ない、とは?
「はっはっは。俺の蛇塚は可愛いなぁ。車で行き先へ連れてってもらうことは送ってもらうって言うんだぞ」
「それは少し違うな。何故なら車の運転手も同じ旅館に泊まるのだから」
背後から聞こえた恐ろしい声。いや、具体的に送るっていう言葉がどんな時に使われるものなのかはよく分からないが、そんな事は今はどうでもいい。まさかとは思うが。
「・・・明けましておめでとうございます竜斎さん。りゅっ、竜斎さんもご旅行で?」
「あぁ、明けましておめでとう。我は今から世界一大切な妻と宇宙一大切な娘と温泉旅行へ出かける所だ。君も早く家に帰るといい」
「蛇塚ぁぁぁ!?家族旅行なんて聞いてないぞぉぉぉぉ!!?」
そう。何を隠そう温泉旅行のチケットを当てたのは竜斎である。しかし四人用のチケットだった為、それならと舳螺が透を誘ったのである。
「言ったぞ?家族旅行に同行という話ならダーリンは断るかと思ったが嬉しそうだったのでな。我も嬉しかった」
「本当に!!?いつ!!?いや、なんか言ってた気がする!言ってた気がするけど!多分最初のインパクトにやられて脳死で聞いてた!!聞き逃してたやつだ多分!!!」
舳螺が嘘をつくとも思えない。舳螺は隠し事の出来ない子である。ならば間違いなく聞いていなかったのは透だ。
「今からでも帰っても構わないぞ。絶対に四人で泊まる必要もない」
「帰るわけ無いだろう?ダーリンは我らと泊まるのだ。当然だ、これは。家族旅行なのだからな」
赤面する舳螺に顔面蒼白の透。そして表には出さないものの殺意の波動を剥き出しにしている竜斎。地獄絵図とはまさにこの事。というかこのままではまずい。本当に高校生になる前に苗字を蛇塚に変えられてしまう。
「わ、悪い蛇塚。僕急にお腹が」
「まさか帰ろうなどとは思っていまいな。我の浴衣が拝めるのだぞ?ダーリンが望むなら、その。姫、ハジメ?をしても構わない」
「いきまぁぁぁぁぁぁす!!!」
竜斎が拳銃を取り出したのでガチで死ぬかと思った。
「楽しみなのよー!」
ひとまず生き延びた透は竜斎の運転で温泉旅館へ向かう。しかし、生きた心地がしない。何故なら、少しでも変な動きを見せれば殺されるからだ。運転席から少し手を伸ばせば届く所に拳銃が置いてある。恐怖でしかない。
「ねえねえ!透君は新年の初夢は何だったー!?」
車で二時間程揺られて、四人は温泉旅館に到着する。その間舳螺や愛と楽しげに会話をしていた透だったが、会話の内容をまるで覚えていない。二人との会話は楽しい。しかし、それを上回る恐怖が拭えない。
「わぁ!素敵なお部屋ー!」
「うむ、素晴らしい。流石はトト様だ」
「当然だ。我が家族が泊まるに相応しい部屋を用意した」
用意したというか、応募したというか。しかし商店街の福引を舳螺はともかく竜斎が引くとは思わなかった。蛇塚組といえど人間、更に富豪と言う訳でもない。透が勝手に金持ちだと想像していただけで、実際は庶民的なのかも知れない。そう考えると婿入りの恐怖も少し収ま
(らないなうん。だって僕拳銃突きつけられたんだぞ)
新年早々舳螺との結婚か命懸けの人生との二択を迫られている。新年くらい嫌な事を忘れさせて欲しいものだが。
「早速温泉に行きましょ!」
「ああ」
愛と舳螺は荷物を置くとそのままの足で温泉へと足を向けた。温泉、温泉かぁ。当然ここは男湯と女湯と別れている。混浴ではない。つまり、つまりだ。
「さて、では我々も行くとするか、戸部透」
「ぼっ!ぼぼぼぼぼ僕、ちょっと体調が悪くて、部屋で休んでます」
無理だ。ただでさえ幼馴染とはいえ同級生の父親と二人で温泉など気まずさの塊だと言うのに。相手はあの蛇塚竜斎である。死ぬ。比喩ではなくガチで。
「普段なら我もここで頷いてやる所だが、真剣な話をしよう。我も風呂場では武器がない。恐怖も多少は和らぐのではないかね?」
そう竜斎に言われ透は驚くと同時に萎縮する。真剣な話。透の苦手分野だ。
「何もこんな新年のタイミングでしなくても良いんじゃないですか?」
「新年だからこそだ。君は今が中学三年生の冬である自覚はあるのか?」
