いろはにほへと ちりになれ!

藤丸セブン

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十三限目 プール

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 スク水 スクール水着(スクールみずぎ)とは、日本の小学校・中学校・高等学校における体育授業の水遊び、水泳用に使われている水着を指す俗称である。
「スク水ってのはなぁ。男のロマンなんだぜ」
「黙れ変態、チ⚪︎コ切り落とすぞ」

 <十三限目 水泳>

「勝負だ」
「・・・おん?」
 補習部は今日も今日とて補習にならなき為の補習を行っていた。本日の補習はプールにて行われている。つまりプールの授業である。だが、そんないつものメンバーに声をかける女性が一人。
「えっと?どちら様ですか?いーさんの知り合いですか?」
「しらねぇよ?」
「ほう?我にあんな辱めを受けさせておいて、知らないとはな?」
 いろはに話しかけている女性は紫色の綺麗な髪をした長身の美しい女性だった。女性と言ってはいるがいろは達の同じスクール水着を着ている事から彼女もこの学校に通う生徒であるのは間違い無いのだが。
「むぉっ!?でっっっか!」
「くっ、言いたくはありませんが、わたくしも同じ感想を抱きました」
「だよなー!私も私も!」
 目の前の見知らぬ女性に三人が抱いた感想はまるで同じだった。でかい。何がとは言わないが実に大きいのだ。そのスク水が悲鳴をあげていると思ってしまう程に。非常にビッグサイズのスイカが二つあったのだ。
「先程から大きい大きいと煩いぞ。我とて少し気にしているのだ、あまり言葉にしないでくれ」
 少し恥じらいながら自身の大きなπを抱きしめる女性。その姿はとても妖艶でスク水を着ているという事もあり。
「超絶えっちだなぁ」
「む、私が男だったらすぐ様告白して永遠の愛を誓ってる」
「ちょっと!この方も気にしていらっしゃるようですし、これ以上はやめましょう!」
 二人を諌める六花だがどうしても視線がその豊満なものにいってしまう。しかし気にしないようにするという気持ちが大切だ。恐らく。
「こほん。それで、本当に覚えていないのか?石森いろは」
「おん。あんたみてえな美人、一度見たら忘れないと思うんだけどな」
 いろはにそう言われた女性は自分が覚えられていないという点と美人だと褒められた点でプラスとマイナスが同時に襲い掛かり、複雑な心境を味わった。
「まあいい、自己紹介からしてやる。我は蛇塚舳螺(へびづかへら)。お前に敗北した者だ」
「ごめんもっかい名乗ってくれ」
 蛇塚舳螺と名乗った女性にいろはは真顔で返した。
「何故かは知らんが、まあ良いだろう。我は蛇塚舳螺(へびづかへら)。貴様に敗北した者だ」
「すっげぇキラキラネームだなぁ!?」
 二度目の名乗りを聞き、彼女の名前がいろはの空耳でない事を確認する。
「む、ふふふ。笑っちゃダメだよいー。む、ふふふふふ」
「笑っているのは貴方じゃないですか。いーさんは笑ってないですよ?」
 人の名前を笑うという行為はとても褒められた行為ではないが、こればかりは六花も少し気持ちが分かる。笑う事はないが、特殊な名前にだとは思ってしまった。
「何かおかしいか?我はこの名を気に入っている。トト様とカカ様が名付けてくれた高貴なる名だ」
「いえ、申し訳ありません。これはろーさんが百悪いです」
「む、それはそう。謝る」
「別にそれ程怒ってはいない。気にするな」
 名前を馬鹿にされた事は面白くないが、素直に謝られれば舳螺も引き下がるしかない。
「で、負けたってのは何だ?」
「水泳の速度だ。我は幼少期から水泳を習っていてな。速度だけでなくフォームにも自信があった。しかし、我の速度を上回る者がいるとダーリン、こほん。とある筋から聞いてな」
「おい今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだが?ダーリン?今ダーリンって言った?」
 舳螺の説明に間髪入れずにいろはがツッコむ。爆乳で名前が特徴的でいて更に学生結婚までしているとなってはいろはにとっては非常に面白い人物に映るのだ。
「今のは失言だ。その、出来れば将来夫にしたい男が、そう言っていてな」
「おや、我々には無い恋の甘酸っぱい雰囲気ですね」
「む、ラブコメ大好き」
「揶揄わないでくれ!」
