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10話 開発 その2
しおりを挟むミランダが事前調査に乗り出してから2時間程度が経過したころ……彼女は入り口の立ち入り禁止区域へと戻って来た。その間、心配をしながら待ち続けていたアイリーンたち。彼女のすすだらけの顔を見て安堵の表情を浮かべていた。
「ミランダ! 無事だったのね? 良かったわ」
「アイリーン様……ご心配をおかけしたようで、申し訳ありませんでした」
端整な顔立ちの彼女が泥だらけになっている。しかし、肉体的なダメージは皆無だった。それだけでもミランダの強さがわかってしまう。
「魔物などには出くわさなかったの?」
「何体かは居ましたが……魔物に関しては、そこまでの量ではないようです。アイリーン様のおっしゃる通り、かなりの金が採れそうです。ただし、今にも崩れそうな地盤が問題かと」
「なるほど……では、開発をするのであれば、まずは地盤の補強が必要ですね。天井なども崩れないように補強しないと」
アルガスはミランダの報告を冷静に分析していた。すぐに、近くにいた護衛の一人に話を送る。開発の計画を進める心積もりなのだろう。話を振られた護衛はその場から去って行った。
「アルガス様。私の想像でしかないのですが、よろしいのですか?」
「どういう理屈かはわからないが、あなたは先見の目があるようだ。それにミランダ殿の事前調査の根拠もある。善は急げと言いますからね」
「ありがとうございます」
アイリーンは深々と頭を下げた。ミランダの事前調査を許可したのは、アルガスに信用してもらうことも大きかったが、彼は事前調査が無くとも彼女を信用していたのだ。アイリーンとしてはこれ以上嬉しいことはないと言える。
「あ、ミランダさん! お疲れさまでした!」
「えっ? ありがとうございます……」
そんな時、こだましたのは勇気を振り絞ったシミターの声だ。気になっているミランダに対して、彼は声をかけた形である。
「……? どうしました?」
「あ、い、いえ……なんでもないっす……」
話が膨らまなかった……アイリーンは思わず頭を抱えてしまう。アルガスも褒めるシミターだけに、少しでも仲が進展ほしいとは思っているが。現状で、これ以上の進展はとても見込めなかった。
「よろしいですか?」
「は、はい……」
シミターは少し悲しそうにしながら後ろへと引き下がっていった。その挙動がなんとも可愛らしく、自然とアイリーンにも笑みがこぼれる。状況がわかっていないミランダは、シミターから離れ、アイリーンの近くに移動した。
「まだ少し時間がかかりそうですね」
「ええ。でも、上手くいってほしいとは思います」
「……? あの、なんのお話でしょうか?」
全てを理解しているアイリーンとアルガスの会話。ミランダは一人だけ意味が分からず首をかしげていた。
シミターの恋物語はなかなかの波乱を呼びそうだ。
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