中三の冬。世間一般ではこの時期は実に大切な時期となる。入試が迫ってきているからだ。特別な推薦を手に入れた人にとっては平気かも知れないが普通の人々からしたらここが正念場である。しかし、正直透に今が中学三年生の冬である自覚はあれど、自分が受験生である自覚はない。何故なら。
「この世界はサザ⚪︎さん時空なので僕らは最終回まで中三ですよ」
と、言えたら良かった。しかしそれを言う度胸は透にはなかった。まず竜斎がサ⚪︎エさんを知っているかどうかすら疑わしい。故に透は大人しく従う事にした。
「君は娘の事をどう思っている?」
「可愛いと思ってます。美しいとも、凛々しいとも。世界で一番の女性は誰かと聞かれたら、僕は迷わず蛇塚、舳螺さんを選びます」
「ふむ、世界一は我が妻だが。舳螺は世界で二番目に可愛らしい。その言葉は評価しよう」
二人で体を洗い、湯船に浸かる。緊張はあるが、人目もあるし武器もない為竜斎から感じるプレッシャーはいつもより確かに軽減していた。
「ふむ、ならば覚悟はあるのか?舳螺へ嫁ぎ蛇塚組を背負っていく覚悟は?」
真剣そのものな竜斎の声と瞳に透は息を呑む。ここで嘘をつくのは簡単だ。しかし、その嘘はきっと竜斎には通じない。例え通じたとしても、意味がない。竜斎が嫌いな透とこうして話す時間を作ってくれたのだ。透は、その想いに応えなければならない。
「正直、ありません」
透の答えに竜斎の眉毛が僅かに動く。だが言葉を話したりはしない。続きを黙って促してくる。
「僕には竜斎さんみたいなカリスマはないし、愛さんの様な度胸もない。舳螺みたいに完璧でもない。色んなことがちょっと上手く出来る程度の、凡人です。蛇塚組を継げるとはまるで思えない」
「・・・それで?」
「けど、舳螺への愛なら、竜斎さんにも負けないと自負しています」
蛇塚組を継ぐ覚悟などない。しかし、舳螺と結婚し、人生を共に歩いていく覚悟なら、ある。
「ふむ」
長い沈黙。その沈黙を破ったのは竜斎だった。
「ひとまず及第点としておこう。だが忘れるな、今ようやく赤点を回避しただけだ。満点には程遠い」
「勿論、いつか満点を叩き出してやりますよ。またテストして来てください」
「若造が、あまり調子に乗らない様に」
新年の裸の付き合いにより、透と竜斎の距離はほんの少し縮まったのだった。
「それはそうと、十二月二十六日に共に歩いていた女性は誰だ?見覚えのない女性だったが?」
「あっ」
竜斎からの鋭い一言に透が短い悲鳴を上げる。付かれたくない所を見事に刺された。
「ふむ、まだその女遊びが治っていない様だな。これは一度殺してから治療するべきだな」
竜斎が手で合図をすると浴場に入っていた他の人々が何処からか銃を手にした。
「うわぁぁぁぁぁぁ!やっぱり蛇塚組になんて入りたくねぇぇぇぇぇ!!!」
透は命懸けの年明けを過ごしたのだった。
「そんな事より福袋だ!!トレカ福袋を回しに行くぞぉぉ!!」
「む!あけおめことよろ!」
「お二人とも!もっとしっかり挨拶をして下さい!」
・・・えっと、今年もこんな奴らをよろしくお願いします。本当に。
<五十七限目 寝正月の対義語って何?>
本日は一月一日。元旦である。そんな元旦の日に本作の主人公。ではなく準レギュラーの戸部透はウキウキで寒空の下を歩いていた。
「いやっっったぁぁぁー!!」
そして実に嬉しそうにジャンプをした。そうなった理由は簡単だ。話は昨日に戻る。
「ダーリン、元旦の日に時間はあるか?実は、温泉旅行のチケットが当選してな。ダーリンの予定さえ合えば、一緒に行かないか?」
「行く!!」
そう、こんな話があったのだ。つまり今透は舳螺と温泉旅行に行く途中なのである。
「いやぁ、元旦早々いい事があるもんだなぁ。蛇塚と温泉旅行。そんなの何も起きない筈がないじゃないか!まあ何か起こったら僕の苗字は蛇塚になるんだけど」
そんな事を考えながらも嫌な気持ちは一切ない。舳螺に手は出せない為温泉旅行で姫初めという透のやりたい事は出来ないが共に温泉に行く事事態に非常に価値がある。浴衣の舳螺と卓球をして、揺れるたわわを味わったり。シンプルに膝枕をしてもらうなども悪くない。透の欲望は止まる事を知らなかった。
