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9話 開発 その1
しおりを挟むE区画の奥地への潜入事前調査は、その日の内に行われた。
「ミランダ、絶対無理はしないようにね? 変な魔物とか出てきたら命を最優先に行動して」
「勿体ないお言葉です、アイリーン様。承知いたしました、自分の身を最優先に行動いたします」
そのような会話がなされ、ミランダが奥地へと入っていったのは30分前の出来事になる。アイリーンとアルガス伯爵は「立ち入り禁止」とかかれ封鎖されている区画の入り口付近で待機していた。
デゴールは他の管理仕事がある為に同行は出来ず、ミランダもいない状況なので、彼らには身の危険が降ってもおかしくない事態ではあったが……。
「ミランダさん、無事だといいっすね」
「そうね」
アイリーンに話しかけたのは、アルガスの手配した護衛の一人だ。
明るい印象の受ける人物であり、名前はシミター・オール。年齢も20歳と若い。伯爵が管理している者の中では、最強の能力を有する者であった。
目が異様に細いのが特徴の長身で細身の人物ではあるが、比較的二枚目な外見だ。黒髪の長髪で後ろで無造作に髪を結んでいた。
「ミランダさんって、恋人とかいるんすか?」
「いえ、いないはずだけど。気になるの?」
「はい。俺なんかだと、迷惑かもしれないけど……ほら、あはははは」
彼の照れたような態度で一発で勘付くアイリーン。間違いなく惚れている。そこまでいかなくても、限りなくそれに近い状態なのは明白だ。
アイリーンはいたずらっぽく笑ってみせた。
「ミランダも、19歳だしチャンスかもしれないわよ? あなただって20歳なんでしょ? 告白してみたら」
「ええ!? いいんですか?」
「うん、彼女にも幸せになる権利はあるし。シミターとは付き合いは短いけれど、あなたなら大切にしてくれそう。ねえ、アルガス伯爵?」
アイリーンは設定資料集で、彼の人となりを知っている。だからこその判断だったわけだが、とりあえず隣に立っているアルガスに同意を求めた。彼も優しく頷いていた。
「ええ、そうですね。シミターは強い上に、信頼厚き家臣の一人です。仮に、ミランダ殿とそういう関係になったとしても、シミターであれば安心いただいて大丈夫ですよ」
アルガスは確信に満ちた言葉をアイリーンに送った。わかっていたことだが、彼女も安心する。この襲われるかもしれない状況で平然としていられるのは、彼が護衛に付いているというのが大きいのだ。それほどまでに信頼されている人物であった。
「まさか、お二人からそんなお言葉を頂けるなんて……光栄です! 俺はお二人の仲が上手くいくように全力でサポートするっすよ!」
「ななっ! 何言って……!」
「……は、話が飛躍しているな……まったく……」
ミランダが金の事前調査に向かっている間に起こった、ほのぼの物語。シミターをけしかけたアイリーンとアルガスの二人であったが、なぜか自らにもブーメランが返って来てしまい、顔を赤くする事態になっていた。
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