 頬を朱色に染める舳螺に一同は口角をあげて甘い雰囲気を楽しむ。彼女達とて女の子。恋愛話は大好物である。
「それにしても好きな人をダーリンと呼ぶのはどうなんです?咄嗟にそう呼んだって事は普段からそう呼んでるって事ですよね?」
「あぁ。あいつは実に鈍感な奴でな。我が必死にアピールしても一向に我に好意を寄せてくれない」
「何だよそのラブコメの王道!最高に熱いじゃねえか!!おい!今日の補習は休みにしてへっちゃんのラブコメを凝視するぞ!」
「へっちゃん?」
 興奮を抑えきれないのか親しい人に使う愛称をつけながら鼻息を荒くしながら六花と波瑠に言葉を投げかけるいろは。六花はついその言葉に頷いてしまいそうになるが、我に返って必死に欲望を抑える。
「ダメですよ!今日はみっちりわたくしに泳ぎをレクチャーして貰いますからね!」
 偉そうに情けない事を言う六花。そう、何を隠そう本日の補習は六花の為の時間である。いろはは先程の舳螺の言葉通り水泳は大の得意分野。そして波瑠も得意ではないが苦手でもない。補習になる心配はない。が、聡明な読者の方々はもう気づいているだろうが、六谷六花は泳げない。運動神経が壊滅的の為、泳げない。
「そうなのか。我は石森いろはに直接対決を申し出に来たのだが」
「あー。別にそれ自体は構わねえんだけど、ろっちゃんに泳ぎを教えるのが本来の目的だからなぁ」
「それはそうだな。君達の予定に無理矢理割り込んだのは我だ。大人しく引き下がるとしよう」
「む、待った」
 物分かりの良い舳螺がそのままプールから出ようと歩みを進めるが、その足を波瑠が呼び止める。
「ヘーもろーに泳ぎを教えるの手伝ってくれない?私達だけじゃ自信なくて。もしもろーが早めに泳げる様になればいーとの対決も出来るだろうし」
「・・・確かにせっかく水着まで着たのだし、これでプールに入らずに帰るのは勿体無いか。しかし君達は良いのか?我はその、邪魔ではないか?」
「問題ありませんよ。貴方より何倍も図々しい方々に囲まれているのです。既に変人耐性がついてしまいましたので」
 いろはや波瑠、日華に本能寺と日常を共にしていると感覚が狂う。今までは初めて知り合う人と交流を持つのは苦手だった六花だが、今ではすんなり初めて出会った舳螺を受け入れられた。というか珍しく常識人らしい舳螺をここで逃したくない。六花としては是非とも交流を持ち、常識人枠を増やしたいと拙に願いたいのだ。
「そういう事なら。僭越ながらこの蛇塚舳螺、君に泳ぎを指南しよう」
 こうして六花の水泳教室が幕を開けた。
「まずは泳いでみせてくれ」
「ろっちゃんの泳ぎは凄えぞ?見なよ、俺のろっちゃんを」
「む、今流行りのやつだ(二〇二五年三月二十九日)」
 外野がうるさいがその辺は無視して六花は舳螺の言う通りに水に浸かり泳ぐ準備を始める。
「あまり笑わないで下さいね?」
「当然だ」
「ぷ、くふふふふ。笑わないよぉ、約束するっふふふ」
 六花の泳ぎを思い出したのか泳ぐ前から笑い出すいろはを無視して六花は足を地面から離して泳ぎ始めた。
「・・・助けるべきか?」
 その泳ぎに舳螺は困惑した。六花の泳ぎは水面を力強く叩いている様にしか見えなかったのだ。
「ぷはぁ!はぁ、はぁ、ど、どうで、すか?」
「五メートルしか泳いでねえのに息切れすぎだろ」
「まさかここまでとはな」
 本人としては必死に泳いでいるのだろうがどうしてもそうは見えない。
「ど、どうでしょう、どうすれば、上手くなりますかね?」
「まずは基礎からだな」
 それからは舳螺の厳しい教育が行われた。ビート板を持ってのバタ足練習に息継ぎのタイミング、様々な技術を叩き込まれた六花は。
「やった、やりました!二十五メートル!始めて泳ぎきれましたよ!」
 遂に目標である二十五メートルを泳ぎ切る事に成功した。
「うぉぉぉ!ろっちゃんが二十五メートルも泳ぎ切れるなんて!!」
「む!世界が開いた!」
 普段から補習を行っている二人が一番の驚きを見せる。こう言っては何だが、彼女達が勉強の成果を出せた事の方が少ない。しかし舳螺という外部からの助けがあり六花は見事に目標を成し遂げたのだ。
「やりました!やりましたよぉ!!」
「ろっちゃん!よがっっだねぇぇぇ!!!」
「む!感動した!」
「私が教えたんだ。当然だ」
 プールから出た六花をいろはと波瑠が強く抱きしめる。その姿は誰が何と言おうと青春そのものだった。
 
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