「ダーリン?早いな」
そんなウキウキ気分の透に声がかけられた。その人物は考えるまでもない。舳螺だ。
「おぉぉぉー!かわいいー!!」
透はあまりの舳螺の可愛さに悶えた。出来る事ならもっと可愛いと連呼したい所だが、これ以上言うと舳螺が真っ赤になってしまいそうなので一回だけに収める。それ程までに私服の舳螺は可愛かった。
「私服を見る機会など今まで数えきれない程あっただろう?」
「それでも、今年の蛇塚も一段と可愛いからな。言葉にしなくちゃ」
「全く、新年早々調子がいいな全く」
「あ、そうだな。明けましておめでとう、蛇塚。今年も宜しく」
「うむ。末長く、な」
実に可愛らしい笑顔を見せる舳螺に透も笑う。しかし、末長く、のところの含みが凄い。
「それで、電車で行くのか?それとも誰か送り迎えしてくれるのか?」
「送り迎えなど必要ないだろう?」
「ん?」
何か意見が合わない。送り迎えが必要ないのなら電車なのかとも思ったが、それなら舳螺の家の前で待ち合わせる必要はない。それに何やら背後に高級の黒塗り車が見える。しかし送り迎えが必要ない、とは?
「はっはっは。俺の蛇塚は可愛いなぁ。車で行き先へ連れてってもらうことは送ってもらうって言うんだぞ」
「それは少し違うな。何故なら車の運転手も同じ旅館に泊まるのだから」
背後から聞こえた恐ろしい声。いや、具体的に送るっていう言葉がどんな時に使われるものなのかはよく分からないが、そんな事は今はどうでもいい。まさかとは思うが。
「・・・明けましておめでとうございます竜斎さん。りゅっ、竜斎さんもご旅行で?」
「あぁ、明けましておめでとう。我は今から世界一大切な妻と宇宙一大切な娘と温泉旅行へ出かける所だ。君も早く家に帰るといい」
「蛇塚ぁぁぁ!?家族旅行なんて聞いてないぞぉぉぉぉ!!?」
そう。何を隠そう温泉旅行のチケットを当てたのは竜斎である。しかし四人用のチケットだった為、それならと舳螺が透を誘ったのである。
「言ったぞ?家族旅行に同行という話ならダーリンは断るかと思ったが嬉しそうだったのでな。我も嬉しかった」
「本当に!!?いつ!!?いや、なんか言ってた気がする!言ってた気がするけど!多分最初のインパクトにやられて脳死で聞いてた!!聞き逃してたやつだ多分!!!」
舳螺が嘘をつくとも思えない。舳螺は隠し事の出来ない子である。ならば間違いなく聞いていなかったのは透だ。
「今からでも帰っても構わないぞ。絶対に四人で泊まる必要もない」
「帰るわけ無いだろう?ダーリンは我らと泊まるのだ。当然だ、これは。家族旅行なのだからな」
赤面する舳螺に顔面蒼白の透。そして表には出さないものの殺意の波動を剥き出しにしている竜斎。地獄絵図とはまさにこの事。というかこのままではまずい。本当に高校生になる前に苗字を蛇塚に変えられてしまう。
「わ、悪い蛇塚。僕急にお腹が」
「まさか帰ろうなどとは思っていまいな。我の浴衣が拝めるのだぞ?ダーリンが望むなら、その。姫、ハジメ?をしても構わない」
「いきまぁぁぁぁぁぁす!!!」
竜斎が拳銃を取り出したのでガチで死ぬかと思った。
「楽しみなのよー!」
ひとまず生き延びた透は竜斎の運転で温泉旅館へ向かう。しかし、生きた心地がしない。何故なら、少しでも変な動きを見せれば殺されるからだ。運転席から少し手を伸ばせば届く所に拳銃が置いてある。恐怖でしかない。
「ねえねえ!透君は新年の初夢は何だったー!?」
車で二時間程揺られて、四人は温泉旅館に到着する。その間舳螺や愛と楽しげに会話をしていた透だったが、会話の内容をまるで覚えていない。二人との会話は楽しい。しかし、それを上回る恐怖が拭えない。
「わぁ!素敵なお部屋ー!」
「うむ、素晴らしい。流石はトト様だ」
「当然だ。我が家族が泊まるに相応しい部屋を用意した」
用意したというか、応募したというか。しかし商店街の福引を舳螺はともかく竜斎が引くとは思わなかった。蛇塚組といえど人間、更に富豪と言う訳でもない。透が勝手に金持ちだと想像していただけで、実際は庶民的なのかも知れない。そう考えると婿入りの恐怖も少し収ま
(らないなうん。だって僕拳銃突きつけられたんだぞ)
新年早々舳螺との結婚か命懸けの人生との二択を迫られている。新年くらい嫌な事を忘れさせて欲しいものだが。
「早速温泉に行きましょ!」
「ああ」
愛と舳螺は荷物を置くとそのままの足で温泉へと足を向けた。温泉、温泉かぁ。当然ここは男湯と女湯と別れている。混浴ではない。つまり、つまりだ。
「さて、では我々も行くとするか、戸部透」
「ぼっ!ぼぼぼぼぼ僕、ちょっと体調が悪くて、部屋で休んでます」
無理だ。ただでさえ幼馴染とはいえ同級生の父親と二人で温泉など気まずさの塊だと言うのに。相手はあの蛇塚竜斎である。死ぬ。比喩ではなくガチで。
「普段なら我もここで頷いてやる所だが、真剣な話をしよう。我も風呂場では武器がない。恐怖も多少は和らぐのではないかね?」
そう竜斎に言われ透は驚くと同時に萎縮する。真剣な話。透の苦手分野だ。
「何もこんな新年のタイミングでしなくても良いんじゃないですか?」
「新年だからこそだ。君は今が中学三年生の冬である自覚はあるのか?」
中三の冬。世間一般ではこの時期は実に大切な時期となる。入試が迫ってきているからだ。特別な推薦を手に入れた人にとっては平気かも知れないが普通の人々からしたらここが正念場である。しかし、正直透に今が中学三年生の冬である自覚はあれど、自分が受験生である自覚はない。何故なら。
「この世界はサザ⚪︎さん時空なので僕らは最終回まで中三ですよ」
と、言えたら良かった。しかしそれを言う度胸は透にはなかった。まず竜斎がサ⚪︎エさんを知っているかどうかすら疑わしい。故に透は大人しく従う事にした。
「君は娘の事をどう思っている?」
「可愛いと思ってます。美しいとも、凛々しいとも。世界で一番の女性は誰かと聞かれたら、僕は迷わず蛇塚、舳螺さんを選びます」
「ふむ、世界一は我が妻だが。舳螺は世界で二番目に可愛らしい。その言葉は評価しよう」
二人で体を洗い、湯船に浸かる。緊張はあるが、人目もあるし武器もない為竜斎から感じるプレッシャーはいつもより確かに軽減していた。
「ふむ、ならば覚悟はあるのか?舳螺へ嫁ぎ蛇塚組を背負っていく覚悟は?」
真剣そのものな竜斎の声と瞳に透は息を呑む。ここで嘘をつくのは簡単だ。しかし、その嘘はきっと竜斎には通じない。例え通じたとしても、意味がない。竜斎が嫌いな透とこうして話す時間を作ってくれたのだ。透は、その想いに応えなければならない。
「正直、ありません」
透の答えに竜斎の眉毛が僅かに動く。だが言葉を話したりはしない。続きを黙って促してくる。
「僕には竜斎さんみたいなカリスマはないし、愛さんの様な度胸もない。舳螺みたいに完璧でもない。色んなことがちょっと上手く出来る程度の、凡人です。蛇塚組を継げるとはまるで思えない」
「・・・それで?」
「けど、舳螺への愛なら、竜斎さんにも負けないと自負しています」
蛇塚組を継ぐ覚悟などない。しかし、舳螺と結婚し、人生を共に歩いていく覚悟なら、ある。
「ふむ」
長い沈黙。その沈黙を破ったのは竜斎だった。
「ひとまず及第点としておこう。だが忘れるな、今ようやく赤点を回避しただけだ。満点には程遠い」
「勿論、いつか満点を叩き出してやりますよ。またテストして来てください」
「若造が、あまり調子に乗らない様に」
新年の裸の付き合いにより、透と竜斎の距離はほんの少し縮まったのだった。
「それはそうと、十二月二十六日に共に歩いていた女性は誰だ?見覚えのない女性だったが?」
「あっ」
竜斎からの鋭い一言に透が短い悲鳴を上げる。付かれたくない所を見事に刺された。
「ふむ、まだその女遊びが治っていない様だな。これは一度殺してから治療するべきだな」
竜斎が手で合図をすると浴場に入っていた他の人々が何処からか銃を手にした。
「うわぁぁぁぁぁぁ!やっぱり蛇塚組になんて入りたくねぇぇぇぇぇ!!!」
透は命懸けの年明けを過ごしたのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる